都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」 東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」
2020/2/1~4/7
東京都庭園美術館で開催中の「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」を見てきました。
長野県諏訪市に位置し、フランスのガラス工芸コレクションで知られる北澤美術館より、アール・デコの作家、ルネ・ラリックの作品がまとめて東京都庭園美術館へとやって来ました。
ともかく右も左も優品ばかりゆえに、惹かれた作品を挙げればきりがありませんが、今回こそ建物との相性が抜群に良かったことはなかったかもしれません。そもそも東京都庭園美術館の本館は、ラリックが内部の装飾を手がけた「アール・デコの館」であり、それこそ「ラリックの作品に囲まれた空間で見るラリック」と言えるからでした。
元々、ジュエリー作家だったラリックは、ガラスに分野を移すと、1909年にパリ郊外に工場を構え、本格的にガラスの制作に乗り出しました。そして第一次世界大戦後にはアルザス地方に新たな工場を増設し、1925年にパリの「アール・デコ博覧会」で大規模に出展するなどして活動しました。
円形蓋物「ドガ」 1921年
結果的にラリックは、1910年頃から亡くなる1945年までの間に、おおよそ4300種類ものガラスデザインを世に送り出し、後にアール・デコと呼ばれた、新しいデザインのガラス工芸を切り開きました。
化粧道具やテーブルウェアなどの身近な生活用品も魅惑的かもしれません。ラリックの天井灯の飾られた大食堂にはテーブルウェアがセッティングされていて、窓から差し込む陽の光を受けてはきらきらと輝いていました。あたかも今、目の前で会食が行われるかのような臨場感のある展示も、邸宅の庭園美術館ならではと言えるかもしれません。
電動置時計「昼と夜」 1926年
また通常、公開される機会の少ない書斎では、男女の像が円を描くような電動置時計「昼と夜」が展示されていました。当時のフランスでは珍しい電気式のムーブメントが仕込まれていて、最先端の技術を盛り込んだラリックの革新性も見ることが出来ました。
ラリックのガラスで人気を博していたアイテムの1つが、カー・マスコットと呼ばれた自動車のシンボル像で、当時、贅沢品であった自動車の鼻先を飾ったオーナメントがいくつも並んでいました。車のオーナーは、狩猟や競馬、女神などのモチーフを好んでいたそうです。
ガラス工芸だけでなく、デザインの原画も出展されていました。鉛筆の繊細な筆跡を見ていくと、さもラリックの創作の軌跡を辿るかのようで、実際の工芸とデザイン原画を見比べる展示も興味深いものがありました。
花瓶「バッカスの巫女」 1927年
光の角度で色調の変化するオパルセント・ガラスを用いた、花瓶「バッカスの巫女」にも魅せられました。10人の異なるポーズをした裸婦が回転するようにデザインされた作品で、バッカスに仕えた熱狂的な巫女の姿を表現していました。
置物「座るねこ」 1932年
「座るねこ」も可愛らしいのではないでしょうか。ラリックは自邸に十数匹の猫を飼うほど、猫好きで知られていました。
花瓶「フォルモーズ」 朝香宮家旧蔵 1924年 *特別出品
この他、新館では旧朝香宮邸についての展示もあり、ラリックと日本の関係についての知見も得ることが出来ました。そもそも旧朝香宮邸は、当時の朝香宮鳩彦王と允子妃殿下が「アール・デコ博覧会」に出向き、美術様式に感銘を受け、帰国後、フランスの美術家、アンリ・ラパンに内覧設計を任せて実現した建物でした。そしてラリックは玄関ホールのレリーフ扉や食堂のシャンデリアなどを手がけました。
立像「噴水の女神、メリト」 1924年
「噴水の女神、メリト」は、「アール・デコ博覧会」の中央広場の噴水のために製作された女神像で、高さ15メートルにも及ぶ塔に128体もの女神像が取り付けられました。噴水自体は閉会後に撤去されましたが、同じ鋳型を用いた女神像が制作され、その1つが今回の展示品でした。
現在、東京都庭園美術館は、新型コロナウィルスの感染予防、拡散防止のため、3月15日(日)までを目処に休館中です。
ラリック展の会期は4月7日(火)までですが、今後の開館状況については追って発表があると思われます。詳しくは美術館の公式サイトをご覧ください。
「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:2020年2月1日(土)~4月7日(火)
休館:第2・第4水曜日(2/12、2/26、3/11、3/25)
時間:10:00~18:00。
*3/27、3/28、4/3、4/4は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(880)円 、大学生880(700)円、中・高校生・65歳以上550(440)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」
2020/2/1~4/7
東京都庭園美術館で開催中の「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」を見てきました。
長野県諏訪市に位置し、フランスのガラス工芸コレクションで知られる北澤美術館より、アール・デコの作家、ルネ・ラリックの作品がまとめて東京都庭園美術館へとやって来ました。
ともかく右も左も優品ばかりゆえに、惹かれた作品を挙げればきりがありませんが、今回こそ建物との相性が抜群に良かったことはなかったかもしれません。そもそも東京都庭園美術館の本館は、ラリックが内部の装飾を手がけた「アール・デコの館」であり、それこそ「ラリックの作品に囲まれた空間で見るラリック」と言えるからでした。
元々、ジュエリー作家だったラリックは、ガラスに分野を移すと、1909年にパリ郊外に工場を構え、本格的にガラスの制作に乗り出しました。そして第一次世界大戦後にはアルザス地方に新たな工場を増設し、1925年にパリの「アール・デコ博覧会」で大規模に出展するなどして活動しました。
円形蓋物「ドガ」 1921年
結果的にラリックは、1910年頃から亡くなる1945年までの間に、おおよそ4300種類ものガラスデザインを世に送り出し、後にアール・デコと呼ばれた、新しいデザインのガラス工芸を切り開きました。
化粧道具やテーブルウェアなどの身近な生活用品も魅惑的かもしれません。ラリックの天井灯の飾られた大食堂にはテーブルウェアがセッティングされていて、窓から差し込む陽の光を受けてはきらきらと輝いていました。あたかも今、目の前で会食が行われるかのような臨場感のある展示も、邸宅の庭園美術館ならではと言えるかもしれません。
電動置時計「昼と夜」 1926年
また通常、公開される機会の少ない書斎では、男女の像が円を描くような電動置時計「昼と夜」が展示されていました。当時のフランスでは珍しい電気式のムーブメントが仕込まれていて、最先端の技術を盛り込んだラリックの革新性も見ることが出来ました。
ラリックのガラスで人気を博していたアイテムの1つが、カー・マスコットと呼ばれた自動車のシンボル像で、当時、贅沢品であった自動車の鼻先を飾ったオーナメントがいくつも並んでいました。車のオーナーは、狩猟や競馬、女神などのモチーフを好んでいたそうです。
ガラス工芸だけでなく、デザインの原画も出展されていました。鉛筆の繊細な筆跡を見ていくと、さもラリックの創作の軌跡を辿るかのようで、実際の工芸とデザイン原画を見比べる展示も興味深いものがありました。
花瓶「バッカスの巫女」 1927年
光の角度で色調の変化するオパルセント・ガラスを用いた、花瓶「バッカスの巫女」にも魅せられました。10人の異なるポーズをした裸婦が回転するようにデザインされた作品で、バッカスに仕えた熱狂的な巫女の姿を表現していました。
置物「座るねこ」 1932年
「座るねこ」も可愛らしいのではないでしょうか。ラリックは自邸に十数匹の猫を飼うほど、猫好きで知られていました。
花瓶「フォルモーズ」 朝香宮家旧蔵 1924年 *特別出品
この他、新館では旧朝香宮邸についての展示もあり、ラリックと日本の関係についての知見も得ることが出来ました。そもそも旧朝香宮邸は、当時の朝香宮鳩彦王と允子妃殿下が「アール・デコ博覧会」に出向き、美術様式に感銘を受け、帰国後、フランスの美術家、アンリ・ラパンに内覧設計を任せて実現した建物でした。そしてラリックは玄関ホールのレリーフ扉や食堂のシャンデリアなどを手がけました。
立像「噴水の女神、メリト」 1924年
「噴水の女神、メリト」は、「アール・デコ博覧会」の中央広場の噴水のために製作された女神像で、高さ15メートルにも及ぶ塔に128体もの女神像が取り付けられました。噴水自体は閉会後に撤去されましたが、同じ鋳型を用いた女神像が制作され、その1つが今回の展示品でした。
現在、東京都庭園美術館は、新型コロナウィルスの感染予防、拡散防止のため、3月15日(日)までを目処に休館中です。
【重要なお知らせ|全面休止】新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、東京都庭園美術館は2月29日(土)~3月15日(日)全面休止することとなりました。3月16日(月)以降の情報は決まり次第お知らせします。ご迷惑をおかけしますが、何とぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
— 東京都庭園美術館 (@teienartmuseum) February 28, 2020
ラリック展の会期は4月7日(火)までですが、今後の開館状況については追って発表があると思われます。詳しくは美術館の公式サイトをご覧ください。
「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:2020年2月1日(土)~4月7日(火)
休館:第2・第4水曜日(2/12、2/26、3/11、3/25)
時間:10:00~18:00。
*3/27、3/28、4/3、4/4は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1100(880)円 、大学生880(700)円、中・高校生・65歳以上550(440)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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