「どこでもれきはく」で学びたい 日韓の海にまつわる生活文化

国立歴史民俗博物館
「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」
2020/3/17~5/17 *開催中止



新型コロナウイルス感染拡大防止のため、長期にわたり臨時休館中の国立歴史民俗博物館が、様々なコンテンツをWEB上で楽しめる「どこでもれきはく」を公開しています。

【どこでもれきはく】
https://www.rekihaku.ac.jp/others/news/dokodemorekihaku/index.html

中でも充実しているのは「歴博公式youtubeチャンネル」で、開催中止となった国際企画展示、「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」のプロローグ、第1部から第3部、ないしエピローグの内容について動画で紹介していました。

「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」とは、いずれも長い海岸線を有する日本と韓国の昆布とわかめ(ミヨク)に着目し、海に関した両国の生活文化を比較した展示で、国立歴史民俗博物館と韓国国立民俗博物館の研究交流の成果として企画されました。なお韓国では、既に2019年の秋から今年2月にかけて、先行して開催されました。



まず「海のひろがる日常」と題したプロローグでは、同館の研究部情報資料研究系の鈴木卓治さんを聞き手に迎え、研究部民俗研究系の松田睦彦さんが、日韓の魚屋の掛け合いなどについて紹介していました。



続く第1部「海を味わう」では、海での暮らしや冠婚葬祭と海産物との関係について触れていて、日本の出汁などの見慣れた資料を目にすることが出来ました。そして日本において昆布が産地別にブランド化されるものの、韓国ではあまり意識されないとの指摘や、わかめと出産の関係など、海産物を通した日韓の儀礼の比較についても興味深く感じました。



漁師の技術や海への信仰をテーマとした第2部の「海に生きる」では、日韓の漁具が並ぶ光景などを映像を通して見ることが出来ました。また韓国は干潟が広大なため干潟漁が発達したことや、釣りに拘るとされる日本のマグロ漁など、両国の漁業の違いなどについて学べました。それに海の神に仕え、漁民を守るための韓国の将軍神の旗も目立っていたのではないでしょうか。水の神として龍や蛇を祀る風習は、東アジア一帯に共通することから、儀礼も日韓で似ている面も少なくないとのことでした。



第3部「海を越える」では、近代以降の日韓の交流について取り上げられていて、両国の大漁旗が比較されていました。それに日本の進出拡大に伴った、両国の海での摩擦の経緯も重要かもしれません。


ラストのエピローグでは「明太子」が登場していて、相互に影響した海の食文化について紹介していました。何でも明太子は元々、韓国でスケトウダラの塩辛として生まれたものの、日本では出汁を染み込ませたものが一般的となり、今では韓国でも日本式が主流になっているそうで、韓国の伝統的な明太子こと「ミョンランジョッ」の味も気になりました。

この他、「歴博公式youtubeチャンネル」では、特集展示から「和宮ゆかりの雛かざり」の解説動画も配信していました。合わせて閲覧するのも良いのではないでしょうか。

さらに「どこでもれきはく」では、簡易的な館内マップ「れきはく宝探し」や博物館資料をHPから見られる「WEBギャラリー」、それにオリジナル屏風をダウンロードして楽しめる「こどもれきはく」などもコンテンツも公開しています。

中でも「WEBギャラリー」は、重要文化財の「洛中洛外図屏風」(歴博甲本)をはじめとする屏風や、「百鬼夜行絵巻」などの貴重な資料を高精細画像で掲載していて、まるで単眼鏡で覗き込んだかのように細部の描写までを鮮明に鑑賞することが出来ました。



古代から現代までに至る歴史と日本人の民俗世界をテーマとした国立歴史民俗博物館は、2019年に第1展示室「先史・古代」をリニューアルし、充実した展示空間と生まれ変わりました。



ともかく広大な展示室をくまなく追って行くと、半日、あるいは一日がかりのスケールと言えるかもしれません。



「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」は中止となりましたが、7月7日からは同じく韓国国立中央博物館の協力を得た「加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史」(9月6日まで)の開催が予定されています。そちらは是非見に行こうと思いました。 

「昆布とミヨク-潮香るくらしの日韓比較文化誌」 国立歴史民俗博物館@rekihaku
会期:2020年3月17日(火)~5月17日(日) *開催中止
休館:月曜日。但し休日の場合は翌日が休館日。
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般1000(800)円、大学生500(400)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *総合展示も観覧可。
住所:千葉県佐倉市城内町117
交通:京成線京成佐倉駅下車徒歩約15分。JR線佐倉駅北口1番乗場よりちばグリーンバス田町車庫行きにて「国立博物館入口」または「国立歴史民俗博物館」下車。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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