「VOCA展2020」 上野の森美術館

上野の森美術館
「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」
2020/3/12~3/30 *東京都の自粛要請に伴い、3月27日にて終了。



上野の森美術館で開催されていた「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」を見てきました。

40歳以下の作家を専門家の推薦によって紹介する「VOCA展」も、今年で第27回を数えるに至りました。


Nerhol「Remove」 VOCA賞

VOCA賞を受賞したのは、田中義久と飯田竜太によるNerholの「Remove」で、正面から捉えると3名の男らしき人物が、何かを手にしながら、まるで実験を行うような姿を表していました。


Nerhol「Remove」(部分)

実のところ、1969年のアメリカの宇宙飛行士のテストプログラムの場面をモチーフとしていましたが、その情報を知っても、一体、何をしているのか分からず、ただ人の影が幻のように佇んでいるようにも思えました。実と虚が入り混じるような光景にも見えるかもしれません。


Nerhol「Remove」(部分)

また面白いのは作品自体の厚みのある質感で、無数に刻み込まれたかのような凹凸があり、あたかもガラスの破片のような画面を築いていました。これは連続写真を重ね合わせ、部分的に彫って作られたもので、かなりデコラティブでもあることから、平面ながら彫刻的と呼べるのではないでしょうか。


立原真理子「いつく島」、「香山の道すがら」、「御嶽のある風景」

こうした意外な素材や質感に魅力を感じる作品が少なくありませんでした。立原真理子は海を望む厳島や鳥居の立つ草地などを刺繍に表していましたが、支持体が複数枚によって構成された網戸でした。



細かな網戸の目地に糸が絡み合いつつ、景色が築かれていて、何やら糸そのものが目地へ生き物のように増殖しているかのようでした。


高山夏希「World of entanglement 2020」

また高山夏希も糸を素材としつつ、アクリルや油彩を用いて、自然の風景を描いていましたが、ねっとりとした絵具と糸がまとわりつくかのようで、独特の質感を見せていました。


多田さやか「網膜剥離」

多田さやかは「網膜剥離」において、複数のベニヤ板やプラスチックを用い、仏像や鳥、それに恐竜を思わせるような動物などを重ね合わせていて、青を基調としたアクリルの色彩も美しく感じられました。そして仏像は膝を立てつつ、頬に手を当てているようにも見えることから、如意輪観音菩薩像をイメージしているのかもしれません。


今村文「お花のえ きく、りんどう、百日草」

今村文の「お花のえ きく、りんどう、百日草」にも惹かれました。円いパネルに草花のモチーフを埋め尽くすように描いていて、蜜蝋画の技法を用いているからか、まるで器の絵付けを思わせるような工芸的な味わいも感じられました。


黒宮菜菜「Image 終わりし道の標べに」

この他では、VOCA佳作賞を受賞した黒宮菜菜の「Image 終わりし道の標べに」も目立っていたのではないでしょうか。暗い茶褐色を背景にした地には、無数の花が降り注いでいて、目を凝らすと中には人が横たわる姿を見ることも出来ました。


李晶玉「Olympia 2020」 VOCA奨励賞

新型コロナウイルス感染防止の対策を講じ、3月27日まで通常通り開館していましたが、東京都の自粛要請を受け、3月28日より休館することが決まりました。よって、当初、3月30日までを予定していたVOCA展も、残念ながら3月27日にて打ち切りとなりました。


関連のアーティストトークやギャラリートークも全て中止されましたが、公式サイトに受賞者のインタビューが動画で掲載されていました。

3月27日にて終了しました。

「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」 上野の森美術館@UenoMoriMuseum
会期:2020年3月12日 (木) ~3月30日 (月) *東京都の自粛要請に伴い、3月27日にて終了。
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般600円、大学生500円、高校生以下無料。
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
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