国立西洋美術館 「マティス展」

国立西洋美術館(台東区)
「マティス展」
2004/9/10~12/12

こんにちは。はっきりしない天気が続きます・・・。

昨日は上野の西洋美術館でやっていたマティスの展覧会を観てきました。マティスは有名な芸術家ですので、あちこちで展覧会をやっているような感じがしますが、今回のような大規模な展覧会が東京で行われたのは数十年ぶりだそうです。(これは意外。)展示の方向性にはなかなかの工夫が凝らされていて、ただ単にマティスの主要な作品を時系列に並べるのではなく、マティスが作品にすべく対象と見た主題をどのように変化させていったのか(変奏)ということと、彼が作品の生成をどのように見つめてそれを表現していたか(過程)ということの2つに主眼を当てて、マティスの作品の解明を試みるような内容となっていました。ですから、内容理解をとても丁寧に探れるような感じでしたね。

変奏(ヴァリエーション)のセクションでは、当然ながら今書いた通り、いくつかの主題を彼がどのように変化させていくのかが興味深いわけですが、私が一番面白いと思ったのは、ブロンズの立体作品である「ジャネット」と「背中」です。マティスの絵画は、私の見当違いかもしれませんが、全体的にややのっぺりした非立体的な感覚の印象を受けるのですが、これらのブロンズは正にそれを補うような表現でして、彼が対象を空間としてどう捉え、どう表現したのかが一瞥で感じ取ることが出来るような気がしました。作品そのものも力強く肉感的で、何かひかれるものがありましたね。

過程(プロセス)では、著名な作品がゴロゴロしているような感じでして、「大きな赤い室内」や「金魚鉢のある室内」、それに「黄色と青の室内」などの作品は、構図感とも色彩感とも美しく、奇抜なようで実に上品な落ちつきが感じられて、どれも素敵でした・・・。贅沢な話ですが、部屋に飾ったら部屋の雰囲気を一変してくれそうですね。また、ポスターにもある「夢」ですが、確かにこれは作品がどのような形で制作されたのかがよくわかるようになっており、不思議な感じさえする構図の生い立ちが理解できます。

最後のセクションでは有名な「ジャズ」や、いくつかの抽象的な作品が並んでいました。「ジャズ」はあちこちでよく見るような気がしますが、これまでの展示を踏まえた上でまた改めて見ると、その印象も変わってきますね。

ところで、今回のマティス展は、その展示内容がしっかりしていましたし、私自身もマティスが以前から結構好きでしたので、かなり楽しめたことは事実なのですが、しばらく人ごみ(結構混雑していました。)に紛れながら作品を見ていくうちに、「あれ、マティスってこんなのだったかな。」というような漠然とした問いが、何故か頭から離れませんでした。上手く説明できないのですが、どの作品からもあまり存在感が感じられず、やや印象が薄いような感じがしたのです・・・。大概の作品は、ポスターや絵葉書などよりも現物のものが圧倒的だと思うのですが、どうもマティスに関してはその辺があまり変わらないような気がしてなりませんでした。私の注意力が散漫だっただけかもしれませんが、う~ん、どうも「何か」が足りなかったような気がしましたね・・・。(「何かってなんだよ!」というツッコミはご容赦下さい・・・。)とはいえ、展覧会そのものは何度も書く通りしっかりしたものですので、十分にお薦めできる美術展だと思います。

*同時開催の「オランダ・マニエリスム版画展」はかなり面白かったです。特にヤン・サーンレダムの「一日の四つの時」(四点連作)は素晴らしいですね!その中でも「夕暮れ」はしばらく頭を離れそうもないぐらい感銘を受けました。こちらの展覧会は私としては大推薦です。(マティス展チケットで入場できます。)
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