「深井隆 物語の庭」 板橋区立美術館

板橋区立美術館
「深井隆 物語の庭」
2020/3/14~5/10 *臨時休館中



板橋区立美術館で開催中の「深井隆 物語の庭」を見てきました。

1951年に生まれ、東京藝術大学の彫刻科にて後進を指導しつつ、馬や椅子をモチーフとした彫刻を発表してきた深井隆は、退任後も板橋と故郷群馬のアトリエを拠点にして、勢力的に作品を制作してきました。

その深井隆の平面と立体の新旧作、約30点から構成されたのが、「物語の庭」と題した個展で、展示空間全体を舞台に、複数の物語を紡ぐかのように作品を展開していました。(会場内の撮影が出来ました。)


展示室中央:「詩よりも遠く」 1995年

まず受付から正面のスペースに進んで目に飛び込んでくるのが、高さ2メートル60センチほどの「詩よりも遠く」で、先端部が家のような形をしたモチーフを載せながら、まるで古い遺跡の塔を思わせる佇まいを見せていました。


「栖 2018ー1」 2018年

そして「詩よりも遠く」を囲むのが、「栖」や「四角形の庭ー回想」などで、一部は机のような形をしつつ、床面付近に直に置かれた作品もありました。それらはやはり家を思わせる形をしていながら、水色や金色に塗られていて、しばらく作品の間を歩いていると、塔を中心とした失われた都市の遺構を彷徨っているような錯覚に囚われました。


手前:「幻想の闇より」 1993年
奥:「円形の庭ー覚醒」 1993年

展示室は6つに分かれていましたが、各スペース毎に変化する景色も見どころと言えるかもしれません。そのうち「円形の庭ー覚醒」と「幻想の闇より」のある展示室では、共に長い棒状の木を矢のように刺したオブジェが置かれていて、一部には金箔が貼られていました。


「青空ー2020」 2020年

一方で4体の彫刻から成る「青空ー2020」は、深い青に染まった天使の羽のようなオブジェが並んでいて、2体は羽の部分のみ散るように床へ置かれていました。左右へ羽を広げる姿はどこか神々しくもあり、あたかも神殿の中へと誘われるようでした。


「月の庭ー言葉を聞くために」 2004年

ハイライトは共に馬をモチーフとした2点の「月の庭」かもしれません。それこそ月明かりを思わせる暗がりの空間の中、切り株のような円形の彫刻を前に、頭を垂れる馬の半身を象ったのが「月の庭ー言葉を聞くために」で、ちょうど首から頭の部分のみ金色に染まっていました。



近づいて見ると馬の瞳は思いがけないほど鋭く、物静かでありながらも、内に秘められた強い意思が感じられるかのようでした。


「月の庭ー月に座す」 2006年

もう1点は「月の庭ー月に座す」と名付けられた作品で、同じく半身で銀箔の貼られた馬が、1体の球と複数の円錐に向き合うように置かれていました。



ここで興味深いのは同じ馬であるものの、身体の質感が異なっていることで、前者は木目がそのまま浮き上がって見えるのに対し、後者は四角形の板か木材が嵌め込まれたような跡が残っていました。素材はともに樟でした。



こうした個々で異なった素材にも見るべき点が多いかもしれません。樟を基本としながらも、金箔や銀箔、さらに大理石や砂岩などを交えて彫刻を象っていて、時に荒削りとも呼べるような独特の質感にも惹かれるものを感じました。


4月3日まで開館していましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月4日から4月15日までの臨時休館が決まりました。5月10日までの会期とされていますが、4月16日以降の予定については、改めてお知らせがあるそうです。

開館状況等については同館のウェブサイトをご覧下さい。

「深井隆 物語の庭」 板橋区立美術館@itabashi_art_m
会期:2020年3月14日(土)~5月10日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は祝日のため開館し、5月7日は休館。
時間:9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般650円、高・大生450円、小・中学生200円。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
住所:板橋区赤塚5-34-27
交通:都営地下鉄三田線西高島平駅下車徒歩13分。東武東上線・東京メトロ有楽町線成増駅北口2番のりばより増17系統「高島平操車場」行き、「区立美術館」下車。
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