「館蔵 秋の優品展」 五島美術館 10/1

五島美術館世田谷区上野毛3-9-25
「館蔵 秋の優品展 - 絵画・墨跡と李朝の陶芸 - 」
9/2-10/22



所蔵の佐竹本三十六歌仙絵が出品されると聞き、初めて五島美術館へ行ってきました。美術館御自慢の古美術コレクションにて構成された「秋の優品展」です。歌仙絵を中心とした鎌倉時代の絵画と、古写経や墨跡、それに李朝(朝鮮)の陶芸品などが展示されていました。



藤原元輔(908-990)は、かの清少納言の父としても知られる平安時代の高名な歌人です。「佐竹本三十六歌仙絵 藤原元輔」(13世紀)ではまず、束帯の後ろに伸びているような白い下襲(したがさね)が、まるで羽のようにひらひらと靡く様子が印象に残りました。そして透き通るような束帯の黒も、また口元に鮮やかに色付く紅色も美しく映えている。おっとりした顔をやや下に屈めて見つめる表情は、どこか物憂げです。十分な余白にポツンと佇むその姿が何とも儚く感じられました。

歌仙絵は何も佐竹本だけではありません。その他「業兼本三十六歌仙絵 猿丸大夫」(14世紀)や「後鳥羽院本三十六歌仙絵 平兼盛」(14世紀)なども、古来の詩情に思いを馳せるのにはピッタリの名品でした。また、それぞれの歌の優劣を競う「時代不同歌合戦」も興味深い作品です。左右の歌人たちが、これ見よがしに歌を披露し合う姿が目に浮かびます。

李朝の陶芸では、「粉青白地掻落牡丹文扁壺」(15世紀)が一推しです。楕円形の壷の側面に描かれた大きな牡丹の花。そのデフォルメされたような大胆な描写は、まるで鳳凰が大きく翼を広げている姿のようにも見えます。また側面にも、それこそ空間を埋め尽くすかのように所狭しと花が描かれていました。率直に申し上げて、この他に多く展示されていた李朝の茶碗は良さが全く分からなかったのですが、この壷だけは格別の味わいがあったと思います。

国宝の「紫式部日記絵巻」が今月14日から出品されるそうです。展覧会は22日まで開催されています。
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