「ニューアート展NEXT2011」 横浜市民ギャラリー

横浜市民ギャラリー
「ニューアート展NEXT2011 Sparkling Days」
9/30-10/19



気鋭の若手女性作家、3名の制作を紹介します。横浜市民ギャラリーで開催中の「ニューアート展NEXT2011 Sparkling Days」へ行ってきました。

出品作家は以下の通りです。

曽谷朝絵
荒神明香
ミヤケマイ


さて市民ギャラリーとあるので、スペースとしても、また作品としても、それほどボリュームがないと錯覚してしまうかもしれませんが、実のところ一美術館での企画として捉えても遜色のない内容となっています。

出品総数は全100点です。荒神明香に関しては大規模なインスタレーション、1点のみでの勝負でしたが、ともかくも全体を通して期待以上に見応えのある展示という印象を受けました。

順路からしてトップバッターをいくのが切り絵に立体、そして屏風に玉砂利のインスタレーションなどで、時に風刺精神をも見せた和の空間を展開するミヤケマイです。


ミヤケマイ「山水空図」2010年 ミクストメディア、立体額

彼女の作品は出品作家中最大の約70点に及びますが、使われた素材はもとより、多様な表現には目を見張るものがあります。

まず面白いのが「風神」と「雷神」です。ずばり宗達や光琳で有名な風神雷神図のモチーフを借りた作品ですが、ピンクや黄色のカラーボックスの中で跳ねる風神や雷神の姿は実にコミカルではないでしょうか。ピカチュウを伴う雷神はともかくも、ダイソンの掃除機で雲を集める風神という発想には意表を突かれる方も多いかもしれません。ここはにやりとさせられました。

素材に黒板を用いたボックス型の立体も見逃せません。ボックスは開閉可能で、そこには作家のメッセージなども記されています。中で悠々と泳ぐ人魚の姿もまた粋でした。


ミヤケマイ「空」2010年 インスタレーション

視覚トリックを利用した作品も目を引きます。また遊園地をランプでデコレーションしたボックスの中でポップに表したり、軸画に蝶を描きつつ、その上から蝶のオブジェを吊らしたもの、さらには軸の中に電球を埋めこみ、仏具と組み合わせた作品など、見せ方の一つ一つをとってもバリエーションが豊かでした。


曽谷朝絵「Circles」2010年 油彩、パネルに綿布

さて先だっての資生堂の個展の印象も見事だった曽谷朝絵も充実しています。出品は資生堂の時に近い大掛かりなインスタレーション1点と、絵画約30点です。


曽谷朝絵「鳴る色」2010年 *資生堂ギャラリーでのインスタレーション

ホワイトキューブの色とりどりの花が乱れ、それこそ色に光に包まれる体験が心地よい「鳴る光」の空間は、資生堂ギャラリーよりも広かったのではないでしょうか。また私自身、曽谷の絵画を30点というスケールで見たこともなかったので、この展示だけでも行って良かったと思いました。

荒神明香の『空中パスタ都市』ならぬ「pasta strata」は、それこそハイライトに相応しい壮大なスケールのインスタレーションです。

ぶらりとピアノ線で吊るされた都市の素材はなんと細いパスタです。ボランティアスタッフの方と共同でパスタをつなぎ、この作品を作り上げたとのことでしたが、上へとあがる階段から連なる家々、さらには風車にブランコに空を舞うヘリコプターと、まさに都市の輪郭そのものが、そのパスタという思いもよらぬ素材で表現されています。

なおこの作品は震災で被害を受けた都市から着想されたそうです。そう捉えると、どこか都市の抜け殻とも言うべき虚無感をたたえているようにも思えました。(またミヤケマイにも原発事故と関連した作品が展示されています。)

会場は関内駅すぐの公共施設です。失礼ながら古びた外観からは想像もつかないかもしれませんが、ともかく展示の内容としては秀逸であるのは間違いありません。おすすめ出来ます。

ニューアート展NEXT 2011 Sparkling Days


入場はなんと無料です。10月19日まで開催されています。

「ニューアート展NEXT2011 Sparkling Days」 横浜市民ギャラリー
会期:9月30日(金) ~10月19日(水)
休廊:無休
時間:10:00~18:00
住所:横浜市中区万代町1-1 横浜市教育文化センター内
交通:JR線関内駅南口より徒歩1分。横浜市営地下鉄ブルーライン関内駅1番出口より徒歩3分。
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