SCAI THE BATHHOUSE 「遠藤利克展 空洞説」

SCAI THE BATHHOUSE(台東区谷中)
「遠藤利克展 空洞説」
2/25~3/26(会期終了)

こんにちは。

SCAIで開催されていた遠藤利克氏の個展を見てきました。会期最終日の駆け込みです。

ギャラリーに入ってすぐ、一瞬我が目を疑いました…。何故なら、直径5メートルはあろうかと思われる巨大な焦げ付いたような円筒形の構造物が、展示室いっぱいに圧倒的な存在感をもって置かれていたからです。「これは一体なんだろうか。」素直にそう思いました。

円筒形の作品の内部は、視界に捉えることができません。何かが入っているかもしれないし、そうでないかもしれない。タイトルの「空洞説」のみが、それの解答を与えてくれるようです。ぐるぐると何周か円筒の廻りを歩いていると、年代物の巨木の周囲を徘徊しているような、そんな気分にさせられます。美術館では今まで味わったことがない感覚です。都会のギャラリーに居るとは思えないような、寡黙で、半ば自然を思わせるような空間が支配していました。

私が一番面白いと思ったのは、ギャラリーに入ってすぐ右側にあった「虚空的死」です。壁に掛けられた四角形の白い扉のようなものが、大きな鏡と向き合うようにしてくっ付いています。僅かな隙間からは、扉の内側に置かれた鏡を通して、鏡と鏡に挟まれた無限の空間を感じとることができます。ギャラリーの一番奥に、この作品のミニチュアか設計図のような作品がありましたが、そちらには、内側の鏡が砕かれて作られているものもあり、それはまた、初めの作品とはひと味異なった質感をもたらしています。私はこの砕かれた方の作品に惹かれました。

受付には、遠藤氏のこれまでの作品が掲載されている冊子が置かれています。私は大変失礼ながら、彼の作品について全く無知だったのですが、一つ一つの素材感を丁寧に生かして、そこに何らかの物語性を注入するかのような作品群は、また拝見してみたいと思いました。不思議な世界観でした。

*毎日新聞の美術面に批評記事が載っていました。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )