「命の認識」 東京大学総合研究博物館

東京大学総合研究博物館文京区本郷7-3-1 東京大学本郷キャンパス内)
「命の認識」
2009/12/19-2010/3/28(会期終了)



東京大学総合研究博物館で開催されていた「命の認識」展へ行ってきました。

展覧会の概要については同博物館の公式HPをご参照下さい。

命の認識@東京大学総合研究博物館

なお掲載の遠藤秀紀の「苦悩の部屋へ、ようこそ」の一文が際立っています。ここは必読です。

既に終了した展覧会でもあるので手短かにいきますが、会場に展示されていたのは、60センチほどのステージの上にのる無数の動物の骨そのものでした。それらは解体され、キャプションなども付けられることなく、素人目には何の動物であるかも分からないようにして並べられています。あたかもさざ波のように広がる骨の海に驚いた方も多かったのではないでしょうか。まさに息をのむ景色でした。

鳥と並び、殆ど唯一、それが特定の動物として認識出来るのが、象の子どもでした。潤んだ眼を半開きにし、また手足をやや屈めながらケースの中に入る様子からは、この動物が持っていたであろう「生」の瞬間を否応無しにも感じ取ることが出来ます。そして下へ屈むことで初めて見える内蔵だけが、この象が確実に死んでいること、そして人の手によって標本と化したことを伝えていました。

それにしてもこれほど企画者の意図が色濃く反映されている展示もそうありません。キャプションもなく、あえて整然と台の上に載せられた動物の骨は、そうした特異な展示手法という点において、かえって企画側の強い美意識が現れているように思えてなりませんでした。もちろん悪い意味ではありませんが、「人の意思」(「苦悩の部屋へ、ようこそ」より引用)、そして人の作為は展示室に充満しています。

優劣云々ではなく、科博の哺乳類展とは非常に対照的でした。その意味でも両方の展示を見ることが出来て良かったと思います。

実際の会場では半ば夢中に骨の造形に見惚れていた面はあったものの、後で振り返るとずしりとした重みを感じる展示でした。この余韻がそれこそいつか「苦悩」へと変化するのかもしれません。

撮影可ということで写真をアップするつもりでしたが、編集しているうちに少し背筋が寒くなってしまいました。ここはやめておきます。

説明的な部分はほぼ削がれた会場、反面での非常に解説の充実した図録、また挑戦的な文言で見る人の目を惹き付けるWEBサイトと、役割分担を明確にした展覧会全体の見事な一種のプロモーションには感心させられました。

展示は既に終了しました。
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