原作者の松本清張、生誕100年記念として、「ゼロの焦点」が映画化され、それを見てきました。
清張は、1909年(明治42年)12月21日に広島市で生まれました。
一般的には、福岡県小倉の出身ということで、生まれも小倉と思っていたのですが、広島市生まれで、小学4年までは、下関市、5年から小倉で育ちました。
1953年「或る小倉日記伝」で芥川賞を受賞し、それ以降作家生活に入り、犯罪の動機を重視した「社会派推理小説」として、一世を風靡しました。
「ゼロの焦点」は、「点と線」「砂の器」とともに、清張の3部作として、代表され、社会派推理小説の最たるものです。
この作品は、昭和30年代の戦争の傷跡が多く残る時代ですが、同時に「もはや戦後でない」という言葉が言われ、女性の社会進出が出てきたころです。
映画では、当時の風景が再現され、特に金沢駅や市内を走る市電などは、苦心された様子がうかがわれます。
CGが多く使われる昨今の映画の中にあって、なるべくその当時の物を使うという監督の考えから、蒸気機関車やその車内などは、臨場感がありました。
市電が走る市街地は、韓国で撮影されたそうです。
当時は一般的であった見合結婚をした鵜原禎子(広末涼子)は、夫・憲一(西島秀俊)が、式7日後に夫の仕事の引き継ぎで勤務地だった金沢に出かけますが、その後行方不明となることから、この物語は始まります。
夫の過去を知らない禎子は、憲一の足跡をたどって金沢へ行きます。
そこで、憲一の得意先の社長夫人 室田佐知子(中谷美紀)とその会社の受付嬢をしている田沼久子(木村多江)に出会い、夫との関わりを調べて行くうちに、殺人事件が発生します。
荒れ狂う日本海に白い雪が舞い、灰色の波が大きく打ち寄せる断崖に、室田佐知子の赤い服が強烈に印象つけられ、この物語の暗い過去を暗示しているかのような風景でした。
この作品な限らず、推理映画やTVドラマには、この断崖絶壁というのが、定番になっていますが、この様に設定したのが、清張から始めたのではないかと思われました。
三人の女性の個性がそれぞれ生かされ、物語よりは、その3人の演技力が引きたった映画ではなかったのでしょうか。
本を読んだのは、随分昔なのですが、やはり、本を読んだ時の方がインパクトがあったようです。