A Challenge To Fate

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【私のポストパンク禁断症状#2】クローム『赤い露光』〜電脳クロム鍍金(メッキ)サイバーガレージパンク

2017年02月10日 00時15分00秒 | 素晴らしき変態音楽


今でこそ「ポストパンク」というジャンルは普通に使われているが、80年代当時はまとめて「ニューウェイヴ」と呼ばれていた。レコード店では「パンク/ニューウェイヴ」コーナーが設置され、クラッシュやストラングラーズ、ダムドなどパンクバンドも「ニューウェイヴ」に括られた。新しい波(ニューウェイヴ)の対極には古い波(オールドウェイヴ)があり、そこにはハードロックやブルースロックやプログレ等が含まれた。だが60年代のサイケデリックロックは、世代的には十二分に「OLD」なのに、何故か「NEW WAVE」のイメージがあった気がする。60年代ビートロックやガレージロックがパンクのルーツとして再評価された余波かもしれない。「ネオ・サイケデリック」という潮流がパンク以降のロックシーンに登場し、トリッピーなレトロ感覚がニューウェイヴの主要要素のひとつとされた。

当時筆者はそうした「ネオ・サイケ」にも惹かれたが、徐々に興味はオリジナル・サイケやアシッドロックへ向かった。60年代の音を聴いてしまうと「ネオ〜」の胡散臭さやポーズだけのファッション感覚が鼻につき、夢中だったエコバニやキュアーやアンド・オールソー・ザ・トゥリーズなど聴く気がしなくなった。そんな中でも聴き続けたバンドたちが筆者にとっての「ポストパンク」だった。具体的にはレジデンツ、ペル・ウブ、ギャング・オブ・フォー、ワイアー、チャーチなど。そして忘れてはならないのがレジデンツと同じサンフランシスコ出身のクロームだった。



1975年サンフランシスコでアートスクール在籍のダモン・エッジを中心に結成。4人組のバンド形態で76年『The Visitation(光臨)』を自主制作レーベル・サイレンからリリース。ファズギターのソロが延々続くジャンクなロックは、古めかしいサイケデリックロックを踏襲しているとされ、当時も今も無かったことにされがちなアルバムだが、久々に聴くとオーソドックスなのは楽器編成だけで、音の奇妙な捩じれ方は、現在の一部のオルタナ/インダストリアル/ノイズ系アーティストに近い。1979年12月25日、筆者の17歳の誕生日に新宿シスコで購入した思い出の一枚。リハビリが必要。

Chrome - The Visitation


翌年ヘリオス・クリードが加入し、77年2nd『Alien Soundtracks』をリリース。78年の3rd『Half Machine Lip Moves(半分機械口唇作動)』はほぼダモン・エッジとヘリオス・クリードの二人編成になった。ジャンクさに磨きがかかり、奇怪な音響処理を施したスタジオワークは密室ノイズロックと呼びたくなる。

Chrome - Half Machine Lip Moves


それぞれが幾つもの機材を操りヴォーカルを取るスタイルは異彩を放ち、80年に大手インディーレーベル、ベガーズバンケットから『Red Exposure(赤い露光)』をリリース。日本での配給元ワーナーパイオニアから日本盤も発売された。挑戦的なジャケット写真やバンド感を増した音作りは、英国ポストパンクを意識したように思える。エフェクト加工されたハンマービートは近未来感がある。ザッパフリークのイラストレーター八木康夫(現ヤギヤスオ)が書いた日本盤解説が秀逸。

Chrome - Red Exposure


その後はサイレンやドイツやフランスのレーベルから作品をリリース、84年に二人は別離しダモン・エッジがクロームとして活動、95年にダモンが死去するとヘリオス・クリードがクロームの名前を引き継ぎ、現在まで活動を続ける。最新作『Feel It Like A Scientist(科学者みたいな気分)』(2014)はSF風のサイバーガレージパンクが炸裂する怪作である。

CHROME ~ Prophecy


ノイズロックの元祖と呼ばれもするが、電気仕掛けのクロム鍍金を剥がすと、欲求不満のティンエイジャーの青い魂が露になる。

サンフラン
シスコ界隈
地下パンク





Chrome - Bremen 1987 [full show]



Subterranean Modern: The Residents, Chrome, MX-80 Sound and Tuxedomoon
datacide magazine:Chrome
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