第二次大戦中ナチスに捕まったユダヤ人青年ジルは、自分はペルシャ人だと嘘をついて処刑を免れる。
ナチス将校のコッホ大尉は、終戦後に兄のいるテヘランで料理店を開くのが夢であり、ペルシア語を教えてくれる人間を探していた。
ジルは仕事の後に毎日コッホにペルシア語を教えることになるが、実はペルシア語をまったく知らないのだった。
まったく知らない言語をどうやって教えるというのか。
一日10語、ジルはでたらめな単語をコッホに教える。
言葉を作り出すことはそれほど大変ではないようだが、それをどうやって覚えておくというのか。
コッホは教えられた単語を紙に書き取るが、ジルは紙もペンも与えられていない。
嘘がバレればその場で殺される。
いつバレるのか、終始ハラハラドキドキで緊迫感が張り詰める。
実際に何度かバレかけて、ジルはその度に半殺しの目に遭っているのです。
出てくるナチス親衛隊がまあ、見事にイヤな奴ばかり。
収容所のユダヤ人たちを気晴らしに痛めつける、焼けた鉄板に手を押し付ける、半殺しにする、殺してしまう。
食うや食わずで重労働につくユダヤ人の前でパーティをする、不倫をする、密告し合う。
でたらめのペルシア語レッスンは何度か挫折しながらも続き、コッホは1500語もの単語を覚えたと誇らし気に語ります。
そしてジルとコッホが、架空のペルシア語でたどたどしく語り合うシーンさえあるのです。
ジルがどうやって膨大な単語を頭の中に刻み付けていたか、その謎が最後に明かされます。
ああそうだったのかと、ここは涙なしでは見られません。
実際の出来事からインスピレーションを受けた作品というクレジットが、最初に出ます。
「Erfindung einer Sprache(言語の発明)」という短編小説に基づいて作られたのだとか。
今までどれだけの数の戦争映画、ナチスの映画を観てきたか分かりません。
どれだけ残酷であっても、人類が二度とこんな蛮行を繰り返さない為の教訓として観て来たつもりであったのに、今世界で起きていることを思うと、なんともつらい。
この作品の監督はウクライナ出身のバディム・パールマン、2020年にロシア・ドイツ・ベラルーシ合作で作られたというのも、皮肉としか言いようがありません。
公式HP
この組み合わせで作られたというのが、何とも皮肉ですね。
これらの国が再び同じ仕事で協力出来るようになってもらいたいですね。
2020年にはこんな戦争が始まるとは思ってもみませんでしたね。
一体戦争はいつ終わるのやら…!?