都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「名和晃平 Oracle」 GYRE GALLERY
GYRE GALLERY
「名和晃平 Oracle」
2020/10/23~2021/1/31
GYRE GALLERYで開催中の「名和晃平 Oracle」を見てきました。
1975年に生まれ、京都を拠点に活動する彫刻家の名和晃平は、動物の剥製を無数の球体で覆った「PixCell」シリーズなどで注目を集めてきました。
その名和が神託や神意をテーマにしたのが「Oracle」と題した個展で、「PixCell」や「Black Field」などの新作19点に加え、GYREの吹き抜けを利用した「Silhouette」を6点ほど展示していました。
名和晃平「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」 2020年
まず大いに目を引くのが金色に燦然と輝く「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」で、鎌倉時代から南北朝時代に制作されたとされる「春日神鹿舎利厨子」の神鹿をモチーフにした作品でした。
名和晃平「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」(部分) 2020年
神鹿は3Dシステムでデータを作成した上、木彫、漆塗り、箔押しなどの伝統的な技法によって制作していて、背の鎧には蓮華座の上に火焔宝珠を乗せていました。また鹿自身も渦を巻いては雲のような形状をしていて、何もない空間より姿を現す瞬間を捉えているように思えました。
名和晃平「Dune#16」 2020年
「Dune」と名付けられた平面のシリーズも印象に深かったかもしれません。これは複数のメディウムや水などを混合し、支持体の上に流し広げては模様を表した絵画で、あたかも宇宙から人工衛星で地表を眺めたランドスケープが示されているようでした。
名和晃平「Dune#5」 2020年
一部は山脈や氷河のような光景にも重なって見えましたが、赤い絵具が炎のように立ち上がるような作品からは、速水御舟の「炎舞」の炎のようにも映りました。
名和晃平「Dune#16」(部分) 2020年
いわゆる抽象絵画と呼べるのかもしれませんが、見る側の心象によって表情が変化するような作品かもしれません。
名和晃平「Catalyst#21」 2020年
グルーガンで液状の絵具を支持体へと定着させたのが、レースの網目のようなモチーフの広がる「Catalyst」でした。
名和晃平「Catalyst#21」 2020年
透明のグルーは鳥の翼のように横へと広がる一方、重力のゆえか下へと伸びてもいて、何やら菌のような微生物が繁殖しているかのようでした。
名和晃平「Blue Seed」シリーズより 2020年
コンピュータのプログラムによりイメージが繰り返し生成されていくのが、「Blue Seed」と呼ばれた2点の作品でした。表面には青いインクのような線描が現れては消えていて、植物の種子のような残像を見せていました。ともかく滲んで連なる線の形は終始、変化し続けていて、動くドローイングを目にしているようでした。
名和晃平「Rhythm」シリーズより 2020年
大小の球体を組み合わせつつ、全てにグレーのパイル(短繊維)を植毛したのが、立体の「Rhythm」でした。ケースの中にはいくつかの球体がランダムに並んでいて、照明の効果によって斜め下へと影を伸ばしていました。
名和晃平「Rhythm」シリーズより 2020年
一部の球体は上部が切り取られたような形をしていましたが、中にはコロナウイルスならぬ細菌を連想させるものもありました。ちょうどシャーレの中で培養される菌を思わせる面もあるかもしれません。
名和晃平「PixCell Crow#5」 2020年
この他では、カラスとカモシカをモチーフとした「PixCell」のシリーズも展示されていました。
名和晃平「PixCell Reedbuck」 2020年
いずれも今年に制作された作品でしたが、代表的な「PixCell」とともに、新たに公開された「Blue Seed」や「Dune」などを併せ見る展示も良かったかもしれません。
名和晃平「Moment #164 #163 #162」 2020年
これほどの点数の作品を都内で見られる機会は久しぶりではないでしょうか。平面に立体と行き来し、常に変化し続ける名和の現在の表現を知ることができました。
GYRE内アトリウムでの「Silhouette」の展示風景
なお名和は明治神宮の「神宮の杜芸術祝祭」の「天空海闊(てんくうかいかつ)」においても、屋外に「White Deer (Meiji Jingu)」と題した彫刻を展示しています。(12月13日まで)
名和晃平「White Deer (Meiji Jingu)」 2020年 *明治神宮での展示風景
場所は苑内の明治神宮ミュージアムの前で、神宮前のGYRE GALLERYから歩いて行くことが可能です。あわせて観覧するのも良さそうです。
会期中無休です。2021年1月31日まで開催されています。
「名和晃平 Oracle」 GYRE GALLERY
会期:2020年10月23日(金)~2021年1月31日(土)
休廊:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
「名和晃平 Oracle」
2020/10/23~2021/1/31
GYRE GALLERYで開催中の「名和晃平 Oracle」を見てきました。
1975年に生まれ、京都を拠点に活動する彫刻家の名和晃平は、動物の剥製を無数の球体で覆った「PixCell」シリーズなどで注目を集めてきました。
その名和が神託や神意をテーマにしたのが「Oracle」と題した個展で、「PixCell」や「Black Field」などの新作19点に加え、GYREの吹き抜けを利用した「Silhouette」を6点ほど展示していました。
名和晃平「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」 2020年
まず大いに目を引くのが金色に燦然と輝く「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」で、鎌倉時代から南北朝時代に制作されたとされる「春日神鹿舎利厨子」の神鹿をモチーフにした作品でした。
名和晃平「Trans-Sacred Deer (g/p_cloud)」(部分) 2020年
神鹿は3Dシステムでデータを作成した上、木彫、漆塗り、箔押しなどの伝統的な技法によって制作していて、背の鎧には蓮華座の上に火焔宝珠を乗せていました。また鹿自身も渦を巻いては雲のような形状をしていて、何もない空間より姿を現す瞬間を捉えているように思えました。
名和晃平「Dune#16」 2020年
「Dune」と名付けられた平面のシリーズも印象に深かったかもしれません。これは複数のメディウムや水などを混合し、支持体の上に流し広げては模様を表した絵画で、あたかも宇宙から人工衛星で地表を眺めたランドスケープが示されているようでした。
名和晃平「Dune#5」 2020年
一部は山脈や氷河のような光景にも重なって見えましたが、赤い絵具が炎のように立ち上がるような作品からは、速水御舟の「炎舞」の炎のようにも映りました。
名和晃平「Dune#16」(部分) 2020年
いわゆる抽象絵画と呼べるのかもしれませんが、見る側の心象によって表情が変化するような作品かもしれません。
名和晃平「Catalyst#21」 2020年
グルーガンで液状の絵具を支持体へと定着させたのが、レースの網目のようなモチーフの広がる「Catalyst」でした。
名和晃平「Catalyst#21」 2020年
透明のグルーは鳥の翼のように横へと広がる一方、重力のゆえか下へと伸びてもいて、何やら菌のような微生物が繁殖しているかのようでした。
名和晃平「Blue Seed」シリーズより 2020年
コンピュータのプログラムによりイメージが繰り返し生成されていくのが、「Blue Seed」と呼ばれた2点の作品でした。表面には青いインクのような線描が現れては消えていて、植物の種子のような残像を見せていました。ともかく滲んで連なる線の形は終始、変化し続けていて、動くドローイングを目にしているようでした。
名和晃平「Rhythm」シリーズより 2020年
大小の球体を組み合わせつつ、全てにグレーのパイル(短繊維)を植毛したのが、立体の「Rhythm」でした。ケースの中にはいくつかの球体がランダムに並んでいて、照明の効果によって斜め下へと影を伸ばしていました。
名和晃平「Rhythm」シリーズより 2020年
一部の球体は上部が切り取られたような形をしていましたが、中にはコロナウイルスならぬ細菌を連想させるものもありました。ちょうどシャーレの中で培養される菌を思わせる面もあるかもしれません。
名和晃平「PixCell Crow#5」 2020年
この他では、カラスとカモシカをモチーフとした「PixCell」のシリーズも展示されていました。
名和晃平「PixCell Reedbuck」 2020年
いずれも今年に制作された作品でしたが、代表的な「PixCell」とともに、新たに公開された「Blue Seed」や「Dune」などを併せ見る展示も良かったかもしれません。
名和晃平「Moment #164 #163 #162」 2020年
これほどの点数の作品を都内で見られる機会は久しぶりではないでしょうか。平面に立体と行き来し、常に変化し続ける名和の現在の表現を知ることができました。
GYRE内アトリウムでの「Silhouette」の展示風景
なお名和は明治神宮の「神宮の杜芸術祝祭」の「天空海闊(てんくうかいかつ)」においても、屋外に「White Deer (Meiji Jingu)」と題した彫刻を展示しています。(12月13日まで)
名和晃平「White Deer (Meiji Jingu)」 2020年 *明治神宮での展示風景
場所は苑内の明治神宮ミュージアムの前で、神宮前のGYRE GALLERYから歩いて行くことが可能です。あわせて観覧するのも良さそうです。
会期中無休です。2021年1月31日まで開催されています。
「名和晃平 Oracle」 GYRE GALLERY
会期:2020年10月23日(金)~2021年1月31日(土)
休廊:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅4番出口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩4分。
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