2017年11月3日は「レコードの日」
と言われても「毎日がレコードの日」の筆者としては今ひとつ盛り上がらない。イメージキャラクターのポスターが撮影された吉祥寺ココナッツディスクも日常風景の中に溶け込んでいる。欲しいレコードがかなり限定されているので、メジャーメーカーも参入して発売されるアナログ盤にもほとんど触手が動かない。それにしても気温20℃超えの爽やかな秋晴れの日に家で現代音楽のレコばかり聴いていては勿体ないと午後遅く出かけてみた。吉祥寺のヘアサロンで散髪し、駅へ向かおうとしたところヨドバシカメラの2階からOiOiという聞き覚えのある掛け声が。もしやと思って覗いたところ、夢みるアドレセンスというアイドルのフリーイベントだった。余り見る機会の無いキラキラ系のパフォーマンスは興味深く、気になるメンバーもいたのだが、「いやいや今日はレコードの日」と思い直して特典会には参加せず、若者の街下北沢へ向かった。
下北沢ケージではレコードフェアが開催中。場所柄若者や外国人の姿が多く、普段の年配者ばかりの中古レコ屋とは異なり華やかな雰囲気。しかしながらDJユースのブラック/ソウル/テクノ系が多く、筆者的には余り見るべき物はない。5枚で千円のDisk Unionコーナーをディグする途中で暗くなり、疲れ果てたので離脱。渋谷のレコファンへ向かう。最近マイブームのクラシック箱物レコードコーナーで『バルトーク弦楽四重奏全曲』3LP、『チャールズ・アイヴス交響曲全集』3LP、『メシアン・オルガン作品集II』3LP、『シェーンベルク全曲第1集』2LP、『テープ音楽集』『リゲティ作品集』『バルトークPlaysバルトーク』と全7作、枚数にして14枚を購入。結局「レコードの日」の恩恵には預かれなかったが、充実感で満たされて帰宅、バルトーク夫妻の1940年代の録音に震えたり、メシアン本人の解説の宗教観に感動たりしながらツイッターを眺めていると、えいたそ☆成瀬瑛美さんからのツイートを発見した。
普段ならパンクロックでヘドバンしたり、アイドルソングでケチャしたりしている筆者が、今日はクラシック音楽の難解な解説書を読みながら、重厚なアンサンブルに思索を巡らせていることを、どうやって瑛美は見抜いたのだろう。恐るべき慧眼には敬服するばかりだが、このツイートは同時に個人的なメッセージに他ならないことも一瞬にして理解した。即ちえいたそ論の新たなお題「文化」である。そもそも筆者のえいたそ論の第一弾は『えいたそ文化論』であった。2014年4〜5月にほぼ40日間で書き上げた渾身の論文を瑛美は覚えているに違いない。それから3年半経った今、彼女は筆者に対して初心に戻るよう促している。つまり瑛美自身もでんぱ組の新たスタートに当たって初心に戻ろうとしているのであろう。ミュージカル『ハッピー・マーケット』のリハーサルも佳境に入ったえいたそへ筆者なりの『文化』論を捧げよう。
⇒【えいたそ文化論】最終章『えいたそ☆成瀬瑛美とは?』
えいたそモダニズム Episode 13『レッツ文化』
●THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『カルチャー』
「カルチャー」(Culture)は、日本のロックバンド、thee michelle gun elephantの4thシングル。1997年5月1日、日本コロムビアより発売。ベスト・アルバム『RUMBLE』に収録
50年代に生まれたロックンロールは間違いなくひとつの文化である。その精神は90年代も21世紀も変わっていない。しかしながら不良のロックンローラーが声高に「文化」を叫ぶことはカッコ悪いとされてきた。そのタブーを破ったのがチバユウスケ率いる90年代日本のロケンローの雄ミッシェルガンエレファントである。「高く舞い上がらせては噎せ返るよ」と歌う「文化」は女の子を口説く時に邪魔をする社会通念なのか、それとも自由なようでステレオタイプに陥りがちなロケンローの掟であろうか。いずれにせよ、自由を求めて突き進むのがロケンロー文化の本質である。それは瑛美の行き方にも通じる。
カルチャー / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
●go!go!vanillas『おはようカルチャー』
2017/1/18発売、“多幸感共有型”ロックンロールバンド、go!go!vanillasのサード・シングル。屈指の音楽センスで孤高の存在感を放ちつづけるホリエアツシ(ストレイテナー)との共同作業で、笑顔で踊れて、笑顔で叫べるロックンロール・アンセムが誕生!
テン年代Jロックバンドのなかではヴォーカルの一途さが印象的なゴー!ゴー!バニラズが歌う文化ソングは、君と描き出す夢に出てくる新たな世界。若さっていいな、と思うのは中年の僻だろう。パーリーピーポーは踊り狂って頭を空っぽにして新たな文化を作っていくのか。俺も瑛美もちょっと苦手っぽい。
go!go!vanillas - おはようカルチャー MUSIC VIDEO
●SEX-ANDROID『グッドモーニング・サブカルチャー』
1995年から活動開始。白塗りに白衣を着たルックスが特徴で、その見た目から自らの音楽ジャンルを「医者ロック」と称するヴィジュアル系バンドSEX-ANDROID(正式名称THE CRAZY DOCTOR SEX-ANDROID ROLLING SPECIAL)の2008年の5thシングル。2017年7月19日 中野サンプラザ公演にて、無期限活動休止。
瑛美も俺も得意な文化はやっぱり福次文化=サブカルチャーになってしまう。白衣のV系バンドの寸劇PVに登場する有象無象のコスプレがサブカルチャーとは言えない気がするが、ミッシェルに通じるロケンロー歌謡は嫌いじゃない。ヴィジュアル界のバカロックと呼びたい。
Good Morning, Subculture PV - Sex-Android
●アーバンギャルド『さよならサブカルチャー』
わたしは、わたしに、わかれをつげる。男女のツイン・ヴォーカルを擁する5人組バンド、アーバンギャルドの2012年度第3弾シングル。人とは違う生き方を目指すのではなく、自分らしい生き方を実践するとはどういうことか。多くの“普通になりたくない”若者に送るメッセージ・ソング。
水玉模様の少女たちを魅了する前衛都市=アーバンギャルドの逆説的文化論ソング。サブカルチャー=自我を捨てることで新たな自我を纏う、現代少女の生き方をテクノポップに乗せて歌う浜崎容子に憧れて自己表現を始めた女子は少なくない。筆者の経験では地下アイドルグループに最低ひとりは(元)アーバンギャルが所属している。例えば夜露ひな(NECRONOMIDOL)。
アーバンギャルド - さよならサブカルチャー SPOT
●ニュー・オーダー『サブカルチャー』
「サブ・カルチャー」(Sub-culture)は、イギリスのバンド、ニュー・オーダーが1985年に発表したヒット曲である。アルバム『ロウ・ライフ』から2枚目のシングルカット作品である。シングル・ヴァージョンではアルバム・ヴァージョンに女性コーラスを加えてさらにポップ度を高めた曲作りになっている。シングルでは共作者兼プロデューサーとしてジョン・ロビーが名を連ねている。
サブカルは当然海外でも影響力は大きい。特にニューウェイヴ時代のエレクトロニクスの進化は、カウンターカルチャー(対抗文化)のサブカル化を促進させた。即ちコンピューター時代の新人類である。テクノ/ダンス/エレポップ/に興じるクラブ・ピープルに80‘sサブカルの担い手が多かった。その一方でアニメ漫画の分野で第三のサブカル=ヲタクが登場した意義は大きい。
New Order live, 1985, 'Subculture'
●おとぎ話『CULTURE CLUB』
2000年結成のロックバンド、おとぎ話による2年ぶり(2014年時)通算7枚目のアルバム。映画『おとぎ話みたい』挿入歌「COSMOS」他収録。従来のポップでファニーなイメージからストレートなロック・サウンドが炸裂する硬質なものへとイメージ・チェンジした勝負作。
メインであろうがサブであろうが文化は文化と断言するのは文化人類学の視点である。音楽だけでなくあらゆる芸術、あらゆる社会事象を見渡せば、人類の歴史=文化史であることは一目瞭然。政治経済よりも文化は上位の概念である。神の領域に近づくためには文化を制しなければならない。そのためには。。。などと頭を混乱させなくとも、文化倶楽部に入会すれば一安心。瑛美さんのご入会をお待ちしています。
おとぎ話 "きゅーと研究会" (Official Music Video)
●ハドーケン! 『ミュージック・フォー・アン・アクセラレイテッド・カルチャー』
2008年、ロック・シーンを塗り替える、超新人類、参上!!ジャンルを飛び越え、シーンを飛び越え、やってキタキタ、ハドーケン!最先端のパンクで境界線をぶち壊す、加速するカルチャーのための音楽集団。傑作格闘ゲーム`ストリート・ファイター`の波動拳をバンド名にした、イギリスはリーズ出身の異端グライム5人組のデビュー・アルバム。
日本のサブカルチャーはゲームやアニメの形で世界中に拡散された。その結果生まれたのが日本語の名前を持つバンドたちである。Urusei Yatsura(うる星やつら)と並ぶのがHadouken(波動拳)。名前通りのデジロックを聴かせたが、ぱっとしないまま2014年に活動休止。流行りものの名前は逆にブームが過ぎると古くさくなってしまうので要注意。
Hadouken - Crank It Up
●ROUAGE『カルチャー』
ROUAGE(ルアージュ)は、名古屋出身のヴィジュアル系ロックバンド。バンド名はフランス語で歯車の意味。ファンの投票により選ばれた曲を中心に、93年から98年までのルアージュの代表曲が収められたベスト・アルバムだ。彼らの美意識がよくわかる構成になっている。
2001年に解散したV系バンド、ルアージュはコミカルな要素の無いV系原理主義者らしい。PVは最小限のドラマと演奏シーンを中心にしたストイックな作り。恐らくファンサービスもツンデレだったに違いない。ベスト盤を『文化』と名付けたのは個性を表明する自信の現れである。瑛美が好きなV系はこの路線が多いように思える。
ROUAGE(ルアージュ) - 「ever [blue]」(エヴァー・ブルー)PV
●EVE『文化』
シンガーソングライター、デザイナー。これまでに2枚の自主制作アルバムを発売し、2016年10月19日には初の全国流通盤「OFFICIAL NUMBER」をリリース。本アルバムから本格的に自身による作詞・作曲中心の作品構成となる。また同年“はらぺこ商店”を立ち上げ洋服などのデザインを行い、2017年5月には「harapeco」として期間限定ショップを原宿にオープンさせるなど、音楽を中心とした複合的視点で唯一無二の世界観を表現している。そんなEVEのメジャー・デビュー・アルバム。2017.12.13発売。
世代的にボカロPとかニコ生音楽とかよく分からないが、それこそ世代的な文化の創造に違いあるまい。生活のリアリティが感じられないロケーションは懲り懲りだが、文化とは決して万人に普く与えられる物ではなく、特定の文化圏に所属することによる攻撃力はハンパない。排他性は排除したいが、独自性まで捨て去る必要は無い。手加減が必要なのである。
Eve Album「文化」2017.12.13 SPOT
文化系
カルチャーショック
電波系
●カルチャー・クラブ 『カラー・バイ・ナンバーズ』
83年にりリリースされ全米全英1位を記録したニューウェーヴの代表的名曲、「カーマは気まぐれ」で幕を開けるカルチャー・クラブのセカンド・アルバム。異能のヴォーカリスト=ボーイ・ジョージの卓抜した歌唱と、ポップでアーバンなサウンドは日本でも大いに受け入れられ、アルバムはオリコンチャートで1位を獲得した。
ボーイ・ジョージが『Fool's Mate』の表紙になった時に80'sオルタナティヴ文化の終焉を感じた。ニューロマンティックスの行き着く先が女装癖であることを知り、壁にぶち当たったままもがくしかない自分たちの活路を探した。しかし21世紀最初の15年が過ぎた頃から、自分一人に留まらず誰でも進化が可能であり、それこそがでんぱ組を追い続ける理由だと再確認した次第である。
Culture Club - Karma Chameleon