「永遠のソール・ライター」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」
2020/1/9~3/8



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」を見てきました。

2017年に日本で初めて本格的に紹介され、多くの人々を心を掴んだ写真家、ソール・ライター(1923~2013)の作品が、再びBunkamura ザ・ミュージアムへとやって来ました。

まず冒頭の「ソール・ライターの世界」では、ライターの写真家としてのキャリアを追うべく、モノクロからカラーの写真が並んでいて、中には前回の展覧会では出品されなかった作品もありました。



そもそもライターが写真をはじめたのは、ニューヨークで画家を志していた20代前半のことで、1948年からはカラーの写真にも取り組み、抽象性を帯びた構図感や、鏡やガラス越しの像、それにのぞき見を思わせる手法によって、モデルや都市の風景を巧みに写し出しました。

主に1950年代のニューヨークが、ライターのファインダーに捉えられると、ファッショナブルでかつ、古さを感じさせない風景に立ち上がってくるのも魅惑的ではないでしょうか。また赤い傘をさして雪道を歩く人を斜め上から写した「赤い傘」など、一瞬にだけ目に飛び込んでくるような色彩の瞬きにも心引かれました。

ライターはファッション誌の第一線で活躍し、写真家としての地位を確立するものの、58歳でスタジオを閉鎖すると、自らの感性や表現の趣くままに写真を手掛ける生活を送るようになりました。



その間にも写真を撮影し続けたライターでしたが、技術や経済的な問題により、多くは未現像のままに放置され、アパートに眠り続けました。しかし1997年に初のカラー写真展が開催され、2006年に未発表の作品をまとめた写真集、「Early Color」が刊行されると、カラー写真のパイオニアとして世界で大きな反響を巻き起こしました。この時、実に83歳でした。


今回のライター展で特に興味深いのは、残された数万点もの膨大な写真を発掘するプロジェクトによって、データベース化された作品を世界で初めて映像で公開していることでした。生前、写真をプリントしなかったライターは、時に友人を招きながら、ライトボックスの上にスライドで見る時間を大切にしていたと伝えられていて、そうした仕事場の状況を追体験するかのようでもありました。

またライター自身や愛した人々のポートレートをはじめ、前回は未発表だったスケッチブックや家族のアルバム、はたまた愛猫の写真なども展示されていて、モノクロ、カラーの代表作を網羅しつつも、ライターの個人的な関心や創造の源を探るような構成になっていました。


「ソール・ライターが住んでいたアパートメントの壁の再現」(ニューヨーク、イースト・ヴィレッジ) *会期中も撮影可

ラストにはライターの住んでいたアパートの壁を再現したコーナーもあり、愛用の鏡や時計、あるいは使用していた椅子の他、父や母の家族の写真、さらには自作の油絵なども展示されていました。前回展よりまだ3年ほどしか経っていませんが、よりライターの人となりに興味の引かれる展覧会かもしれません。

会期早々の日曜に出かけてきましたが、入場に際しての待機列こそなかったものの、会場内は想像以上に賑わっていました。特にライターの写真を映像で紹介する展示室は、スペースに限りがあることから、かなり混み合っていました。グッズ売り場も大盛況でした。

混雑状況の目安は公式WEBサイトでも発表されています。お出かけの際に参考となりそうです。

「永遠のソール・ライター/柴田元幸/小学館」

「写真はしばしば重要な瞬間を切り取るものをとして扱われがちだが、本当は終わることのない世界の小さな断片と思い出なのだ。」 ソール・ライター

本エントリの展示室内の写真は広報事務局より提供いただきました。「ソール・ライターが住んでいたアパートメントの壁の再現」を除いて撮影は出来ません。



3月8日まで開催されています。なお東京展終了後、美術館「えき」KYOTOへと巡回(4/11〜5/10)します。

「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」 Bunkamura ザ・ミュージアム@Bunkamura_info
会期:2020年1月9日(木)~3月8日(日)
休館:1月21日(火)、2月18日(火)。
時間:10:00~18:00。
 *毎週金・土は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学・高校生1000(800)円、中学・小学生700(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。
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