かつてないスケールの大型豪華本 「小学館SUMO本 東大寺」(三好和義著)

近年、アート関連の書籍でもトレンドとなっている大型豪華本に、破格のスケールの一冊が小学館より出版されました。



「SUMO本 東大寺」三好和義著 
公式HP:https://www.shogakukan.co.jp/pr/sumo/todaiji/
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それが小学館SUMO本シリーズ第一弾「東大寺」で、写真家、三好和義が約10年に渡って取材した東大寺のあらゆる光景を、約200点の写真にまとめたものでした。サイズは天地690mm×左右500mmのB2版にも及んでいて、肉眼で見えない部分にまでクローズアップして収録するなど、もはや従来の大型本や写真集の概念を超えていました。



「SUMO本 東大寺」の情報を小学館より寄せていただきました。ブログでもご紹介したいと思います。



ともかく異例の出版だけに見どころは多岐に渡っていますが、まず注目したいのが、大型豪華本のジャンルの中でも最大級と言えるB2版のサイズでした。ページを開くと、45インチから46インチのテレビに相当する幅1メートルほどあり、被写体が目に飛び込んで来るような迫力を得ることが出来ました。

B2は、現在のデジタル印刷機で1枚の紙として印刷可能な最大サイズで、コニカミノルタ社のKM-1という最新鋭機を用い、指紋もつきにくい上質な紙に印刷されました。また風格のある表紙のデザインは、美術館やギャラリーの空間デザインで知られるおおうちおさむが手掛けました。



さらに重要なのは、通常は見られない秘仏や法要などの神聖なシーンなど、知られざる東大寺の姿を克明に捉えていることでした。中でも三好が何年にも渡って撮影を希望していた法華堂の「執金剛立像」は、秘仏調査の際に特別な許可を得て写されていて、何千枚もの様々なアングルから厳選された写真が「SUMO本 東大寺」に掲載されました。



普段立ち入れない蓮華座の上から見上げた「盧舎那仏」を広角レンズで捉えたり、上方から魚眼レンズを差し出して光背化仏全体を写すなど、おおよそ一般の拝観では叶わない光景が見られるのも特徴でした。また創建以来1200年以上も伝わり、「お水取り」の名で知られる「東大寺二月堂修二会」も、特別な許可を得て撮影されました。松明の炎が闇を焦がす光景は、まるで龍がダイナミックに舞うように見えるかもしれません。



高い印刷技術も見過ごせません。最新のインクジェット印刷で表現された色の表現力は、既存の本よりも格段に増していて、特に金色に関しては、金箔を貼ったかのような輝きを放っていました。



こうした色の再現力に関しては、先に触れた法華堂の「執金剛立像」でも同様で、1300年前の制作時の様子を今に伝える極彩色はもとより、口の中の朱色や髭の痕跡はおろか、ライティングによって浮き上がる筋肉や血管の動きまでを見事に写し撮っていました。



上の写真は北極星を背にする大仏殿で、雲のない澄み切った深夜に、シャッタースピード3秒で約90分間、1000枚連続撮影したデジタル写真を比較明合成して作られました。その光景は神々しいまでに美しく、実際に目にすること不可能でもあり、まさに人間の目を超えた視点と呼んでも過言ではありませんでした。



東大寺の自然を感じられるのも「SUMO本 東大寺」の大きな魅力ではないでしょうか。と言うのも、勧進所に咲く枝垂桜から夏の百日紅越しに垣間見える境内、それに南大門を見上げる紅葉や厳冬の大仏池なども記録していて、神秘的なまでの四季の移ろいを見て取れるからでした。



年中行事では、煌びやかな法衣をまとった僧侶なども多く写していて、東大寺にまつわる人々の息遣いも感じることが出来ました。これほど東大寺の「人」に迫った写真作品もないと言って良く、いわゆる建物や仏像のみの写真集ではありませんでした。また写真に日本語と英語で解説が付いているのも重要なポイントで、文化財の概要とともに、撮影の意図やプロセスの知見も得られました。



さて何から何まで規格外の「SUMO本 東大寺」ですが、本体360000円(+税)の価格も驚くべきものと言えるかもしれません。ただ制作に大変な費用がかかっていることから、いわゆる利益は僅かでもあるそうで、そもそも極めて限られた部数のみしか刊行されません。



「SUMO」とは大型豪華本の構想の段階において、同じくアート関連の大型本を手がけるドイツのタッシェンの「SUMO BOOKS」などの例を参考にして名付けられました。4K映像よりも緻密でリアルな世界を追求していて、紙そのものも約30年は劣化しないように作られています。



1958年に徳島市に生まれた写真家、三好和義は、17歳にて二科展に入選し、銀座のニコンサロンでも個展を開催。1985年はデビュー写真集「RAKUEN」を発表しては、当時の最年少にて第11回木村伊兵衛賞受賞を受賞しました。



三好が初めて東大寺を訪ねたのは小学6年生の修学旅行で、今も古いアルバムには大仏殿を前にカメラを持っている写真が残されています。そして東大寺に強く惹かれたのか、中学生の頃にも一人で徳島から奈良へ向かい、法華堂に籠っては一日を過ごしたと語っています。



本格的に東大寺を撮り始めた10年前のことで、2017年には東日本大震災復興祈念特別展「東大寺と東北-復興を支えた人々の祈り」のポスターや図録の撮影のため、奈良へ移り住みました。以来、基本的は奈良で過ごし、毎日カメラを持っては東大寺の境内を歩いているとしています。人の少ない早朝と夕方がお気に入りの時間でもあるそうです。



奈良時代、東大寺は旱魃や飢饉、地震や天然痘の流行に見舞われる中、世界や人々の平安を祈って造顕されました。そして新型コロナウイルス渦の現代においても、早期終息や罹患された方の快復、及び亡くなられた方の追福菩提を祈る勤行を欠かさず行っている上、外出自粛に伴って寺の映像を「ニコニコ動画」で配信する「大仏定点生放送 リモート参拝」にも取り組みました。なお大仏殿の拝観は6月1日より再開されました。(大仏殿以外の諸堂は6月15日より再開予定。)



本書の刊行に際し、華厳宗管長で第223世東大寺別当である狹川普文氏は、「持って見ることさえ難しい大きく思い写真集を何故刊行するのか、当初は首をかしげた。」と振り返っています。確かにサイズしかり、価格を鑑みても、空前絶後なスケールであることは間違いありません。



しかし三好が少年時代から愛し、通い続けた東大寺を、情熱と持ちつつ高い技術で撮影した「SUMO本 東大寺」は、端的な大型豪華本と言うよりも、1人の写真家の集大成としての美術作品と呼べるのではないでしょうか。もちろん価格も価格ゆえに、簡単におすすめ出来るものではありませんが、東大寺の新たな歴史のワンシーンを切り開いているとしても良いかもしれません。


三好自身も「SUMO本 東大寺」の撮影に対する意気込みや制作の裏話を、公式Twitter(@sumo_books)の動画などで語っています。そちらも是非合わせてご覧ください。

「SUMO本 東大寺」 著:三好和義 (@sumo_books
出版社:小学館
発売日:2020/5/25
価格:本体360000円+税
内容:アート本の世界で近年次々と発売されトレンドとなっている超特大本。本の形をしてはいますが、掲載されている美術作品がまるで目の前にあるかのような体験ができ、読むというよりはその世界に入り込む感覚です。このたび新しくSUMO本シリーズというレーベルを立ち上げ、第一弾として写真家・三好和義が10年にわたり撮影した「東大寺」のあらゆる姿を掲載。最大限に大きくした写真で迫力ある世界観をお届けします。驚くのは大きさだけでなく、掲載された写真一枚ずつのクオリティ。劇的に進化した、デジタルカメラや印刷などの最新技術によって実現可能となった、贅沢で特別な写真集です。
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