『若林奮 森のはずれ』 武蔵野美術大学美術館

武蔵野美術大学美術館
『若林奮 森のはずれ』 
2023/6/1〜8/13



戦後の日本を代表する彫刻家のひとりである若林奮(1936〜2003年)の回顧展が、東京・小平の武蔵野美術大学美術館にて開かれています。

それが『若林奮 森のはずれ』で、会場には『所有・雰囲気・振動―森のはずれ』や『Daisy Ⅰ』をはじめとする代表作のほか、ドローイングや小品など約100点の作品と資料が公開されていました。



まず1階正面のアトリウムで目を引くのが、人の背丈ほどある角柱が10点ほど並び立つ『Daisy Ⅰ』のシリーズでした。これは1990年代以降、若林が自然の精緻な観察をとおして作られたもので、植物のヒナギクに類する名称を表す言葉としてDaisyと名付けられました。

いずれも鋼材の角柱から築かれていて、表面にはかつての工業製品の名残を示すかのような文字や記号が残されていました。



ともかく角柱そのものの重量感が強く感じられて、一見無機的ながらも、黒さびの表面の細かな質感など、思いの外に表情豊かなすがたを見せていました。



これらは人の高さほどあるため、直接上部を見ることは叶いませんでしたが、手前のスロープより見下ろすと胡粉やベンガラといった自然物を原料とした色素の粉末が充填されていることがわかりました。また内部はグリッドに分割されたり、植物の目のような板が隆起しているなど、Daisyのイメージが包み隠されているように思えました。



1階から2階へとあがり、同じくアトリウムに展示された『The First White Core』も存在感があったかもしれません。これは木による白塗りの壇の上に石膏の塊を載せたもので、『Daisy』のシリーズに先立って作られました。



また『The First White Core』の周囲には時に空色を連想させるように色彩に明るい『Sulphur Drawing』が並んでいて、重厚な1階とは異なった軽やかともいえる空間を築いていました。


このほか30年ぶりに展示されたという『所有・雰囲気・振動―森のはずれ』も独特の趣きを見せていたかもしれません。

一連の作品に続き、若林の制作を時間を追って紹介する「資料編」も大変に充実していました。若林は1975年に武蔵野美術大学の助教授に就任し、84年に退任しましたが、まさにこの場所だからこそ実現し得た展覧会ともいえるのではないでしょうか。想像以上に見応えがありました。



アトリウムの展示作品のみ撮影が可能でした。

8月13日まで開催されています。おすすめします。

『若林奮 森のはずれ』 武蔵野美術大学美術館@mau_m_l
会期:2023年6月1日(木)〜8月13日(日)
休館:水曜日。
時間:11:00~19:00
 *土・日曜・祝日は10:00~17:00
料金:無料
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅北口より「国分寺駅北口」4番停留所から西武バス「武蔵野美術大学」、または「小平営業所」行きに乗車、「武蔵野美術大学正門」下車すぐ。
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