以前ブログに書いたが、私は高校~大学時代、鼠派演踏艦というアングラ劇団の公演を定期的に観に行っていた。池袋駅東口から歩いて5分の木造民家を改築した劇場でひっそりと上演される暗黒劇は怪しい秘密の香りがして溜まらなく魅力的だった。しかし就職してからは観に行くこともなく25年の時が過ぎてしまった。
先日観に行った園田游さんの舞踏公演の時配布されたチラシで宮下さんが鼠派演踏艦Ωの名の下で公演を行うことを知り、その場で関係者の女性、たぶん当時アルチュール絵魔の名前で活動していた奥さん、に予約を申し込んだ。
鼠派演踏艦Ω公演ー舞踏シリーズ・百八の煩悩ソノ壱ー「瓦礫の森のリア」。現在61歳の宮下さんが始めた新しい舞踏シリーズの第一回である。何とタイトル通り108回の公演を企画しているというから凄い。年二回のペースで公演しても114歳までかかる事になる。何と無謀で壮大な計画....
赤鳥庵は日本庭園の中にある純和風の建築である。その20畳くらいの広い日本間を舞台に上演される。どこにこんなにファンがいたのか客席は満席。舞踏マニアや関係者が多いのかあちこちで「久しぶり」という挨拶が聞かれる。中には静岡からわざわざ観に来た人もいるようだ。
部屋が真っ暗になり仄かな照明の中に頭に月桂樹の冠を被り羽織を着た宮下さんの姿が浮かび上がる。安っぽいラジカセから流れる音楽はエスニックなフリージャズ。これは30年前と同じだ。今回の舞踏はシェイクスピアの「リア王」が題材でリア王と三人の娘の話をベースにしているが、これを奇怪な暗黒劇にアレンジする手腕はさすが舞踏歴40年の宮下さん。石と木の枝と急須を三人娘にたとえた一人芝居だ。グロテスクな踊り、ユーモアを含んだ語り、観る者を煙に巻く展開、と鼠派ならではのユニークなパフォーマンスに酔い痴れた。
次回ソノ弐は来年5月「マクベス」を題材にした演目を予定しているとのこと。今度は大学の同級生で鼠派に役者として参加した友人も誘って観に来よう。帰りに宮下さんに挨拶をしたらその友人のことを覚えていた。
舞踏家は
絶滅危惧種と
言われてる
舞踏の創始者、土方巽さんの意志を引き継ぐ宮下さんの舞踏はアングラ文化が好きなら観に行って損はない。