「VOCA展 2010」 上野の森美術館

上野の森美術館台東区上野公園1-2
「現代美術の展望 VOCA展 - 新しい平面の作家たち - 」
3/14-3/30



40歳以下の作家による新たな平面表現を紹介します。今年で17回目を迎えた現代美術の展覧会、「VOCA展 2010」へ行ってきました。

まずは本年の受賞作家です。7名の選考委員によりVOCA賞1名、VOCA奨励賞2名、佳作賞2名が選ばれました。(展覧会HPより

VOCA賞 三宅砂織:「内緒話」/「ベッド」
VOCA奨励賞 坂本夏子:「BATH, L」/「Funicula(仮題)のための習作b」
VOCA奨励賞 中谷ミチコ:「そこにあるイメージ1/2」
佳作賞 清川あさみ:「HAZY DREAM」
大原美術館賞 齋藤芽生:「密愛村 ~ Immoralville」


坂本夏子:「BATH, L」/「Funicula(仮題)のための習作b」(VOCA奨励賞)

今年は具象という言葉がキーワードにも挙っているようですが、私としてはモチーフ云々よりも質感表現を重視した、ようは非常に作り込まれた作品が多いという印象を受けました。一口に平面と言えども、その素材は一見しただけでは分からないほど凝っています。


市川孝典「untitled(rooty)」


清川あさみ「HAZY DREAM」(佳作賞)

和紙を線香で焼いて木漏れ日の差し込む森の景色を描く市川孝典の他、都市の写真を糸で縫い、さらに写真で撮ってまた縫い込むといった清川あさみの作品などはその一例と言えるのではないでしょうか。直感的なイメージではなく、限りなく作品へ近づいて初めて開けてくる物質感も興味深いものがありました。


ましもゆき「永劫の雨」


大野智史「MELANCHOLY(self portrait)」

開催初日、一部拝聴したシンポジウム(「いま、なぜ『具象』なの?」)にて、選考委員でもある荒木夏実氏が、今回のVOCAを象徴する6のキーワードを挙げられました。簡単に記録しておきます。

「加工、傷」:様々な技法によって作品表面にあえて傷のようなものを加える。
「動き、揺らぎ」:平面表現でありながらも、そこに動きや揺らぎを感じさせる作品が多い。
「距離」:加工とも関係するが、様々なテクスチャによって独特の距離感を与えている。
「映像」:映像的なイメージを思わせる絵画作品など。
「少女」:モチーフとして少女、また未熟なものを取り込んでいる。今後成長していくイメージ。
「連作」:一点ではなく、何点も見せていくことで、一つの世界を提示している。連続から拡散へ。


名知聡子「BOY」


薄久保香「encounters and beyound-部分と全体-」

具象の観点からすれば、先日、小山登美夫ギャラリーで圧倒的な展示を見せた名知聡子や、淡い紫の髪を振り乱しながら顔を手で覆って立つ少女を描く薄久保香なども印象に残ります。なお薄久保についてはかなり前にTARONASUで個展を見た記憶がありますが、そろそろ次の展示も楽しみにしたいところです。


風間サチコ「第日本防空戦士・2670」

無人島でのミニ企画展も好評だったと聞く風間サチコが、横3.6m縦1.8mにも及ぶ超大作を出品しています。一点だけとしては展示中最大のインパクトがあったかもしれません。


大庭大介「SAKURA」

偏光パールが淡い桜色を放つ大庭大介「SAKURA」も一際注目されていました。それこそ桜で賑わう上野の春にも良く似合う作品かもしれません。

なおVOCA賞を受賞された三宅砂織のインタビュー記事がCINRA.NETに掲載されていました。

「VOCA展2010」三宅砂織インタビュー

会場のこともあってか、展示そのものは飾り気がありませんが、ギャラリーなどでも活躍する若手作家の動向をまとめて知るには好都合な企画と言えるのではないでしょうか。毎年、VOCAを見た後、ギャラリーでの個展を追っかけていくことも少なくありません。


齋藤芽生:「密愛村 ~ Immoralville」(大原美術館賞)

会期中無休にて今月末日まで開催されています。タイトなスケジュールでもあるのでお見逃しなきようご注意下さい。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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