「引込線 2013」 旧所沢市立第2学校給食センター

旧所沢市立第2学校給食センター
「引込線 2013」
8/31-9/23



旧所沢市立第2学校給食センターで開催中の「引込線 2013」へ行ってきました。

2008年のプレ展からおおむね二年毎、所沢を舞台に開催されてきた現代美術の展覧会、「所沢ビエンナーレ 引込線」。今年は名称をシンプルに「引込線」に変更。会場も前回展の2つから1つへ。西武線航空公園駅よりバスで10分ほどの同市内中富地区、旧所沢市立第2給食センターにて行われています。

ともかく前回同様、給食センター跡地という場所を活かしての企画です。目の前にあるのは流し台や調理台に鍋。作品は果たしてどこにあるのか。空間全体で楽しめる展示となっていました。


旧所沢市立第2給食センター全景

それではまず会場の様子をご紹介。旧給食センター全景。ご覧の通りの簡素な建物です。入口は最奥部。建物の左手から奥へ回り込んで一番右手にあります。


「引込線2013」会場内

こちらは一階のメインフロアです。給食センターとして使用されていた設備が至る所に残されている。場所性を強く意識した展示です。そしてこの空間こそが引込線の醍醐味でもあります。


戸谷成雄「洞穴体ーミニマルバロックから」2011年 木・灰・アクリル

フロア中央に鎮座するのは戸谷成雄の「洞穴体」。作家を代表するミニマルバロックの彫刻シリーズ、チェーンソーで刻まれた表面が特徴的な作品、その姿はまるでモノリスのようです。


利部志穂「雨のない街」(部分)2013年 アルミニウム・磁石・LED・給食調理器・不要になったもの他

そしてうっかりすると見落としてしまうかもしれないのが、本年のアーティストファイルにも出品のあった利部志穂のインスタレーション、「雨のない街」です。


利部志穂「雨のない街」(部分)2013年

写真はインスタレーションの一部ですが、鍋に潜むのはミラーボールや鏡といった既製品。配管にはライトが灯され、シルバーシートが宙に張られています。作品は奥へと緩やかに繋がり、空間そのものを巻き込みつつ、また一方で対峙していました。


益永梢子「カップ一杯」2013年 小麦粉

益永梢子の「カップ一杯」がシンプルながらも美しい景色を描いています。調理台の上に並ぶ白い小山。素材は小麦粉です。おそらくは計量カップに入れたであろう小麦粉をそのまま逆さにして立てています。かつてこの場で使われていた素材が作家の手を介すことで作品となる。場所の記憶を呼び起こしています。


荻野遼介 展示風景

また絵画では荻野遼介の作品が目立っています。荻野の作品は色や形にどこか幾何学模様を連想させるものがありますが、今回はこの給食センターのタイルの壁面へ埋め込むように展示。それがタイルの正方形と半ば呼応して、非常におさまりよく並んでいるのです。


荻野遼介「1.2kg」2010年 アクリル絵具・キャンバス

配管下の一枚、「1.2kg」には思わずにやりとさせられます。描かれた測りは確かに1.2kgを示していました。


冨井大裕「銀色の垂直さん#3」2013年 水準器・バイス・クランプ

冨井大裕の「銀色の垂直さん」もまた給食センターという借景を効果的に用いた作品です。縦方向のみに並ぶ水準器。配管や調理器、また天井や蛍光管など、何かと『線』の際立つ給食センターの空間へ穏やかに主張しながら進入。美しく起立しています。


末永史尚 展示室風景

2階へあがりましょう。ここで面白いのは末永史尚の一連の作品。これが既存の部屋の設備や風景と呼応し、絵画にオブジェがさながら場の住人のようにおさまっているのです。作品と場の境界線。それを半ば曖昧にしてもいます。


遠藤利克「空洞説ー浴槽・身体」2013年 木・鉄・廃油・タール・(火)

建物外、別棟の倉庫の展示も見逃せません。ここでは何と言っても遠藤利克の「空洞説ー浴槽・身体」が圧巻の一言です。お馴染みの炭化した巨大な長方形の立方体廃油プール。黒ずんだ表面の質感、そして3mを越える立方体自体にも迫力を感じますが、床面には廃油がプールから漏れ出している。その滲みの痕跡がまた何とも言えない重みを持ちえています。


前野智彦「Stage of Uninhabited/island Season-Episode Final」(部分)2013年 汚水処理設備・DHMO他

引込線2013、確かに前回の2会場制の時よりは物理的にスケールダウンした感は否めませんが、やはりこの場所あってこその展示。現地へ出向かないと魅力は掴めません。ストイックなまでに場所を意識しています。

カタログは鋭意制作中でした。「引込線」のカタログは毎回、論文多数。非常に読み応えがあります。こちらも要チェックです。

[参加アーティスト]
伊藤誠、遠藤利克、荻野僚介、利部志穂、倉重光則、末永史尚、鷹野隆大、戸谷成雄、冨井大裕、登山博文、豊嶋康子、中山正樹、前野智彦、眞島竜男、益永梢子、水谷一、箕輪亜希子

[参加論考執筆者]
阿部真弓、荒川徹、石川卓磨、石崎尚、井上康彦、沢山遼、高嶋晋一、中井悠、野田吉郎、桝田倫広、松浦寿夫、峯村敏明、森啓輔、米田尚輝


中山正樹「BODY SCALE」2013年 ポリエステル樹脂・木・スリムライト・和紙

9/22(日)にはガイドツアー、それに各週末には「ゼミナール給食センター」と題したトークイベントも予定されています。また情報はツイッター(@hikikomisen)でもこまめに発信しています。

「引込線2013 イベント」

なお会場にはエアコンがありません。駅からはバスですが、バス停からも400~500mあります。暑いと大変です。少し涼しい日を狙って行っても良いかもしれません。また台数限定ながらも駐車場もあります。


「引込線2013」会場入口

入場は無料です。9月23日まで開催されています。

「引込線 2013」@hikikomisen) 旧所沢市立第2学校給食センター
会期:8月31日(土)~9月23日(月・祝)
休館:会期中無休
時間:10:00~17:00
料金:無料
住所:埼玉県所沢市中富1862-1
交通:西武新宿線航空公園駅東口より徒歩40分。航空公園駅東口より1番乗り場「西武バス航空公園駅」より所20-3系統「並木通り団地行き」または、新所03系統「新所沢駅東口行き」に乗り「並木通り団地入口」下車。バス停から約400m。
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