新国立劇場2004/2005シーズン 「ラ・ボエーム」

新国立劇場 2004/2005シーズン
プッチーニ「ラ・ボエーム」

指揮 井上道義
演出 粟国淳
ミミ アディーネ・ニテスク
ロドルフォ ジェイムズ・ヴァレンティ
マルチェッロ カール=マグヌス・フレドリクソン
ムゼッタ 水嶋育
ショナール 河野克典
コッリーネ シャオリャン・リー
ベノア 大久保眞
アルチンドロ 晴雅彦
パルピニョール 樋口達哉
合唱 新国立劇場合唱団(児童合唱 NHK東京児童合唱団)
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

2004/10/3 15:00 新国立劇場オペラ劇場 4階L6列

昨日は新国立劇場の「ボエーム」を聴いてきました。昨年4月に行われたプロダクションの再演です。(前回の公演は、ダブルキャストの、通称Bキャストの方を聴いたのですが、あまり記憶に残っておりません。)

この公演をまとめた指揮の井上道義はなかなか良かったのではないでしょうか。前半こそ、指揮がやや前のめりになりすぎていたのか、歌手と上手く合わない部分がありましたが、後半はどんどん持ち直していきます。特に第4幕などは井上の真骨頂とも言えるような見せ場をつくっていました。おそめのテンポでピアニッシモまで繊細に響かせるその様子。第四幕全体を覆う絶望的な哀しみを上手に表現していたとも言えるでしょう。また、あちこちで聴かれた絶妙な「間」も見事です。悲劇性をさらに強調させます。(ただし、前半、特に第一幕はやや平板でした。)

歌手陣は全体的に低調だったかもしれません。ムゼッタの水嶋もあまり存在感を示しきれていない上に、何と言ってもロドルフォ役のヴァレンティの線が細すぎます。もちろん、あのような優男型のロドルフォもまた一興なのかもしれませんが、歌も少し不安定で、聴いていて時にハラハラさせられます。またミミのニテスクは、第四幕こそ井上の指揮に上手くのせられたのか良い雰囲気を出していましたが、全体としては何かもう一つ足りないような出来でした。ただ、脇役になりますがアルチンドロ役の晴はかなり存在感があったと思います。声量があって声も美しく演技も上手い。もっと出番が欲しいと思うほどでした。

演出は再演ですので当然ながら前回と同じです。オーソドックスで歌の邪魔をしない良いものだったと思います。雪の降る夜明け前の第3幕は大変に雰囲気が出ていて、また第二幕では奥行き感を上手くつくって街の賑いを演出しつつ、劇進行をとてもスムーズに進めていました。

井上の再登板はあるのでしょうか。もう何回かはやはりプッチーニで聴いてみたいと思いました。
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