都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「第23回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館
「第23回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」
2020/2/14~4/12

毎年恒例、現代美術家の活動を顕彰する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」は、今年で第23回を数えるに至りました。
今回の応募総数は、昨年より約40点増え、452点でした。そのうち美術専門家の審査を経て、入選を果たした23組の作品が、川崎市岡本太郎記念館にて公開されています。

野々上聡人「ラブレター」 岡本太郎賞
栄えある岡本太郎賞を受賞したのは、1984年生まれの野々上聡人で、「ラブレター」と題した、大型のオブジェや絵画、それに映像かなる作品を出展していました。

野々上聡人「ラブレター」 岡本太郎賞
中央には無数の顔が象られ、動物とも、怪物とも呼べうるようなオブジェが高らかに積まれていて、全体で一つの未知の有機体を構成するかのようでした。

野々上聡人「ラブレター」 岡本太郎賞
そして周囲には魔物と言えるような生き物を描いた絵画が所狭しと並んでいて、中央のオブジェを見下ろすべく、天井付近まで達していました。ともかく凄まじいエネルギーと迫力に満ちた作品で、根源的な命の誕生が湧き上がる光景を目にするかのようでした。

根本裕子「野良犬」 岡本敏子賞
17頭の犬の彫刻を展示室に放ったのが、岡本敏子賞を受賞した根本裕子で、実に精巧に成形されたオオカミのような野良犬が、歩いたり、匂いを嗅いだり、雄叫びを上げるような仕草をしていました。

根本裕子「野良犬」 岡本敏子賞
ともかく毛並みの質感など犬の生態を見事に捉えていて、はじめは木彫かと思いきや、実は陶で作られていました。そして時にコミカルな表情もしていて、愛くるしい姿を見せていました。

本濃研太「僕のDNAが知っている」 特別賞
特別賞を受賞した本濃研太は、デコラティブな仮面をたくさん作っていて、中央にはトーテムポールをさらに人形化したようなオブジェを築いていました。プリミティブな仮面の「目」に並々ならぬ迫力を感じるのではないでしょうか。

本濃研太「僕のDNAが知っている」 特別賞
また色彩豊かでかつ、相当に量感があるゆえに分かりにくいかもしれませんが、素材がダンボールであるのには驚きました。

佐藤圭一「おねすと」 入選
全体的に彫刻に力作が目立っていたかもしれません。佐藤圭一の「おねすと」は、白い茎や葉の上に、人の顔を象った花の彫刻を出展していて、赤や青に染まりつつ、口を開けたり、笑みを浮かべたりしていました。

村上力「上一品洞『美術の力』」 特別賞
骨董屋を覗き込むかのような、村上力の展示も面白いのではないでしょうか。古今東西の美術品を集めたという「村上一品洞」なる空間を築いていて、阿修羅像、桃山の焼き物、さらには店主なのか岡本太郎の像を展示していました。

村上力「上一品洞『美術の力』」 特別賞
麻布や土、アクリルなど多様な素材と共に、絵画、陶芸、木工、彫刻と、表現も多岐にわたっていましたが、作品全体に統一感があるのも興味深いところでした。

森貴之「View Tracing」 特別賞
赤外線に反応して蛍光する糸を用い、ポリゴンを空間として表現したのが特別賞の森貴之で、しばらく見ていると、あたかも2次元と3次元の間を行き来しているような錯覚に囚われました。

森貴之「View Tracing」 特別賞
それらは実在しながら、あたかも仮想のようでもあって、何とも言い難い空間を作り上げていました。なかなか他では得難い鑑賞体験ではないでしょうか。

松藤孝一「世界の終わりの始まり」 入選
同じく暗室で作品を展開したのが、松藤孝一の「世界の終わりの始まり」で、丸屋根を載せた塔を思わせるウランガラスのオブジェが、緑色の妖しく美しい光を放っていました。横から眺めていると、ビルの林立する未来の都市のように見えるかもしれません。

丸山喬平「幸について」 入選
丸山喬平の「幸について」にも目を引かれました。金属のパイプで作られた台の上には、木材や断熱材などを組み合わせた人の姿を象っていて、皆、銛を手にし、先頭の人物は魚のようなものを背負いながら歩いていました。特に記述はありませんでしたが、やはりタイトルからしても青木繁の「海の幸」を引用したのでしょうか。そのイメージが否応なしに重なりました。
会期中、3月22日までは「お気に入りを選ぼう!」と題し、会場出口にて作品の人気投票が行われています。受付で配布される赤いシールにて、1人1票、気に入った作品に投票することが可能です。
投票の結果は3月26日にHP上で発表され、上位の作家には記念品が進呈されます。事実上のオーディエンス賞と捉えて差し支えないかもしれません。

桂典子「しょくどう」 入選
新型コロナウイルス感染予防、拡散防止のため、3月末までに予定されていたイベントは全て中止となりました。4月以降の予定については改めてお知らせがあります。
撮影が可能です。4月12日まで開催されています。
「第23回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館(@taromuseum)
会期:2020年2月14日(金)~4月12日(日)
休館:月曜日。但し2月24日を除く。2月25日(火)。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
「第23回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」
2020/2/14~4/12

毎年恒例、現代美術家の活動を顕彰する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」は、今年で第23回を数えるに至りました。
今回の応募総数は、昨年より約40点増え、452点でした。そのうち美術専門家の審査を経て、入選を果たした23組の作品が、川崎市岡本太郎記念館にて公開されています。

野々上聡人「ラブレター」 岡本太郎賞
栄えある岡本太郎賞を受賞したのは、1984年生まれの野々上聡人で、「ラブレター」と題した、大型のオブジェや絵画、それに映像かなる作品を出展していました。

野々上聡人「ラブレター」 岡本太郎賞
中央には無数の顔が象られ、動物とも、怪物とも呼べうるようなオブジェが高らかに積まれていて、全体で一つの未知の有機体を構成するかのようでした。

野々上聡人「ラブレター」 岡本太郎賞
そして周囲には魔物と言えるような生き物を描いた絵画が所狭しと並んでいて、中央のオブジェを見下ろすべく、天井付近まで達していました。ともかく凄まじいエネルギーと迫力に満ちた作品で、根源的な命の誕生が湧き上がる光景を目にするかのようでした。

根本裕子「野良犬」 岡本敏子賞
17頭の犬の彫刻を展示室に放ったのが、岡本敏子賞を受賞した根本裕子で、実に精巧に成形されたオオカミのような野良犬が、歩いたり、匂いを嗅いだり、雄叫びを上げるような仕草をしていました。

根本裕子「野良犬」 岡本敏子賞
ともかく毛並みの質感など犬の生態を見事に捉えていて、はじめは木彫かと思いきや、実は陶で作られていました。そして時にコミカルな表情もしていて、愛くるしい姿を見せていました。

本濃研太「僕のDNAが知っている」 特別賞
特別賞を受賞した本濃研太は、デコラティブな仮面をたくさん作っていて、中央にはトーテムポールをさらに人形化したようなオブジェを築いていました。プリミティブな仮面の「目」に並々ならぬ迫力を感じるのではないでしょうか。

本濃研太「僕のDNAが知っている」 特別賞
また色彩豊かでかつ、相当に量感があるゆえに分かりにくいかもしれませんが、素材がダンボールであるのには驚きました。

佐藤圭一「おねすと」 入選
全体的に彫刻に力作が目立っていたかもしれません。佐藤圭一の「おねすと」は、白い茎や葉の上に、人の顔を象った花の彫刻を出展していて、赤や青に染まりつつ、口を開けたり、笑みを浮かべたりしていました。

村上力「上一品洞『美術の力』」 特別賞
骨董屋を覗き込むかのような、村上力の展示も面白いのではないでしょうか。古今東西の美術品を集めたという「村上一品洞」なる空間を築いていて、阿修羅像、桃山の焼き物、さらには店主なのか岡本太郎の像を展示していました。

村上力「上一品洞『美術の力』」 特別賞
麻布や土、アクリルなど多様な素材と共に、絵画、陶芸、木工、彫刻と、表現も多岐にわたっていましたが、作品全体に統一感があるのも興味深いところでした。

森貴之「View Tracing」 特別賞
赤外線に反応して蛍光する糸を用い、ポリゴンを空間として表現したのが特別賞の森貴之で、しばらく見ていると、あたかも2次元と3次元の間を行き来しているような錯覚に囚われました。

森貴之「View Tracing」 特別賞
それらは実在しながら、あたかも仮想のようでもあって、何とも言い難い空間を作り上げていました。なかなか他では得難い鑑賞体験ではないでしょうか。

松藤孝一「世界の終わりの始まり」 入選
同じく暗室で作品を展開したのが、松藤孝一の「世界の終わりの始まり」で、丸屋根を載せた塔を思わせるウランガラスのオブジェが、緑色の妖しく美しい光を放っていました。横から眺めていると、ビルの林立する未来の都市のように見えるかもしれません。

丸山喬平「幸について」 入選
丸山喬平の「幸について」にも目を引かれました。金属のパイプで作られた台の上には、木材や断熱材などを組み合わせた人の姿を象っていて、皆、銛を手にし、先頭の人物は魚のようなものを背負いながら歩いていました。特に記述はありませんでしたが、やはりタイトルからしても青木繁の「海の幸」を引用したのでしょうか。そのイメージが否応なしに重なりました。
【お気に入り作品に投票!】企画展「#第23回岡本太郎現代芸術賞」展では「お気に入りを選ぼう!」を開催中✨ご来館の皆さんにお気に入り作品を投票してもらいます🗳️投票期間は3/22(日)まで!(予定)皆さんの投票で順位が変わる…!?是非、参加してくださいね🎵 #TARO賞https://t.co/5fJVc2Z81r pic.twitter.com/TbsaHY5b7E
— 川崎市岡本太郎美術館 (@taromuseum) March 5, 2020
会期中、3月22日までは「お気に入りを選ぼう!」と題し、会場出口にて作品の人気投票が行われています。受付で配布される赤いシールにて、1人1票、気に入った作品に投票することが可能です。
投票の結果は3月26日にHP上で発表され、上位の作家には記念品が進呈されます。事実上のオーディエンス賞と捉えて差し支えないかもしれません。

桂典子「しょくどう」 入選
新型コロナウイルス感染予防、拡散防止のため、3月末までに予定されていたイベントは全て中止となりました。4月以降の予定については改めてお知らせがあります。
撮影が可能です。4月12日まで開催されています。
「第23回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館(@taromuseum)
会期:2020年2月14日(金)~4月12日(日)
休館:月曜日。但し2月24日を除く。2月25日(火)。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
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