都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
記念WEBサイトで振り返る「三菱一号館美術館の10年」
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、臨時休館中の三菱一号館美術館では、様々なコンテンツをWEB上で楽しめる専用サイト「三菱一号館美術館の10年」を開設しています。
「三菱一号館美術館の10年」
https://10th.mimt.jp/
まず注目したいのは、「展覧会ポスターでたどる三菱一号館美術館10年のあゆみ」で、開館記念展の「マネとモダン・パリ」に始まり、最近の「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」までのポスターを閲覧することが出来ました。
オディロン・ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」 1901年 三菱一号館美術館 *「ルドンー秘密の花園」の内覧会時に許可を得て撮影
私もほぼ全ての展覧会に通い、チラシやポスターを手にしましたが、「シャルダン展ー静寂の巨匠」や「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」のような落ち着いたスタイルだけでなく、時に「もてなす悦び展」や「ルドンとその周ー夢見る世紀末」のような、個性的なデザインがあるのも面白いところではないでしょうか。
「フィリップス・コレクション展」のチラシも奇抜で、同展開催中はチケットショップにて「ド ザンヌ スー展」とした展覧会の表記を見かけるほどでした。私としては特に「KATAGAMI STYLE」や「ヴァロットン展」のポスターなどに惹かれましたが、左右にピンクを配した「画鬼 暁斎展」もインパクトがありました。
歴代の「展覧会入場者数のベスト5」も、10年の美術館の活動を振り返る1つの目安となるかもしれません。1位はオープニングを飾った「マネとモダン・パリ」で、98日の会期の間に30万4206人の入場者を記録しました。この展覧会は確かに大変に魅力的で、チラシ表紙を飾った「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」をはじめ、「死せる闘牛士」を包む衣装など、マネの絵画のとりわけ黒の迫力に圧倒されたことを覚えています。私が毎年、ブログで続けている私的ベスト企画、「私が観た美術展 ベスト10」の2010年の1位にも入れました。
「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」会場風景 *内覧会にて許可を得て撮影
3位の「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」も、三菱一号館美術館ならではの企画だったのではないでしょうか。とするのも、過去に複数開催された「プラド美術館展」とは異なり、あえて「小さなサイズの作品に焦点」を当てていたからで、細密な描写をとった作品が多く、初来日を果たしたヒエロニムス・ボス「愚者の石の除去」や、グロテスクな怪物を魑魅魍魎に表したピーテル・フリスの「冥府のオルフェウスとエウリュディケ」などに強く惹かれました。言わば、美術館のスケールと作品のサイズがマッチした展覧会だったかもしれません。
「パリ・グラフィック」会場風景 *撮影可能エリア
「三菱一号館美術館の10年」では、美術館の魅力を著名人が語る読み物も充実していました。そのうち国立西洋美術館の馬渕明子氏は「三菱一号館美術館の10年とジャポニスム」としたコメントを寄せていて、ジャポニスムの観点から、同館が展覧会で果たした役割を顕彰していました。また冨田章氏(東京ステーションギャラリー館長)と山下裕二氏(明治学院大学教授)、それに三菱一号館の高橋明也館長による「初老耽美派」の対談も興味深い内容で、多様性を重視する視点などには大いに共感するものがありました。
ミケランジェロ・ブオナローティ(未完作品、17世紀の彫刻家の手で完成)「十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)」 1514〜1516年
バッサーノ・ロマーノ、サン・ヴィンチェンツォ修道院付属聖堂 *「レオナルド×ミケランジェロ展」の撮影可能エリア
元々、三菱一号館美術館は著名人との対談に積極的で、公式サイトには「館長対談」と題し、各展覧会で行われた対談の記録が残されています。最近では「開館10周年記念展 画家が見た子ども展」にて、高橋明也三菱一号館美術館館長と、作家でEテレの日曜美術館でもお馴染みの小野正嗣さんとの対談が行われました。
さらにWEB企画「わたしだけの三菱一号館美術館」のコンテンツでは、10周年記念サイトのデザインとコンテンツをカスタマイズすることが可能で、完成したサイトをSNSにてシェアすることも出来ました。スマートフォンからの方がよりスムーズにアクセス出来るかもしれません。
先の「館長対談」しかり、三菱一号館美術館は公式サイト自体が充実していますが、私が過去の美術館を振り返るのに特に重要と思えるのが、各年度の年報です。
2010年度から2018年度までの年報がPDFで公開されていて、各展覧会の概要だけでなく、教育普及活動やカフェなどの施設活動報告などが掲載されていました。2011年度では東日本大震災にも触れられていて、一時休館から再開したものの、原発事故や電力不足等の影響を受けつつも、展覧会を開催した経緯について記されていました。大変な労苦があったに違いありません。
2月15日にスタートした「開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン」は、半月ほど経過した段階で臨時休館となり、現在まで開館出来ない状態が続いています。会期は6月7日までありますが、私もまだ見られていません。10周年を祝した記念のイベントもほぼ全てが延期となってしまいました。
公式Twitterアカウントでは、1日1年ずつ過去の展覧会を振り返る企画が進行中です。またInstagramでも「画家が見たこども展」の作品解説が行われています。
しばらくはSNSを含めて、「三菱一号館美術館の10年」のコンテンツを楽しむのも良いかもしれません。
三菱一号館美術館(@ichigokan_PR)
2010年春、東京・丸の内に開館。
19世紀後半から20世紀前半の近代美術を主題とする企画展を年3回開催。
赤煉瓦の建物は、三菱が1894年に建設した「三菱一号館」(ジョサイア・コンドル設計)を復元したもの。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
「三菱一号館美術館の10年」
https://10th.mimt.jp/
まず注目したいのは、「展覧会ポスターでたどる三菱一号館美術館10年のあゆみ」で、開館記念展の「マネとモダン・パリ」に始まり、最近の「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」までのポスターを閲覧することが出来ました。
オディロン・ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」 1901年 三菱一号館美術館 *「ルドンー秘密の花園」の内覧会時に許可を得て撮影
私もほぼ全ての展覧会に通い、チラシやポスターを手にしましたが、「シャルダン展ー静寂の巨匠」や「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」のような落ち着いたスタイルだけでなく、時に「もてなす悦び展」や「ルドンとその周ー夢見る世紀末」のような、個性的なデザインがあるのも面白いところではないでしょうか。
「フィリップス・コレクション展」のチラシも奇抜で、同展開催中はチケットショップにて「ド ザンヌ スー展」とした展覧会の表記を見かけるほどでした。私としては特に「KATAGAMI STYLE」や「ヴァロットン展」のポスターなどに惹かれましたが、左右にピンクを配した「画鬼 暁斎展」もインパクトがありました。
歴代の「展覧会入場者数のベスト5」も、10年の美術館の活動を振り返る1つの目安となるかもしれません。1位はオープニングを飾った「マネとモダン・パリ」で、98日の会期の間に30万4206人の入場者を記録しました。この展覧会は確かに大変に魅力的で、チラシ表紙を飾った「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」をはじめ、「死せる闘牛士」を包む衣装など、マネの絵画のとりわけ黒の迫力に圧倒されたことを覚えています。私が毎年、ブログで続けている私的ベスト企画、「私が観た美術展 ベスト10」の2010年の1位にも入れました。
「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」会場風景 *内覧会にて許可を得て撮影
3位の「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」も、三菱一号館美術館ならではの企画だったのではないでしょうか。とするのも、過去に複数開催された「プラド美術館展」とは異なり、あえて「小さなサイズの作品に焦点」を当てていたからで、細密な描写をとった作品が多く、初来日を果たしたヒエロニムス・ボス「愚者の石の除去」や、グロテスクな怪物を魑魅魍魎に表したピーテル・フリスの「冥府のオルフェウスとエウリュディケ」などに強く惹かれました。言わば、美術館のスケールと作品のサイズがマッチした展覧会だったかもしれません。
「パリ・グラフィック」会場風景 *撮影可能エリア
「三菱一号館美術館の10年」では、美術館の魅力を著名人が語る読み物も充実していました。そのうち国立西洋美術館の馬渕明子氏は「三菱一号館美術館の10年とジャポニスム」としたコメントを寄せていて、ジャポニスムの観点から、同館が展覧会で果たした役割を顕彰していました。また冨田章氏(東京ステーションギャラリー館長)と山下裕二氏(明治学院大学教授)、それに三菱一号館の高橋明也館長による「初老耽美派」の対談も興味深い内容で、多様性を重視する視点などには大いに共感するものがありました。
ミケランジェロ・ブオナローティ(未完作品、17世紀の彫刻家の手で完成)「十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)」 1514〜1516年
バッサーノ・ロマーノ、サン・ヴィンチェンツォ修道院付属聖堂 *「レオナルド×ミケランジェロ展」の撮影可能エリア
元々、三菱一号館美術館は著名人との対談に積極的で、公式サイトには「館長対談」と題し、各展覧会で行われた対談の記録が残されています。最近では「開館10周年記念展 画家が見た子ども展」にて、高橋明也三菱一号館美術館館長と、作家でEテレの日曜美術館でもお馴染みの小野正嗣さんとの対談が行われました。
さらにWEB企画「わたしだけの三菱一号館美術館」のコンテンツでは、10周年記念サイトのデザインとコンテンツをカスタマイズすることが可能で、完成したサイトをSNSにてシェアすることも出来ました。スマートフォンからの方がよりスムーズにアクセス出来るかもしれません。
先の「館長対談」しかり、三菱一号館美術館は公式サイト自体が充実していますが、私が過去の美術館を振り返るのに特に重要と思えるのが、各年度の年報です。
2010年度から2018年度までの年報がPDFで公開されていて、各展覧会の概要だけでなく、教育普及活動やカフェなどの施設活動報告などが掲載されていました。2011年度では東日本大震災にも触れられていて、一時休館から再開したものの、原発事故や電力不足等の影響を受けつつも、展覧会を開催した経緯について記されていました。大変な労苦があったに違いありません。
2月15日にスタートした「開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン」は、半月ほど経過した段階で臨時休館となり、現在まで開館出来ない状態が続いています。会期は6月7日までありますが、私もまだ見られていません。10周年を祝した記念のイベントもほぼ全てが延期となってしまいました。
今週も三菱一号館美術館の10年を1日1年ずつ振り返ります。\2015年は開館5周年!/4月6日の開館記念日には、一号館広場での音楽演奏や先着555人の方にオリジナルトートバッグのプレゼントを実施しました!現在もご利用くださっている方を目撃することも。どうもありがとうございます! pic.twitter.com/ZYWgTCLdd5
— 三菱一号館美術館 (@ichigokan_PR) April 13, 2020
公式Twitterアカウントでは、1日1年ずつ過去の展覧会を振り返る企画が進行中です。またInstagramでも「画家が見たこども展」の作品解説が行われています。
しばらくはSNSを含めて、「三菱一号館美術館の10年」のコンテンツを楽しむのも良いかもしれません。
三菱一号館美術館(@ichigokan_PR)
2010年春、東京・丸の内に開館。
19世紀後半から20世紀前半の近代美術を主題とする企画展を年3回開催。
赤煉瓦の建物は、三菱が1894年に建設した「三菱一号館」(ジョサイア・コンドル設計)を復元したもの。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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