酒井抱一関連書籍情報

千葉市美術館へ巡回中の「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展も中盤を迎え、少なからず盛り上がりを見せている抱一イヤーですが、ここで改めて抱一に関する書籍を整理しておきます。

まずは簡単に入手出来るものからです。

抱一研究では紛れもなく第一人者に挙げられるのが武蔵野美術大学の玉蟲敏子教授です。そしてお馴染み、東京美術の「もっと知りたい 酒井抱一」の監修も担当しています。



「もっと知りたい酒井抱一 生涯と作品」 玉蟲敏子著 東京美術 1600円

定番のシリーズの中の一冊ということで、見やすい構成、豊富な図版は当然ですが、玉蟲先生のテキストも同シリーズの他の著者に比べて格段に読み応えがあります。

抱一本の決定版と言って差し支えありません。断然におすすめです。

続いて同じく入手しやすいのが別冊太陽の酒井抱一特集です。



「別冊太陽 江戸琳派の粋人 酒井抱一」 仲町啓子監修 平凡社 2300円

監修に琳派研究で定評のある仲町先生を迎え、内藤正人氏、そして今回の抱一展の図録にも論文を寄せた松尾知子氏、岡野智子氏がテキストを寄せています。

上の玉蟲先生の「もっと知りたい」が入門編ながらもかなり細かく抱一の画業を分析しているのに対し、この別冊太陽はもっと平易な記述です。図版も大きく、ビジュアルとしても楽しめる一冊と言えるかもしれません。

新潮社の日本美術文庫にも「酒井抱一」の号があります。



「新潮日本美術文庫18 酒井抱一」 新潮社 1100円

主要作の図版と解説の組み合わせという分かりやすい展開ですが、実は解説をつけているのが玉蟲先生です。サイズもハンディ版、そして価格もリーズナブルということもあるので、まずはこちらからという方も多いかもしれません。

さてここからは既に絶版、もしくは在庫稀少ということで入手が難しくなりますが、より突っ込んだ抱一本をご紹介します。

まずは至文堂の「日本の美術」シリーズです。



「日本の美術 No.463 酒井抱一と江戸琳派の美学」 小林忠 至文堂 1500円

テキストは今回の抱一展図録の巻頭の文を寄せた小林忠氏(千葉市美術館館長)が手がけています。同シリーズはともすると専門家向けという印象もありますが、私が読んだ限りでは理解しやすい一冊という印象を受けました。なお余談ですが、神保町界隈の古本屋では比較的よく見かけます。そちらをあたっても良いかもしれません。

さて私の抱一受容にとってかけがえのないものとなったのが以下の一冊です。



「絵は語る 酒井抱一 夏秋草図屏風」 玉蟲敏子著 平凡社 3200円

テーマは抱一の最高傑作として名高い「夏秋草図屏風」です。著者はこれまた玉蟲先生ですが、同作品を単なる絵画としてではなく、光琳への追慕、銀地という素材、モチーフとしての草花の意味、さらには抱一では外すことの出来ない俳諧の精神などを取り込んで鮮やかに分析しています。夏秋草から読み解く抱一の全体像は極めてラディカルです。図書館などではよく見かけます。是非ともご覧ください。

なおかなりお値段がはりますが、玉蟲先生の抱一研究の現段階における集大成と言えるのが次の一冊です。



「都市の中の絵 酒井抱一の絵事とその遺響」 玉蟲敏子著 ブリュッケ 7600円

全700ページ弱の超労作です。なおこちらは書店でも入手出来ます。論文形式なので簡単には進みませんが、当然ながら読み応えがあります。抱一への関心をさらに深めたい方には必携の一冊と言えそうです。

琳派という括りではありますが、いくつか入門シリーズの中にも抱一作に関する記載があります。



「すぐわかる 琳派の美術」 仲町啓子監修 東京美術 2000円



「美術館へ行こう 琳派に夢見る」 仲町啓子監修 新潮社 1800円

また少し前にディアゴスティーニの「週刊アーティストジャパン」に抱一が取り上げられたこともありました。



「週刊アーティストジャパン 33 酒井抱一」(2007/9/11号) 590円

さらに今、一般向けに販売しているかどうか不明ですが、出光美術館の館報に河野元昭先生が「酒井抱一の芸術」というテキストを寄せたことがありました。



「出光美術館 館報118」(平成14年2月28日発行)

また図録ですが、昨年に足立区立郷土博物館で行われた「千住の琳派」展の図録に玉蟲先生の抱一に関する文章があります。



「千住の琳派」(図録) 足立区立郷土博物館

千住と抱一、また抱一後の琳派受容の展開を十二ヶ月花鳥図や八橋図屏風などで読み解く労作です。

ちなみに現在の抱一展の図録ですが、どうやら人気のため、一部書店では品薄気味になっているとのことです。(Amazonでも時間がかかるとの情報あり。)



「酒井抱一と江戸琳派の全貌」(一般書籍・図録) 求龍堂 2800円

かなり重いので難儀しますが、すぐに入手するのであれば、やはり美術館のショップがベストなのかもしれません。

これ以外にも抱一に関する一般向けの本がまたあるやもしれません。ご存知の方はまたコメントなどでお寄せいただけると嬉しいです。
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