都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ふつうの系譜 京の絵画と敦賀コレクション」 府中市美術館
府中市美術館
「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」
2020/3/14〜5/10
府中市美術館で開催中の「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 京の絵画と敦賀コレクション」を見てきました。
土佐派や狩野派、円山四条派などの江戸絵画のコレクションで知られる敦賀市立博物館より、「選りすぐり」(公式サイトより)の100点の作品が、府中市美術館へやって来ました。
冷泉為恭「忠考図」(左幅) 敦賀市立博物館 前期展示
それが「ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」と題した展覧会で、若冲や蕭白らの「奇想」に対する絵師の作品を「そうでないもの」、つまり「ふつう」と定義して、魅力を探る内容となっていました。
まず登場するのが、平安時代のやまと絵の系譜に連なる、土佐派や住吉派の作品でした。中でも土佐光起の「菊鶉図」は魅惑的で、白い菊に置物のような鶉を精緻に表していました。また土佐光孚の「花丸文様屏風」も興味深い作品で、百合や水仙、松や梅などの花や樹木を、全て円い模様にして屏風全体に描いていました。松の枝葉が屈曲して円になる姿はシュールでもあり、単に「ふつう」とは受け取れないような味わいも感じられました。
円山応挙「狗子図」 敦賀市立博物館 前期展示
続くのが狩野派や円山四条派の作品で、中でも応挙の得意とする仔犬を表した2枚の「狗子図」に目を奪われました。ともに白い2匹の仔犬と1匹の茶色の仔犬がじゃれ合う姿を描いていて、1枚は茶色の仔犬が白い犬に噛み付くような仕草を見せていました。実に愛くるしい様子ではありますが、同じモデルの犬を描いたと考えられているそうです。
岸駒「白蓮翡翠図」 敦賀市立博物館 前期展示
京都に生まれ、応挙に教えを乞い、中国や日本の古画にも学んだ絵師、原在中の作品が充実していました。「柳樹駿馬図」は柳と馬を描いていて、特に馬の滑らかな毛並みが印象に残りました。また越中、もしくは加賀に生まれ、後に京都で円山四条派に並ぶ勢力を築いた岸駒の作品も見逃せませんでした。それが「白蓮翡翠図」で、文字通りに蓮とカワセミを描いていましたが、やや縮れ、震えるような線で象られた蓮が画面いっぱいに広がっていて、異様なまでの迫力がありました。
彦根藩士の子として生まれ、明治時代に帝室技芸員として活動した岸竹堂の「華厳滝図」も同じく迫力十分の作品と言えるかもしれません。日光の華厳の滝を正面から描いていて、大量の水が落ちつつ、霞に煙る光景からは、あたかもドドドといった轟音が聞こえるかのようでした。
岸恭「四季花卉図屛風」 敦賀市立博物館 前期展示
ラストの岸恭の「四季花卉図屏風」にも心を惹かれました。水辺に沿って広がる草花を極めて鮮やかな絵具で描いていて、まるで桃源郷を前にするかのようでした。あまりにも美しすぎるゆえに、もはやこの世の景色とは思えないほどでした。
展示替えの情報です。前後期でほぼ全ての作品(一部を除く)が入れ替わります。
「ふつうの系譜 京の絵画と敦賀コレクション」出展リスト(PDF)
前期:3月14日(土)〜4月12日(日)
後期:4月14日(火)〜5月10日(日)
チケットに2度目は半額になる割引券がついています。2つの会期を合わせて1つの展覧会と捉えて差し支えありません。
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う、東京都の自粛要請のため、3月28日(土)と29日(日)は臨時休館しました。また既にスライドレクチャー等のイベントも中止されています。
3月31日(火)以降は開館する予定であるものの、「平日については開館予定」(公式サイトより)とされている上、今後の状況次第では再び臨時休館する場合もあります。最新の開館の有無については美術館のウェブサイトをご覧下さい。
企画展に続く常設展においても、円山応挙や松村景文ら、江戸中期から後期の絵画が数点ほど展示されていました。あわせてお見逃しなきようにおすすめします。
5月10日まで開催されています。
「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」(@futsu2020) 府中市美術館
会期:2020年3月14日(土)〜5月10日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
*チケットに2度目が半額になる割引券付き。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」
2020/3/14〜5/10
府中市美術館で開催中の「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 京の絵画と敦賀コレクション」を見てきました。
土佐派や狩野派、円山四条派などの江戸絵画のコレクションで知られる敦賀市立博物館より、「選りすぐり」(公式サイトより)の100点の作品が、府中市美術館へやって来ました。
冷泉為恭「忠考図」(左幅) 敦賀市立博物館 前期展示
それが「ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」と題した展覧会で、若冲や蕭白らの「奇想」に対する絵師の作品を「そうでないもの」、つまり「ふつう」と定義して、魅力を探る内容となっていました。
まず登場するのが、平安時代のやまと絵の系譜に連なる、土佐派や住吉派の作品でした。中でも土佐光起の「菊鶉図」は魅惑的で、白い菊に置物のような鶉を精緻に表していました。また土佐光孚の「花丸文様屏風」も興味深い作品で、百合や水仙、松や梅などの花や樹木を、全て円い模様にして屏風全体に描いていました。松の枝葉が屈曲して円になる姿はシュールでもあり、単に「ふつう」とは受け取れないような味わいも感じられました。
円山応挙「狗子図」 敦賀市立博物館 前期展示
続くのが狩野派や円山四条派の作品で、中でも応挙の得意とする仔犬を表した2枚の「狗子図」に目を奪われました。ともに白い2匹の仔犬と1匹の茶色の仔犬がじゃれ合う姿を描いていて、1枚は茶色の仔犬が白い犬に噛み付くような仕草を見せていました。実に愛くるしい様子ではありますが、同じモデルの犬を描いたと考えられているそうです。
岸駒「白蓮翡翠図」 敦賀市立博物館 前期展示
京都に生まれ、応挙に教えを乞い、中国や日本の古画にも学んだ絵師、原在中の作品が充実していました。「柳樹駿馬図」は柳と馬を描いていて、特に馬の滑らかな毛並みが印象に残りました。また越中、もしくは加賀に生まれ、後に京都で円山四条派に並ぶ勢力を築いた岸駒の作品も見逃せませんでした。それが「白蓮翡翠図」で、文字通りに蓮とカワセミを描いていましたが、やや縮れ、震えるような線で象られた蓮が画面いっぱいに広がっていて、異様なまでの迫力がありました。
彦根藩士の子として生まれ、明治時代に帝室技芸員として活動した岸竹堂の「華厳滝図」も同じく迫力十分の作品と言えるかもしれません。日光の華厳の滝を正面から描いていて、大量の水が落ちつつ、霞に煙る光景からは、あたかもドドドといった轟音が聞こえるかのようでした。
岸恭「四季花卉図屛風」 敦賀市立博物館 前期展示
ラストの岸恭の「四季花卉図屏風」にも心を惹かれました。水辺に沿って広がる草花を極めて鮮やかな絵具で描いていて、まるで桃源郷を前にするかのようでした。あまりにも美しすぎるゆえに、もはやこの世の景色とは思えないほどでした。
展示替えの情報です。前後期でほぼ全ての作品(一部を除く)が入れ替わります。
「ふつうの系譜 京の絵画と敦賀コレクション」出展リスト(PDF)
前期:3月14日(土)〜4月12日(日)
後期:4月14日(火)〜5月10日(日)
チケットに2度目は半額になる割引券がついています。2つの会期を合わせて1つの展覧会と捉えて差し支えありません。
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う、東京都の自粛要請のため、3月28日(土)と29日(日)は臨時休館しました。また既にスライドレクチャー等のイベントも中止されています。
ふつう展、明日3/31(火)から、開けることが決まりました。きれいな絵をご覧にいらしていただけたら、嬉しいです。感染予防対策とご協力のお願いについてはこちら↓https://t.co/auuZiRkigk
— ふつうの系譜展@府中市美術館 【図録制作チーム公式】 (@futsu2020) March 30, 2020
3月31日(火)以降は開館する予定であるものの、「平日については開館予定」(公式サイトより)とされている上、今後の状況次第では再び臨時休館する場合もあります。最新の開館の有無については美術館のウェブサイトをご覧下さい。
企画展に続く常設展においても、円山応挙や松村景文ら、江戸中期から後期の絵画が数点ほど展示されていました。あわせてお見逃しなきようにおすすめします。
5月10日まで開催されています。
「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 『奇想』があるなら『ふつう』もあります─京の絵画と敦賀コレクション」(@futsu2020) 府中市美術館
会期:2020年3月14日(土)〜5月10日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
*チケットに2度目が半額になる割引券付き。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )