都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ル・コルビュジエと20世紀美術」 国立西洋美術館
国立西洋美術館
「ル・コルビュジエと20世紀美術」
8/6-11/4

国立西洋美術館で開催中の「ル・コルビュジエと20世紀美術」へ行ってきました。
言うまでもなく国立西洋美術館本館を設計したル・コルビュジエ。建築家としての業績は多大。国内でも2007年に森美術館で一大回顧展が開催され、かなりの注目を集めました。
しかしながら画家として、また彫刻家として、さらには映像作家としてはどうなのか。コルビュジエと美術との関係は少なくとも建築ほどよく知られているものではありません。

ル・コルビュジエ「円卓の前の女性と蹄鉄」1928年 ル・コルビュジエ財団
そこを狙うのが「ル・コルビュジエと20世紀美術」展です。主にコルビュジエの絵画、美術作品に着目します。また彼の関心のあった美術家たちの制作を併せ見ることにより、かの時代の美術の一潮流を探る仕掛けともなっていました。
では早速順に。まずは通常ロダンの彫刻の置かれる空間。ここにコルビュジエの彫刻作品がずらり。言い忘れましたが、本展の会場は新館でも企画展示室でもなく本館の常設スペース。つまりコルビュジエの手がけた空間の中での展示なのです。

ルシアン・エルヴェ「アトリエのル・コルビュジエ」1950年 大成建設
端的に言ってしまえばこれが意外なほどに新鮮味があります。コルビュジエの空間の中でコルビュジエの作品を見る。この展覧会の醍醐味でもありました。
さてどこか無機的な木彫からスロープへ眼をやると壁面に何やら映像が。「電子の詩」です。コルビュジエが1958年にブリュッセルに設計した「フィリップス・パヴィリオン」内で上映された映像作品。音楽はかのヴァレーズです。西美に電子音楽が流れている。映像もさることながら、この音楽もまた聞かせます。

ル・コルビュジエ「開いた本、パイプ、グラス、マッチ箱のある静物」1918年頃 ル・コルビュジエ財団
スロープをあがって絵画スペースへと進みましょう。本館の常設スペースを一周、ぐるりと取り囲むのはコルビュジエと主に同時代の美術家の絵画です。出品元はパリのコルビュジエ財団の他、国内の美術館、及び世界有数のコレクションを有する大成建設など。150点とかなりのスケールでした。(出品リスト)

ル・コルビュジエ「垂直のギター(第2作)」1920年 ル・コルビュジエ財団
興味深いのは作風の変遷です。早い段階においてはいわゆる静物を時に幾何学的に構成。キュビズムの影響なども色濃く残しますが、1920年頃になると新たな展開が。形は不規則となり画面に動きも表れます。さらに1920年代末には人物が登場し、1930年代に入ると自然のモチーフを描くようになりました。
コルビュジエはボーシャンやデュヴュッフェにも注目。さらにはアフリカのプリミティブな彫刻にも関心を寄せます。先に挙げた「電子の詩」にもこうしたアフリカのイメージが取り込まれていました。
1940年代以降は言わば有機的な展開です。メタモルフォーゼの他、一角獣などの神話的物語も取り込みます。詩画集「直角の詩」を刊行したのは1955年です。彼の思想を絵と言葉で詩的に示しています。
コルビュジエは建築と絵画の融合を目指して壁画の制作も行います。会場では「スイス学生会館」の壁画の習作を展示。さらにはタピスリーやブックデザインの仕事も紹介されていました。

フェルナン・レジェ「女と花」1926年 東京国立近代美術館
時にレジェやピカソを思わせるコルビュジエの絵画世界。作品自体の評価なり印象は分かれるかもしれませんが、少なくとも今回ほどのボリュームで見たのは初めてです。またそもそも彼は毎朝アトリエで絵画制作、そして午後は事務所で設計の仕事に当たっていたとか。絵画と建築を行き来するコルビュジエ。その溢れんばかりの創造力には感心させられました。
なお常設展示室での開催ですが、通常と異なり写真の撮影は出来ません。(その後に続く新館での常設展は撮影可。)ご注意下さい。
11月4日までの開催です。ずばりおすすめします。
「ル・コルビュジエと20世紀美術」 国立西洋美術館
会期:8月6日(火)~11月4日(月・休)
休館:月曜日。但し8/12、9/16、23、10/14、11/4は開館。9/5、17、24、10/15は休館。
時間:9:30~17:30 *毎週金曜日は20時まで開館。
料金:一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*毎月第2・第4土曜日、文化の日(11/3)は観覧無料。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
「ル・コルビュジエと20世紀美術」
8/6-11/4

国立西洋美術館で開催中の「ル・コルビュジエと20世紀美術」へ行ってきました。
言うまでもなく国立西洋美術館本館を設計したル・コルビュジエ。建築家としての業績は多大。国内でも2007年に森美術館で一大回顧展が開催され、かなりの注目を集めました。
しかしながら画家として、また彫刻家として、さらには映像作家としてはどうなのか。コルビュジエと美術との関係は少なくとも建築ほどよく知られているものではありません。

ル・コルビュジエ「円卓の前の女性と蹄鉄」1928年 ル・コルビュジエ財団
そこを狙うのが「ル・コルビュジエと20世紀美術」展です。主にコルビュジエの絵画、美術作品に着目します。また彼の関心のあった美術家たちの制作を併せ見ることにより、かの時代の美術の一潮流を探る仕掛けともなっていました。
では早速順に。まずは通常ロダンの彫刻の置かれる空間。ここにコルビュジエの彫刻作品がずらり。言い忘れましたが、本展の会場は新館でも企画展示室でもなく本館の常設スペース。つまりコルビュジエの手がけた空間の中での展示なのです。

ルシアン・エルヴェ「アトリエのル・コルビュジエ」1950年 大成建設
端的に言ってしまえばこれが意外なほどに新鮮味があります。コルビュジエの空間の中でコルビュジエの作品を見る。この展覧会の醍醐味でもありました。
さてどこか無機的な木彫からスロープへ眼をやると壁面に何やら映像が。「電子の詩」です。コルビュジエが1958年にブリュッセルに設計した「フィリップス・パヴィリオン」内で上映された映像作品。音楽はかのヴァレーズです。西美に電子音楽が流れている。映像もさることながら、この音楽もまた聞かせます。

ル・コルビュジエ「開いた本、パイプ、グラス、マッチ箱のある静物」1918年頃 ル・コルビュジエ財団
スロープをあがって絵画スペースへと進みましょう。本館の常設スペースを一周、ぐるりと取り囲むのはコルビュジエと主に同時代の美術家の絵画です。出品元はパリのコルビュジエ財団の他、国内の美術館、及び世界有数のコレクションを有する大成建設など。150点とかなりのスケールでした。(出品リスト)

ル・コルビュジエ「垂直のギター(第2作)」1920年 ル・コルビュジエ財団
興味深いのは作風の変遷です。早い段階においてはいわゆる静物を時に幾何学的に構成。キュビズムの影響なども色濃く残しますが、1920年頃になると新たな展開が。形は不規則となり画面に動きも表れます。さらに1920年代末には人物が登場し、1930年代に入ると自然のモチーフを描くようになりました。
コルビュジエはボーシャンやデュヴュッフェにも注目。さらにはアフリカのプリミティブな彫刻にも関心を寄せます。先に挙げた「電子の詩」にもこうしたアフリカのイメージが取り込まれていました。
1940年代以降は言わば有機的な展開です。メタモルフォーゼの他、一角獣などの神話的物語も取り込みます。詩画集「直角の詩」を刊行したのは1955年です。彼の思想を絵と言葉で詩的に示しています。
コルビュジエは建築と絵画の融合を目指して壁画の制作も行います。会場では「スイス学生会館」の壁画の習作を展示。さらにはタピスリーやブックデザインの仕事も紹介されていました。

フェルナン・レジェ「女と花」1926年 東京国立近代美術館
時にレジェやピカソを思わせるコルビュジエの絵画世界。作品自体の評価なり印象は分かれるかもしれませんが、少なくとも今回ほどのボリュームで見たのは初めてです。またそもそも彼は毎朝アトリエで絵画制作、そして午後は事務所で設計の仕事に当たっていたとか。絵画と建築を行き来するコルビュジエ。その溢れんばかりの創造力には感心させられました。
なお常設展示室での開催ですが、通常と異なり写真の撮影は出来ません。(その後に続く新館での常設展は撮影可。)ご注意下さい。
11月4日までの開催です。ずばりおすすめします。
「ル・コルビュジエと20世紀美術」 国立西洋美術館
会期:8月6日(火)~11月4日(月・休)
休館:月曜日。但し8/12、9/16、23、10/14、11/4は開館。9/5、17、24、10/15は休館。
時間:9:30~17:30 *毎週金曜日は20時まで開館。
料金:一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*毎月第2・第4土曜日、文化の日(11/3)は観覧無料。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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