A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私の地下ジャズ愛好癖】12弦ギターの二面性~『ロブ・ノイス / 弧分』『ドナルド・ミラー / 破戒』

2021年04月30日 01時23分43秒 | 素晴らしき変態音楽


ブルースやフォークに根ざしたアコースティック・ギターのインストゥルメンタル・ソロの音楽を紹介することを目的として2009年に設立されたレーベル、VDSQ(Vin Du Select Qualitite=厳選された品質のワイン)の近作2作を聴いた。最新作の『Chuck Johnson / The Cinder Grove』は先日レビューした通り、アコースティック・ギターのソロではなく、スチールギターと他の楽器のアンサンブルによる新機軸を打ち出したアルバムだったが、今回紹介する2作はVDSQの伝統に従ったアコースティック・ギター、奇しくもどちらも12弦ギターのインスト作品である。しかし同じ楽器を使ってもサウンドの感触は大きく異なる。ギター音楽の幅の広さを証明する意欲的なリリースである。


『Rob Noyes / Arc Minutes』『ロブ・ノイス / 弧分』
SKU: VDSQ-029

Side A: Cheap Gold - Pishamares - How and Wither - Magic On Television - Vout - Animal Grief
Side B: The Sniper's Dream - Invisible Ridicule - Dwelling - Old Devils - Tackbeater - And How - Absolutely Still

Rob Noyes - 12 String Guitar
Recorded and mixed by Kevin Micka at the Berwick, Roxbury, MA and Odd Fellows Recording, Weymouth, MA

ニューイングランド出身で、現在は東京をベースに活動するギタリスト、ロブ・ロイスのVDSQでの2枚目のアルバム。Robbie BashoやJohn Faheyを想起させる流れるようなアコギサウンドを聴かせる。中世リュート音楽に通じる美しいアルペジオと透明感のあるリバーブに包まれたリリカルな音色は、これぞ12弦ギターという趣。アメリカ西部の古き良き時代に思いをはせる哀愁のギターが、聴き手の意識をリフレッシュさせる。独特の響きを最大限に活かしたふくよかな録音も素晴らしい。ブルースよりもカントリー&ウェスタンに親和性を持つアメリカーナの注目作である。

Rob Noyes - Arc Minutes - Magic on Television / Vout / The Sniper's Dream




『Donald Miller / Transgression!!!』『ドナルド・ミラー / 破戒』
SKU: VDSQ 028

SIDE A: The Man In The Well - A Little Anatomy of the Physical Unconsciousnesses (for Davey Williams) - Leonora in the Morning
SIDE B: There's A Dance In The Old Dame Yet (for our beloved Squeaky Frome) - A Pseudoragasque Pavanne (for Jack Rose) - For I Am A Cat Of The Devil I Am (or Variations upon "A Spoonful Blues" by Charlie Patton)

Recorded and mixed at Christopher Robert's home studio over three sessions, amongst our other musical endeavors, betwixt Spring and Summer of 2017, a dozen blocks from my house in New Orleans.

ドナルド・ミラーは79年にニューヨークで結成されたサックス2本とギターからなるインプロトリオ、ボルビトマグース Borbetomagusのギタリスト。巨大なサックス2本が爆音を吹きまくり、その間を捻じれたギターが炸裂し、ノイズとフリージャズの斜め上を突進するボルビトマグースのサウンドを考えると、アコースティック・ギターを爪弾くよりも叩き割るほうがお似合いかもしれないが、ミラーはギターの弦を愛撫するように繊細な指使いで音を導き出す。しかしながら生まれ出ずるサウンドは、12弦ギターらしいスチール絃の共鳴に収まらない。ブルースの哀感、ハープのような透明な響き、スライドバーの摩擦音、魔術的な弓弾き、蜃気楼のようなハーモニクス。耳元で鳴るような接写ならぬ接録された臨場感のあるサウンドが、聴き手の聴覚に引っ掛かりを生じさせる。ジャケット写真に写る邪教の神や異形の面や動物の骸骨に魅入られた者にとっては、ただの音楽ではなく、邪悪な大氣を払う呪文に違いない。ご丁寧にもレコード袋には悪魔や魔獣があしらわれた無邪気な幼児の写真が印刷されている。ドナルド・ミラーの12弦ギターは、爆音に塗れたボルビトマグースの魂の真ん中にあるエッセンスを凝縮した、闇の音楽美学を暴き出すようだ。

DONALD MILLER - John Fahey Tribute


VDSQ Bandcamp⇒https://vdsq.bandcamp.com/artists

12弦
十二分に
自由たれ

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