都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
坂茂のオンライン・ギャラリートークで鑑賞する「坂茂建築展」
大分県立美術館
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」
2020/5/11~7/5
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」を開催中の大分県立美術館が、建築家、坂茂(ばんしげる)によるオンライン・ギャラリートークを動画で配信しています。
そこでは坂さんが、美術館の主幹学芸員である宇都宮壽さんとZOOMでやり取りしながら会場を案内していて、冒頭では美術館の建物で特徴的なガラス水平折戸の開放について触れていました。そして紙管で建てた坂茂の別荘の一部を実物大で再現したスペースや、大分県立美術館のカフェのために設計した椅子が並ぶ光景なども映像で見られました。
展示は「紙の構造」、「木の可能性」、「手で描く」、「プロダクトデザイン」、さらに「災害支援」の5つのテーマから構成されていて、1つ1つの意図についても解説から理解することが出来ました。
「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年 フランス、パリ近郊 Scale:1/150
「紙の構造」では、1985年のアルヴァ・アアルト展に用いた紙の内装や、1995年に建てた紙の建築である小田原パビリオンなどの資料が展示されていて、紙管による回廊の展示室内の光景も良く分かりました。
「ハノーバー国際博覧会日本館」 2000年 完成模型 1/100
2000年のハノーバー国際博覧会日本館では、紙管の模型が展示されていて、重りを載せて製図したプロセスについて語っていました。また実物大のジョイントの模型や、完成した建物の写真も印象的で、学生との協働や、簡単に施工し得るような建物の設計など、坂の建築に対するアプローチも興味深く思えました。
大分県立美術館 ©Hiroyuki Hirai
2つ目の「木の可能性」では、中国の伝統的な竹の帽子から着想を得たポンピドゥーセンター・メスの屋根や、スイスのメディアでチューリッヒに建てたタメディア本社の模型などが並んでいました。それに韓国のゴルフ場のクラブハウスに用いられた3分の1の柱の模型や、OPAMこと大分県立美術館の資料展示も充実しているようで、多数の模型が展示室に並ぶ光景を目の当たりに出来ました。また自然や環境を意識した建築設計も目立っていました。
「手で描く」では、手書きのスケッチが壁一面に天井付近まで展示されていて、「コンピューターによる図面は頭に繋がるのに対し、手書きの図面は心に直結している。」との坂のコメントも心に深く留まりました。
「富士山世界遺産センター」 2017年 静岡県富士宮市
「プロダクトデザイン」で面白いのは、坂が学生時代に設計したという照明でした。当時は実現しなかったものの、最近製品化し、ホテルに使われたとのことで、坂が照明までを手掛けていたとは知りませんでした。
「コンテナ多層仮設住宅」 2011年 完成模型 1/300
ラストは坂がライフワークとしている「災害支援」のプロジェクトで、阪神淡路大震災の紙の仮設住宅や教会、ニュージーランドのクライストチャーチの「紙の大聖堂」などの写真や模型が並んでいました。そして「紙の大聖堂」では、中にカメラを入れる映像があり、あたかも実際の聖堂の中へ立ち入ったかのような臨場感が得られました。
「紙の教会」 1995年 完成模型 1/50
それに2004年の中越地震より提供している、避難所の間仕切りの実物のシェルターも展示されていて、新型コロナなどの感染症対策にも有用との指摘も納得するものがありました。「災害で住環境を失った人々を支援するのも建築の仕事」との言葉も重みがあるのではないでしょうか。
オンライン・ギャラリートークの動画は約1時間に及んでいて、大変に細かく丁寧な解説をじっくり聞くことが出来ました。見応えも十分でした。
この他、大分県立美術館では、「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」の設営作業も動画で公開していて、様々な模型が展示室に築かれる光景をスピード感ある映像にて捉えられていました。トーク動画と合わせて見るのも良いかもしれません。
さて4月17日から臨時休館していた大分県立美術館ですが、新型コロナウイルスの感染防止対策を行い、5月11日より再開館しました。
入館時にはサーモカメラによる体温測定が実施される他、所定の用紙に代表者指名や来館日時、それに電話番号、市町村名などの連絡先を記入する必要があります。また大分県の新型コロナウイルス感染症対策本部によって、海外から入国、帰国、ないし特定警戒都道府県より来県した場合は、2週間の健康観察と外出の自粛を要請されています。
もちろん消毒液での消毒の徹底、咳エチケットやマスク着用などの感染予防対策も必須です。お出かけの際は十分にご注意下さい。
注)大分県立美術館の外観を除くブログ内写真は、「建築倉庫ミュージアム」(寺田倉庫)、及び「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」(TOTOギャラリー・間)会場内で撮影。
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」 大分県立美術館(@OPAM_OPAM)
会期:2020年5月11日(月)~7月5日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~19:00
*金・土曜日は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学・高校生700(500)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*半券提示でコレクション展も観覧可。
住所:大分市寿町2-1
交通:JR大分駅府内中央口(北口)から徒歩15分。JR大分駅前7番乗り場から、大分交通バス「青葉台線」(田室町経由)23番・24番、「県立図書館線」(田室町経由)3番、スカイタウン高崎線(西春日町経由)8番に乗車し、「オアシスひろば前」下車すぐ。JR大分駅上野の森口前から中心市街地循環バス「大分きゃんばす」に乗車し、「オアシスひろば前(県立美術館南)」下車すぐ。
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」
2020/5/11~7/5
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」を開催中の大分県立美術館が、建築家、坂茂(ばんしげる)によるオンライン・ギャラリートークを動画で配信しています。
そこでは坂さんが、美術館の主幹学芸員である宇都宮壽さんとZOOMでやり取りしながら会場を案内していて、冒頭では美術館の建物で特徴的なガラス水平折戸の開放について触れていました。そして紙管で建てた坂茂の別荘の一部を実物大で再現したスペースや、大分県立美術館のカフェのために設計した椅子が並ぶ光景なども映像で見られました。
展示は「紙の構造」、「木の可能性」、「手で描く」、「プロダクトデザイン」、さらに「災害支援」の5つのテーマから構成されていて、1つ1つの意図についても解説から理解することが出来ました。
「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年 フランス、パリ近郊 Scale:1/150
「紙の構造」では、1985年のアルヴァ・アアルト展に用いた紙の内装や、1995年に建てた紙の建築である小田原パビリオンなどの資料が展示されていて、紙管による回廊の展示室内の光景も良く分かりました。
「ハノーバー国際博覧会日本館」 2000年 完成模型 1/100
2000年のハノーバー国際博覧会日本館では、紙管の模型が展示されていて、重りを載せて製図したプロセスについて語っていました。また実物大のジョイントの模型や、完成した建物の写真も印象的で、学生との協働や、簡単に施工し得るような建物の設計など、坂の建築に対するアプローチも興味深く思えました。
大分県立美術館 ©Hiroyuki Hirai
2つ目の「木の可能性」では、中国の伝統的な竹の帽子から着想を得たポンピドゥーセンター・メスの屋根や、スイスのメディアでチューリッヒに建てたタメディア本社の模型などが並んでいました。それに韓国のゴルフ場のクラブハウスに用いられた3分の1の柱の模型や、OPAMこと大分県立美術館の資料展示も充実しているようで、多数の模型が展示室に並ぶ光景を目の当たりに出来ました。また自然や環境を意識した建築設計も目立っていました。
「手で描く」では、手書きのスケッチが壁一面に天井付近まで展示されていて、「コンピューターによる図面は頭に繋がるのに対し、手書きの図面は心に直結している。」との坂のコメントも心に深く留まりました。
「富士山世界遺産センター」 2017年 静岡県富士宮市
「プロダクトデザイン」で面白いのは、坂が学生時代に設計したという照明でした。当時は実現しなかったものの、最近製品化し、ホテルに使われたとのことで、坂が照明までを手掛けていたとは知りませんでした。
「コンテナ多層仮設住宅」 2011年 完成模型 1/300
ラストは坂がライフワークとしている「災害支援」のプロジェクトで、阪神淡路大震災の紙の仮設住宅や教会、ニュージーランドのクライストチャーチの「紙の大聖堂」などの写真や模型が並んでいました。そして「紙の大聖堂」では、中にカメラを入れる映像があり、あたかも実際の聖堂の中へ立ち入ったかのような臨場感が得られました。
「紙の教会」 1995年 完成模型 1/50
それに2004年の中越地震より提供している、避難所の間仕切りの実物のシェルターも展示されていて、新型コロナなどの感染症対策にも有用との指摘も納得するものがありました。「災害で住環境を失った人々を支援するのも建築の仕事」との言葉も重みがあるのではないでしょうか。
オンライン・ギャラリートークの動画は約1時間に及んでいて、大変に細かく丁寧な解説をじっくり聞くことが出来ました。見応えも十分でした。
この他、大分県立美術館では、「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」の設営作業も動画で公開していて、様々な模型が展示室に築かれる光景をスピード感ある映像にて捉えられていました。トーク動画と合わせて見るのも良いかもしれません。
さて4月17日から臨時休館していた大分県立美術館ですが、新型コロナウイルスの感染防止対策を行い、5月11日より再開館しました。
【開館のお知らせ及びご来館の方へのお願いについて】#opamjp当館は4/17から休館していましたが、新型コロナウイルスの感染予防及び拡散防止対策を行い、5/11から開館します。再開館にあたってお客様へのお願いがございますので、皆さまのご理解、ご協力をお願いいたします。https://t.co/qn8ceiEfsI
— 大分県立美術館 OPAM (@OPAM_OPAM) May 6, 2020
入館時にはサーモカメラによる体温測定が実施される他、所定の用紙に代表者指名や来館日時、それに電話番号、市町村名などの連絡先を記入する必要があります。また大分県の新型コロナウイルス感染症対策本部によって、海外から入国、帰国、ないし特定警戒都道府県より来県した場合は、2週間の健康観察と外出の自粛を要請されています。
もちろん消毒液での消毒の徹底、咳エチケットやマスク着用などの感染予防対策も必須です。お出かけの際は十分にご注意下さい。
注)大分県立美術館の外観を除くブログ内写真は、「建築倉庫ミュージアム」(寺田倉庫)、及び「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」(TOTOギャラリー・間)会場内で撮影。
「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」 大分県立美術館(@OPAM_OPAM)
会期:2020年5月11日(月)~7月5日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~19:00
*金・土曜日は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学・高校生700(500)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*半券提示でコレクション展も観覧可。
住所:大分市寿町2-1
交通:JR大分駅府内中央口(北口)から徒歩15分。JR大分駅前7番乗り場から、大分交通バス「青葉台線」(田室町経由)23番・24番、「県立図書館線」(田室町経由)3番、スカイタウン高崎線(西春日町経由)8番に乗車し、「オアシスひろば前」下車すぐ。JR大分駅上野の森口前から中心市街地循環バス「大分きゃんばす」に乗車し、「オアシスひろば前(県立美術館南)」下車すぐ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )