※ゲルピン〔ゲル=独語:Geld(=金銭)の略〕+〔ピン=英語:pinch (=危機)の略〕
■金に窮していること。金のないこと。 文無し。昭和30年代後半に学生の間で流行った造語。
死語というにも程があるこの言葉を墓場から引きずり出したのは昭和末期に勃発したネオGSブームだった。グループサウンズをロック的側面から捉えビートロックやガレージパンクの一翼と位置づける再評価は海外のパンクマニアによってなされた。70年代パンクのルーツとして60年代世界各地で勃発したガレージバンド・ブームが注目され数多くのコンピレーション・アルバムがリリースされ日本のガレージパンクとしてゴールデン・カップス/モップス/スパイダーズ/ビーバーズなどの楽曲が収録された。さらにGSだけ集めたレコードもリリースされその斬新さとマニアックさが「GS=懐メロ」と決めつけていた日本の音楽界に衝撃を与えた。ビートルズやローリング・ストーンズやザ・フーやプリティ・シングスの蒔いた種子が日本で花開いたのがGS=ガレージサウンドだと。
それに触発され三多摩地区を中心に発生したのがネオGSだった。ファントム・ギフト、コレクターズ、ストライクス、ヒッピー・ヒッピー・シェイクスなど一群のバンドがマッシュルーム・カットとサイケな衣装でファズを効かせた荒々しいガレージサウンドを展開しライヴ会場ではミニスカ女子が黄色い歓声をあげ失神した。バブル前夜の徒花的なブームだったがコレクターズを産みオリジナル・ラヴやピチカート・ファイヴなど渋谷系に繋がる動きとして日本のロック/ポップス史では重要な事件だったことは間違いない。
有名GSの再評価とともに知られざるB級GS/カルトGSが発掘され人気を博すことになった。ダイナマイツの「トンネル天国」と並ぶカルトGS人気曲がムスタングの「ゲルピン・ロック」。新興ロンドン・レコード和製ポップス部門の記念すべき第1弾タレントでミック・ジャガーと電話対談する栄誉に輝きながらもこの1作で消えた6人組。メンバー名以外バンドの正体は謎に包まれ軽佻浮薄を絵に描いたジャケットとあっと驚くタメゴローなサウンドが昭和末期のナウなヤングのハートを鷲掴みにした。
カップリング曲「ムスタング・ベイビー」も深いリバーブがハレンチな酩酊感を醸すラリパッパな名曲。なんとムスタングは近年再結成して活動しているらしい。
カルトGSの代名詞となった「ゲルピン」はネオGS以降地下音楽シーンに流れるGS水脈のキーワードとして受け継がれてきた。2008年に結成されたGSグループ、シャロウズ主宰の企画イベント・タイトルは「ゲルピン東京」。ゼロ~テン世代の若手を中心にGSに拘らぬラインナップで人気のイベント。
2011年4月キノコホテルに続きサミー前田のVOLTAGE RECORDSから「シャロウズの世界」でデビューしたシャロウズは今年4月に久々の新作「グラナダの時を経て c/w 降ればいい」を7インチ・アナログ+DVDでリリースした。ライヴの定番曲で狂おしいファズの暴走ナンバー。
札幌からデビューしたのはその名もゲルピンズを名乗る3人娘。サザナミ・レーベルの人気コンピGirls Sazanami Beat! vol.5に参加し2月に新宿JAMで3日間開催されたレコ発イベントに出演。ガレージパンク+演歌+昭和ポップス+かしまし娘の突然変異サウンドは北海道という風土独特の北国の春パワーに満ちている。お手製の色違い制服と揃いの前髪パッツンロングヘアーにG,Voのえリッけむのアイドルっぽさ(安達祐実似)が魅力的。
いつの時代もヤングはゲルピンだけどイカしたビートに腰振ればお悩みなんてバイバイさ!
ゲルピンだから
一緒に飲もうよ
レモンジュース
●シャロウズとキノコホテルも参戦するすげぇイベント開催!
2013.5.31 (fri) “真夜中のヘヴィロック・パーティー" マウントレーニアホール
出演:頭脳警察/外道/灰野敬二/ROLLY/非常階段/キノコホテル/騒音寺/ザ・シャロウズ