「成層圏 vol.6 村山悟郎」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「成層圏 vol.6 村山悟郎」 
2011/12/17-2012/2/4



ギャラリーαMで開催中の「成層圏 vol.6 村山悟郎」へ行ってきました。

展示概要、作家プロフィールについては同ギャラリーWEBサイトをご参照下さい。

vol.6 村山悟郎 Goro MURAYAMA

現在、東京芸術大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻に在籍中の村山ですが、最近ではMOTコレクション(2009年)への出品があった他、資生堂ギャラリー(2010年アートエッグ)で個展を開催しました。

さてその資生堂ギャラリーでは刺繍を取り入れた、言わば「編まれた絵画」が印象に残りましたが、今回はそうした刺繍的な作品2点と、壁画に直接ドローイングを施した2点、計4点の作品が展示されています。


「学習的ドリフト」 織った綿紐にアクリリックペインティング

まず目に飛び込んでくるのが、「学習的ドリフト」と題された刺繍的な作品です。これは素材に『織った綿紐』と記載があるように、村山自身が縦糸と横糸を絡め合わせ、一つの支持体を作り上げながら、そこに色を断片的に配していくというものですが、その展開、ようは天井から床面へと進んでいく平面は、まさに増殖と言うべき有機的な広がりを持ち合わせてはいないでしょうか。

上から段々に連なる白い平面、そして伸びる紐、また点々と断片的に塗られた蛍光色など、それこそ色鮮やかな鳥が羽ばたいているかのような姿も魅力的ではありますが、村山の作品においては制作における一定の様式があるというところも見逃してはいけないのかもしれません。


「学習的ドリフト」(部分) 織った綿紐にアクリリックペインティング

実は村山は制作に先立ち、たとえば糸の組み合わせ、また色数、そしてその面の広がり方などについてのルールを決めています。つまり実際の作品はそのパターン化された様式の反復行為によって出来上がっているというわけでした。

また村山は支持体そのものを変化、生成させていく過程を通して、本来的な絵画の決定要因である支持体の形態から、言わば作品をそのものを解き放っていくということを目指しています。ようは支持体をドローイングと同時に作ることで、その両者にある対立軸のようなものを取っ払っていくということでした。

その発想の原点には、生命システムにおける自己生成、自己形成を論じた「オートポイエーシス」の概念があるそうです。その詳細には踏み込みませんが、オートポイエーシスの構成要素を村山の制作、たとえばキャンバス面やドローイングに当てはめた時、それが一つのルールのもとに自ら生成、円環的に組上げられていくという観点は、確かにシステムの概念に近い部分があるのかもしれません。


「ドローイング/カップリング」 鉛筆、ペン

一方、壁画の「ドローイング/カップリング」にもまたルールが存在します。これは基本的に作家とパートナーの二人一組で制作されたもので、元々のドローイングの線の領域、基本的な単位(形)は自らが指定、そこにパートナーが色をつけるという方法がとられています。


「ドローイング/カップリング」(部分) 鉛筆、ペン

またその過程でエラー、つまりミスが生じることがあるそうですが、それはそのまま残し、エラーによってまた次の新たなパターンを獲得しているのだそうです。エラーがない状態では幾何学模様が続き、エラーが生じるとそこに形の揺らぎが生じ、結果、こうした作品が出来上がったとのことでした。

さて作家とキュレーターの田中正之、そしてオートポイエーシスを論じる研究者の河本英夫(東洋大学文学部教授)のトークイベントが、会期中に開催されます。

トークイベント 2012年1月14日(土)13時30分~15時半
「アートとオートポイエーシスは出会えるか」 田中正之x村山悟郎x河本英夫


そちらを聞かれるのも良いのではないでしょうか。私も出来れば参加するつもりです。

「オートポイエーシス―第三世代システム/河本英夫/青土社」

2012年2月4日まで開催されています。 *年末年始は休廊:12/25~1/9

「成層圏 vol.6 村山悟郎」 ギャラリーαM@gallery_alpham
会期:2011年12月17日(土)~2012年2月4日(土)
休廊:日・月・祝。年末年始(12/25~1/9)
時間:12:00~18:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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