都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
国立西洋美術館 「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」 3/13
国立西洋美術館(台東区上野公園)
「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」
3/8~5/29
昨日はTakさんご主催のオフ会に参加しながら、西洋美術館の「ラ・トゥール展」を観てきました。
ところで、この展覧会、おそらく今月中にもう一度観に行くと思います。元々そのつもりで予定をしていましたが、今回鑑賞して尚更その思いを強めました。展覧会のボリュームとしては、ラ・トゥールの作品が少ないこともあってか、決して大きいものではありません。しかし、一作一作から感じられる闇の深淵と光の粒、そして人の息づかい…。それらは強く心に迫ってきます。今ここで何度も足を運ぶ価値があると思いました。
ということで、今回の感想は「一回目」として、展覧会の中で特に気になった作品について書くことにします。私が圧倒的に素晴らしいと感じたのは、「荒野の洗礼者聖ヨハネ」(県立ラ・トゥール美術館蔵)と「聖ヨセフの夢(聖ヨセフの前に現われる天使)」(ナント市立美術館蔵)の二点です。
この二つの作品は、ある意味で対照的な要素を持つのかもしれません。というのも、「聖ヨハネ」は、光がヨハネの肩の上からわずかに差し込んでいるだけで、全体としては大きな闇が覆い被さっていますが、「聖ヨセフ」は言うまでもなく、天使の腕に隠されたロウソクの光源が仄かに全体を照らし出し、そこから美しい光と影の対比を生み出します。また、「聖ヨハネ」では、肩を重々しくおろすヨハネが中心に大きく、半ば静的に描かれて、左手に持つ十字架と右手の先に見える羊がそれをさらに高める形で存在していますが、「聖ヨセフ」の方は、ロウソクの明かりに照らされた幼げな天使の表情と、ヨセフに向かってかかげる両手が、やや動作を持つ形で配されています。
この二つの作品は、偶然ながら角を挟む形で隣り合って並んでいました。「光と闇の世界」とは、この展覧会のサブタイトルですが、その意味はこの二点を鑑賞することで感じられるように思います。もちろん、「聖ヨセフ」のロウソクの光源が作中に与える、まるで、光の粒子を天使の顔や服装にサーッと蒔いたかのような輝きと、それらが生み出す衣服や透き通るような手の質感も素晴らしいですし、「聖ヨハネ」全体を支配するような、暗闇の重々しい悲哀感も心に染み入ります。こればかりは甲乙がつきません…。
初めのセクションにあった十二使徒と、あちこちに配される模作や関連作、そして、今回の展示作品の中で最も圧倒的な「ダイヤのエースを持ついかさま師」(ルーブル美術館蔵)については、また今度、二度目を鑑賞した際に色々と書きたいと思います。(二度目の鑑賞の感想はこちらへ。)特に「いかさま師」の緊張感と堅牢感は、並大抵のものではありません…。それに「書物のあるマグダラのマリア」の流れるような髪も素晴らしかった…。本当に見所がたくさんあってきりがありませんが、ラ・トゥールの作品全40点のうち20点を、東京で鑑賞できる最高の機会。これは絶対に見逃せないと思います。
「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」
3/8~5/29
昨日はTakさんご主催のオフ会に参加しながら、西洋美術館の「ラ・トゥール展」を観てきました。
ところで、この展覧会、おそらく今月中にもう一度観に行くと思います。元々そのつもりで予定をしていましたが、今回鑑賞して尚更その思いを強めました。展覧会のボリュームとしては、ラ・トゥールの作品が少ないこともあってか、決して大きいものではありません。しかし、一作一作から感じられる闇の深淵と光の粒、そして人の息づかい…。それらは強く心に迫ってきます。今ここで何度も足を運ぶ価値があると思いました。
ということで、今回の感想は「一回目」として、展覧会の中で特に気になった作品について書くことにします。私が圧倒的に素晴らしいと感じたのは、「荒野の洗礼者聖ヨハネ」(県立ラ・トゥール美術館蔵)と「聖ヨセフの夢(聖ヨセフの前に現われる天使)」(ナント市立美術館蔵)の二点です。
この二つの作品は、ある意味で対照的な要素を持つのかもしれません。というのも、「聖ヨハネ」は、光がヨハネの肩の上からわずかに差し込んでいるだけで、全体としては大きな闇が覆い被さっていますが、「聖ヨセフ」は言うまでもなく、天使の腕に隠されたロウソクの光源が仄かに全体を照らし出し、そこから美しい光と影の対比を生み出します。また、「聖ヨハネ」では、肩を重々しくおろすヨハネが中心に大きく、半ば静的に描かれて、左手に持つ十字架と右手の先に見える羊がそれをさらに高める形で存在していますが、「聖ヨセフ」の方は、ロウソクの明かりに照らされた幼げな天使の表情と、ヨセフに向かってかかげる両手が、やや動作を持つ形で配されています。
この二つの作品は、偶然ながら角を挟む形で隣り合って並んでいました。「光と闇の世界」とは、この展覧会のサブタイトルですが、その意味はこの二点を鑑賞することで感じられるように思います。もちろん、「聖ヨセフ」のロウソクの光源が作中に与える、まるで、光の粒子を天使の顔や服装にサーッと蒔いたかのような輝きと、それらが生み出す衣服や透き通るような手の質感も素晴らしいですし、「聖ヨハネ」全体を支配するような、暗闇の重々しい悲哀感も心に染み入ります。こればかりは甲乙がつきません…。
初めのセクションにあった十二使徒と、あちこちに配される模作や関連作、そして、今回の展示作品の中で最も圧倒的な「ダイヤのエースを持ついかさま師」(ルーブル美術館蔵)については、また今度、二度目を鑑賞した際に色々と書きたいと思います。(二度目の鑑賞の感想はこちらへ。)特に「いかさま師」の緊張感と堅牢感は、並大抵のものではありません…。それに「書物のあるマグダラのマリア」の流れるような髪も素晴らしかった…。本当に見所がたくさんあってきりがありませんが、ラ・トゥールの作品全40点のうち20点を、東京で鑑賞できる最高の機会。これは絶対に見逃せないと思います。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )