「ライアン・ガンダー展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「ライアン・ガンダー - 墜ちるイカロス:失われた展覧会 - 」
2011/11/13~2012/1/29



メゾンエルメスで開催中のライアン・ガンダー個展、「墜ちるイカロス:失われた展覧会」へ行ってきました。

1976年にイギリスで生まれ、ロンドンで活躍するガンダーは、今年のヴェネチア・ビエンナーレや横浜トリエンナーレでも評判となりましたが、まさかここまでエルメスの空間大きく変化させるとは思いませんでした。

と言っても、何らかの大掛かりなインスタレーションがあるわけではありません。床には肖像画のスケッチやガラスの破片が無数に散乱、また何やら錆び付いた金属の箱がごろんと転がり、さらには壁面には暗幕が掲げられているなどに過ぎません。まずは会場に足を一歩踏み入れた途端、一体何が展開されているのかと気になって仕方ありませんでした。

そしてまさしくその意味あり気に置かれた事物、ようは作品こそが、言わばライアンが来場者に向かって巧妙に仕掛けた一つの罠に他なりません。一見、あまりにも唐突に登場する箱や暗幕に意味が開けてきた時、突如、空間全体が知的遊戯とも言えるようなアイデアに満たされていることが分かります。

それこそ謎解きをするかのように作品を探し、さらにはそれを包みこむかのようにあるフィクションを見出すことこそ、この展覧会の醍醐味というわけでした。

その種は是非とも会場で味わっていただきたいところですが、あえて一つだけとするなら、一つのモニターを用いた「そしてあなたは変わるだろう」(2011年)をあげないわけにはいきません。

ここでは一人の女性がこのエルメスの空間にて一生懸命、何らかの作品の解説をする姿が映し出されています。しかしながらすぐに見て分かる通り、彼女の背景には一つの作品もないがらんとした空間そのものしかありません。

何もない床を指差して解説するなど、実際にはない作品をさもあるようにして振る舞っている様子を追うと、いつしかそこにはないはずの一つの展覧会のイメージが浮かび上がってくるのではないでしょうか。

実はこの女性はエルメスのキュレーターで、解説している展覧会はかつてここで行われたサラ・ジーの個展というわけでした。ここにタイトルにもある「失われた展覧会」が想像上の産物として甦ります。見る側の想像力を喚起させ、パラレルな世界を立ち上がらせるガンダーの魅力ここにありとでも言えるような作品でした。

また表題の「墜ちるイカロス」(2011)も、鑑賞者にそれこそ「もうひとつの現実」(展覧会の覚書より引用)を浮き上がらせる装置なのかもしれません。無味乾燥な白い壁とぽつんと打たれた釘を眺めていた時、普段自分が展覧会で見ているものがいかに不確かであやふやなものなのかと感じられてなりませんでした。

展覧会の写真がGQ JAPANのWEBサイトにアップされています。

「ライアン・ガンダー展がメゾンエルメス8階フォーラムにて開催中」@GQ JAPAN

またガンダーのインタビュー記事がART iTに載っていました。

「ライアン・ガンダー展 プレスカンファレンスインタビュー」@ART iT

あわせてご覧ください。

2012年1月29日までの開催です。これはおすすめします。

「ライアン・ガンダー - 墜ちるイカロス:失われた展覧会 - 」 メゾンエルメス8階フォーラ
会期:2011年11月03日(木)~2012年01月29日(日)
休廊:1月1日、1月2日。
時間:11:00~20:00 *日曜は19時まで。
住所:中央区銀座5-4-1
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )