日々様々なライヴやパフォーマンスを観ているが、地下音楽・地下文化の愛好家が訪れる現場は主に屋内、特に地下室や天井裏(ロフト)が中心である。そこで行われる儀式(公演)も陽の光を避けるように湿り気を帯びた陰微の花びらが散るが如き儚さを纏っている演目が少なくない。そんな地下表現者が何かの間違いで地上のしかもサンサンと陽光差す白昼に晒されることが起こる。それは恰もラヴクラフトの『インスマウスの影』で太古の海の底から見られてはいけない神々が群をなして襲ってくる恐怖に通じる甘美な夢に魘される経験である。2017年文化の日/レコードの日の翌日・翌々日に二日連続で目の当たりにした『野外興行』の模様をレポートする。
●第6回アイ文研アイドルライブ ~What's IDOL Song?~
presented by 法政大学アイドル文化研究会
2017年11月4日(土)11:10〜16:50
『第70回自主法政祭市ケ谷地区』
法政大学市ヶ谷キャンパス中央広場特設ステージ
《出演者》
sora tob sakana/天晴れ!原宿/AIS -All Idol Songs-/Ange☆Reve/CY8ER/さきどり発進局/le biglemoi/ぷちぱすぽ☆/小泉花恋/・・・・・・・・・/マボロシ可憐GeNE/kimowota☆7(O.A)
10数年ぶりに訪れた市ヶ谷の法政大学は、2004年に失火で閉鎖された学生会館が撤去され、学園紛争時代の遺物を払拭したモダンな高層校舎が幾つも建つオシャレなキャンパスに生まれ変わっていた。学生サークル主催のアイドルイベントは、完璧なステージと音響設備を備えたプロ級のクオリティ。新進気鋭のグループが幾つも登場するステージに目当てのシューゲイザーアイドル「・・・・・・・・・(通称ドッツトーキョー)」が登場した。盛り上げ上手のキラキラ系と異なり、ヲタクもインドア派が多い現場は野外興行で異彩を放つ。サングラスで目隠しされた黒衣の少女たちがドリームポップを歌い踊る様子は、初めて太陽を見た地底人が祝杯を挙げる儀式のよう。変態インストナンバー「Dash De Koi」「Goa Than Words」のパフォーマンスは日常空間に別世界への入り口を覗かせた。交流会でメンバーは初の野外パフォーマンスの昂奮にざわめいていた。
20170930「Dash De Koi」「Goa Than Words」LIVE映像@TOWER RECORDS 梅田NU茶屋町店
●園田游踊り場
2017年11月5日(日)13:00~15:30
『第48回くにたち市民まつり』
国立駅南口大学通り
園田游 舞踏/ノブナガケン perc./中尾勘二 reeds/前田隆 bass/レンカ 舞踏/にら guitar/金子雄生 cor./相生秀樹 perc.
元グンジョーガクレヨンのリード奏者/パフォーマー園田游は現在ソロで舞踏家として活動している。暫く連絡が途絶えていたが、最近西日本を旅した様子をSNSで発信して健在ぶりをアピールした。3連休最終日に国立市のイベントに出演。グンジョーガクレヨンの前田隆と中尾勘二をはじめ、馴染みのミュージシャンが演奏で参加。国立駅北口の大学通りが歩行者天国になり、両側に露店が並び大勢の市民で賑わっている。その入り口近くにシートを広げ、襤褸を纏った園田と不敵な面構えの演奏家が不協和音を奏でている。キツネの面を被った園田のゆっくりとした動き、しばらくすると女性舞踏家レンカが白塗り和装で加わる。見物人が足を止めて眺めている。「何だこれ?」という戸惑いが多数。幼児や小学生の興味深そうな表情が面白い。ポケモンGO!や妖怪ウォッチに馴染んだ子供たちには然程不思議な光景ではないのかもしれない。2時間を超えるパフォーマンスは園田とレンカの付かず離れずの舞踏と、アンビエントと自己主張の間を行き来する音楽演奏で、日常と非日常との境界を曖昧模糊と転化させた。
ことでん仏生山レトロ電車ライブ:舞踏 ~ 園田游
ドッツ東京と園田游、いつか都電で共演してもらいたいものである。
野外には
八百万神
棲んでいる