「鳥獣花木図屏風」の超豪華「写真集」、本日刊行!

只今、京都巡回中のプライスコレクション展でも話題の「鳥獣花木図屏風」が、この度一冊の豪華な「写真集」となって刊行されました。手がけたのは、この作品をこよなく愛してやまない日本美術研究家、山下裕二氏です。定価は税込みで3360円(!)。内容の95%ほどが「鳥獣花木図屏風」のカラー図版で占められています。(残りの5%ほどが山下氏の文章です。)細部の細部まで徹底して拡大した図版。実際に見るよりも、この作品が詳細が良く分かると言えるほどかもしれません。ともかく屏風の拡大写真が、特段の解説もなく延々と続いていきます。色々な意味でぶっ飛んだ写真集でした。

「伊藤若冲 鳥獣花木図屏風/山下裕二/小学館」

山下氏と言えば、真贋等の問題がつきまとっている「鳥獣花木図屏風」を間違いなく若冲の作であると述べている研究家です。(それに対して「鳥獣花木図屏風」を若冲の模倣作だとしているのは、「もっと知りたい伊藤若冲」の著者でもある佐藤康宏氏です。)もちろん山下氏は今回の本で、佐藤氏へ反論を含んだ「若冲作決定論」を展開しています。しかしながらそれは、実に残念なことに、あまりにも短く、また控えめで物足りない論証で終ってしまっていました。この著作で、専門家による真贋論争が喧々諤々と始まり、作品研究のさらなる発展に繋がると考えるのは間違いかもしれません。率直に申し上げれば、この作品が若冲であるとする論をもっと展開していただきたかったのです。先輩学者に対する妙な遠慮なぞ無用です。これほどの豪華本を出すのであれば、それこそ佐藤氏を「ぎゃふん」と言わすチャンスです。静岡県美の「樹花鳥獣図屏風」云々でなく、何故にこの「鳥獣花木図屏風」が若冲作であり、また「スゴい」のか。それを専門家ならではの視点で仔細に分析していただきたかったと思いました。(もちろんその反面、佐藤氏にも何故この作品が若冲でないのか、それをもっと一般に向けて論じて欲しいと思います。)

「もっと知りたい伊藤若冲 - 生涯と作品/佐藤康宏/東京美術」

まずはともかく、一度書店にてお手に取られてみることをおすすめします。

*関連エントリ(二点の屏風についての感想です。)
「若冲と江戸絵画」展 東京国立博物館 (その3・エキセントリック)
伊藤若冲派 「樹花鳥獣図屏風」 静岡県立美術館

私はこの二点の屏風画の真贋については全く分かりませんが、どちらかと言えば「樹花鳥獣図屏風」の方が好きな作品です。見通しの良い構図感が優れていると思います。
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