菅直人氏が退陣時期先送りに血眼になる本当の訳
菅直人氏には恥も外聞もないらしい。鳩山前首相に「ペテン師」とまで言われたのは、その政治手法があまりにも姑息でひきょうだからである。
拙作「はととかん」の動画バージョンを紹介いただいたが、原典がYOU TUBE映像だということなので、
YOU TUBE「はととかん」
をご高覧賜りたい。
菅内閣に対する内閣不信任決議案を採決する6月2日の衆議院本会議の直前に、民主党は代議士会を開催した。この席上で菅直人氏が辞意を表明し、これを補足する形で鳩山前首相が、
①震災復興基本補が成立し、
②第二次補正予算の成立ではなく、編成のめどが立った時点で、
菅首相が辞任することで合意を得た
ことを公表した。この鳩山前首相の補足説明に菅直人氏は異論を唱えなかった。
つまり、菅直人氏の言葉と鳩山前首相の言葉とを合わせて、出席者は合意内容だと理解し、菅直人氏が早期に自発的に辞任するのだから、あえて不信任決議案に賛成する必要がないと判断したのである。
ところが、6月9日の衆院東日本大震災復興特別委員会で菅直人氏は、
「内閣不信任決議案を大差で否決してもらった。つまり、めどがつくまでは私に『しっかりやれ』という議決をいただいた」
と述べて、8月まで首相を続投する意思を再び表明した。
「ペテン師」だとののしられ、結局「早期に辞任する」と発言した、その舌の根も乾かぬうちに、また、8月まで続投と言い出す。
本当に痛々しい人物である。
退陣する意向の首相が存在しても、ものごとは何も進まない。野党があらゆる法案の成立に協力しないと明言しているのだ。この期に及んで首相の座にしがみつくのは、明らかに公共の利益に反する。公序良俗に反すると言ってもよい。
多くの被災者が存在し、今日の暮らしにも困っている国民が大量に存在するのだ。自分の利益のためには、多数の国民を犠牲にしても構わないという姿勢が、実質上の不信任を突き付けられた理由であることを菅直人氏は理解できないのだろう。
代議士会を経て不信任案が否決されたのは、国会議員が
「しっかりやれ」
と考えたからではなく、菅直人氏が早期に辞任する意思を表明したから、わざわざ不信任決議案に賛成しなくてもよいと考えただけのことである。まったく通用しない屁理屈をこねくり回すのは、もういい加減にやめた方がいい。
こうした経緯を踏まえて、警戒しなければならないことが二つある。
ひとつは、菅直人氏が辞任を先送りしている本当の理由が別のところにあるのではないかと考えられることである。
それは、民主党代表選の方法の問題だ。2年に1度の正規の代表選は、党員・サポーター投票を合わせて実施する。しかし、この定例選挙以外は、両院議員総会での選挙のみで代表選が実施されてきた。したがって、今回も両院議員総会での選挙によって新代表が選出されることになるはずだ。
両院議員総会での選挙になると、小沢一郎元代表と鳩山由紀夫前代表のグループが支持する候補者が有利になる。「民主党正統」=「正統民主」から新代表が輩出される可能性が高くなる。
これに対して、「民主党非正統」=「悪徳民主」=「対米隷属派」は、新代表のポストを喪失する可能性が高まる。このため、現在の執行部である「悪徳民主」は、ずるずると代表選実施日程を先送りし、あわよくば、党員・サポーターを含む代表選に持ち込もうとしている可能性を否定できないのだ。岡田克也氏は9月になれば、党員・サポーターを含む代表戦を実施できると示唆している。
昨年9月の民主党代表選では、この党員・サポーター選挙で、大規模な投票集計不正が実行され、本来は小沢一郎元代表が当選していた選挙を、菅直人氏当選に差し替えてしまったとの重大な疑惑が色濃く残されている。これを再現しようとの思惑が存在していると考えられるのだ。
民主党の党員・サポーター投票が、あまりにも杜撰で、不正が入り込む余地満載の方式で実施された経緯を踏まえても、今回の代表選は、両院議員総会で透明性を確保して実施するべきである。
もうひとつの点は、代表選において、徹底的な政策論議が求められることだ。悪徳8人衆とマスゴミは結託して、悪徳8人衆から次期代表=次期首相を選出する既成事実を作り出そうとするかの動きを示している。
震災復興で、一刻の猶予も許されない局面であるから、永田町で論議などしている暇はないなどの暴論をテレビ局の劣悪解説者などが吹聴している。
言語道断も甚だしい。
菅内閣が実質的に内閣不信任を突きつけられて退陣する以上、これまでの政策運営をしっかりと検証し、政策路線を大転換して新しい政権を立ち上げるのは当然のことである。
いま、悪徳8人衆とマスゴミが結託して祭り上げようとしている新代表候補は、驚くなかれ、これまでの執行部に所属する人物である。
犯人が検挙され、大修正が必要な時に、共同正犯から次の首班が輩出されようとしているのだ。
当面の政策課題を踏まえると、最大の焦点は経済政策になる。とりわけ、経済復興にかかる財源をどのように調達するのかが問われることになる。
また、これと別に「、社会保障と税の一体改革」と称して論議が強行されている問題では、政府が勝手に2015年度までに消費税率を10%に引き上げるなどという政府原案を提示した。民主主義の根幹を踏みにじる暴挙である。
2009年8月総選挙で、鳩山由紀夫民主党代表は、天下り根絶などの政府支出の無駄排除をやり終えるまでは、消費税増税を封印することを確約して選挙を戦い、民主党が圧勝した。
2010年7月参院選では、突如、菅直人氏が消費税率10%への引き上げを提示し、民主党は大敗した。
つまり、消費税大増税は現時点で、主権者国民によって明確に否定されているのだ。
しかも、菅直人氏は、消費税増税を行う場合には、必ずその前に総選挙で主権者国民の意思を問うと確約した。
この経緯を踏まえれば、政府が提示する消費税大増税案は暴挙以外の何者でもない。
震災復興政策には、日本の外貨準備を売却して50兆円程度の資金を充当すればよい。社会保障と税の問題は、民主主義の正当な手順を踏まえて、時間をかけて論議することが絶対に必要だ。
「代表なくして課税なし」という、議会制民主主義の出発点を忘れてよいはずがない。
民主党では、恐らく「民主党正統」から、大増税論でない、大復興論が提示されることになると思われる。論理的に考えれば、この「民主党正統」が輩出する候補者が次期民主党代表=次期首相に就任する。
①民主党代表選は両院議員総会で選挙を実施すること、
②これまでの政策を刷新する新機軸=民主党正統の新代表を選出すること
この二つの実現が何よりも重要である。