10月11日、「夢・あいホール」にて第156回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。
講師は、株式会社ターニングポイント代表取締役、赤井知一様。「不登校生・発達障害・起立性調節障害のための自分の居場所~留学という選択肢~」と題して、留学を通じて不登校問題と向き合うお話を伺いました。
赤井さんが現在のお仕事にたどり着くには、実は伏線があります。それは高校時代、大学時代の留学経験です。今のような「不登校」という問題が恐らくなかったわけではなく、表面化していなかった時代。赤井さんもどちらかというと学校に行きたくないと思っていたタイプだったそうです。そんな赤井さんの最初の留学経験は高校1年生の時。心配した親御様のすすめで高校1年生の時2週間アメリカにホームステイに行きました。そこでとても自由を感じたそうです。そしてホームステイ先では身の回りのことは全部自分でやらなければならない。例えば朝食を作るというようなちょっとした成功体験の積み重ねから自信が生まれたそうです。全く分からなかった英語も、帰国する頃には相手の言っていることは何となくわかるようになっていました。一方で、自分の感謝の気持ちを伝えられないもどかしさから悔しい想いもされたそうです。
二度目の留学経験は大学生の時。卒業を控えやりたいことも定まらなかった時に研究室の教授の勧めでオーストラリアへ2年半の本格的な留学に旅立ちました。その経験で、ご自身の性格も大きく変わったそうです。帰国後は理科系の学部でしたが、留学経験を活かし留学を支援する会社に就職されました。以降、留学を支援する事業に従事すること25年、これまで5,000人以上を留学に送り出してこられたそうです。
そんな時、留学を希望しカウンセリングに訪れる人たちの中に、社会問題化していた不登校児や発達障害の方の相談が見られるようになりました。普通、そもそも留学がしたいという動機を持つ人は自主性があります。したがって、大抵の場合、留学前のサポートの後は知らない間に留学に行き、自分で帰ってきてしまいます。しかし、不登校の方や発達障害の方は事情が違います。現地で放っておくという訳にはいかないので、担当カウンセラーによる現地での手厚いサポートが必要になる。しかし、当時大手の留学支援ではそこまでの手厚いサポートはできませんでした。しかし、ご自身が学校に行きたくないと思っており、留学で人生が変わった経験をもつ赤井さんは、その様な方たちにこそ、人生を変える転機を掴んでいただくためのサポートが必要なのではないかと考えました。そして一念発起して起業した会社が、「ターニングポイント」。読んで字の如しです。
現在、小中校で30日以上欠席した児童、いわゆる「不登校児」は30万人にも上り、かつ年々増加傾向にあるそうです。その原因は、先生、校則、身体の不調、生活のリズムの乱れ(ゲーム、スマホの存在も一因)、学業不振、友人関係など様々ですが、いずれにせよストレスから不登校になるケースが多いようです。この問題に文部科学省も支援予防策を打ち出してはいますが、「不登校特例校」が「学びの多様化学校」と呼び名を変えた学校が全国わずか24校といった現状です。
決して日本の教育が間違っているとか、悪いという意味ではなく、それに適応できないという方たちの選択肢として「海外」というのがあるのではないかというのが、赤井さんのお考えです。自分を取り巻いている生活環境から離れることで、確かに環境が変わることのストレスもありますが、自立できる機会、一人でやり遂げる自信、(不得意の克服ではなく)得意を伸ばす教育が得られる可能性があります。実際、肌感覚ではありますが、日本で不登校だった子が、海外ではほぼ朝ちゃんと起きて学校へ行くそうです。
「留学」と聞くと敷居が高そうですが、赤井さんの会社では不登校や発達障害の方々が安心して海外に旅立てるよう、様々な留学スタイルを用意しています。例えば、最短3泊4日からでも可能ですし、英語力はもちろん不問、引率付きのグループツアーもあります。勉強よりアクティビティを多く取り入れ、体験を重視したりといった工夫もあります。もちろん、本格的な留学も可能です。留学の結果、価値観の変容、日本の学校への復学、人間関係改善、規則正しい日常生活、やり遂げた自信など様々な成果が得られています。
さらに、前述の通り、留学に至るまでのサポートも非常に充実させています。不登校や発達障害の方は周囲の大人に対して壁があるので、留学の準備過程でまず彼らとの信頼関係を築かなければなりません。そこで、それぞれの人に合った個別カリキュラムの作成、定期的カウンセリング、マンツーマン英語レッスン(10回)、国内ホームステイ(海外をイメージした研修施設で模擬留学)、1泊2日のテイクオフミーティング、出発空港でのチェックインサポート、帰国後の報告会など、きめ細やかな支援が用意されています。
不登校や発達障害の方たちは人並み以上に留学というのは敷居の高いものだと思います。しかし、だからこそ人生を変えるパラダイムシフトが起こせる潜在能力が留学にはあるのだという逆転の発想が、留学という経験の意義そのものを大きくしているように感じました。
心が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
過去のセミナーレポートはこちら。