「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」 千葉県立美術館

千葉県立美術館
「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」 
2020/10/31~2021/1/11



千葉県立美術館で開催中の「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」を見てきました。

幼い頃から千葉市で育ち、20歳を過ぎてから独学で絵を制作したロッカクアヤコは、2006年に村上隆主宰のGEISAIでスカウト賞を受賞してから評価を高め、以降は主に海外を拠点に活動してきました。

そのロッカクの国内の公立美術館としては初の大規模な個展が「魔法の手」で、宇宙戦争をテーマにした連作やフラワーベースなど、約160点の作品が公開されていました。



会場に足を踏み入れた途端、ピンクやブルーなどのネオンカラーの色彩の渦に飲み込まれるような感覚に陥るかもしれません。左右の壁面には「宇宙戦争」や2020年に制作された絵画が並んでいて、中央には「フラワーベース」と題したオブジェが並んでいました。



いずれの作品も花畑のように広がる色彩の中に、大きな瞳を開けた少女が描かれていて、あどけなさを感じつつも、時に口をへの字に閉じながら、どこか強い意志をひめたような姿をしていました。



絵筆を用いず、指先で直接描いた線や色は、あたかも自在に変化するような躍動感があり、少女も花畑も渾然一体となりながら激しいエネルギーを放っていました。



一つ一つの絵画に目を向けると、一見、殴り書きのような色彩の花畑の向こうに、いくつかのスケールの異なったモチーフが組み合わさっていて、複数のイメージがレイヤーのように展開していることが分かりました。



「宇宙戦争」とはロッカクのドローイングに基づき、そのまま形にくり抜かれたキャンバスの作品で、少女たちが宇宙船に乗っては互いに武器を向け合うような光景が描かれていました。



解説に「平等院の飛天を思わせる」とありましたが、確かに武器を楽器に持ち替えれば天女のようで、軽やかに浮遊して舞うように連なっていました。



「フラワーベース」のオブジェでは、木材を轆轤や旋盤で挽き、円形の器を作る挽物の技術が取り込まれていて、江戸末期に箱根の挽物師から技術を継承したという静岡挽物が用いられていました。

ロッカクは2011年に少女を3D化したスカルプチャーを制作して以来、立体に関心を寄せていて、今回は静岡挽物のブランドSeeSeeによるプロダクトと協働しました。



さらに会場の最奥部には「Magic Hand 2020」がそびえ立っていて、一際大きな少女が目を吊り上げつつ両手を上げる様子が描かれていました。

「Magic Hand 2020」はボール紙の上に描かれていましたが、そもそも初期よりロッカクは段ボールを支持体に絵画を制作してきました。2009年の頃から7メートルを超える巨大な作品を取り組むようになったそうです。



この他ではアダチ版画研究所とのコラボレーションによる木版画の作品なども見どころと言えるかもしれません。



実際に使用されたオリジナルの版木とともに摺りの工程も公開されていました。



新型コロナウイルス感染症対策のため、入館時に名前や連絡先などを確認票に記入する必要がありました。確認票は窓口に用意されている他、予め美術館のサイトからもダウンロードすることが可能です。



千葉市美術館で開かれている「宮島達男 クロニクル 1995-2020」(12月13日まで)とあわせて見るのも良いかもしれません。それぞれの最寄駅である葭川公園駅と千葉みなと駅は、千葉都市モノレールで行き来することができます。



現在はポルトガルに拠点を構えているロッカクですが、そもそもこのスケールで作品を見ることからして貴重な機会と言えるかもしれません。想像以上に充実していました。



会場内の撮影が可能でした。(コレクション展は不可。)2021年1月11日まで開催されています。

「魔法の手 ロッカクアヤコ作品展」 千葉県立美術館@chiba_pref_muse
会期:2020年10月31日(土)~2021年1月11日(月・祝)
休館:月曜日。但し月曜が祝日の場合は開館し、翌日休館。年末年始(12月28日〜1月4日)。
時間:9:00~16:30。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般300円、高校・大学生150円、中学生以下、65歳以上無料。
 *20名以上は団体料金(2割引)
 *コレクション展と共通チケット
住所:千葉市中央区中央港1-10-1
交通:JR線・千葉都市モノレール千葉みなと駅より徒歩約10分。
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