◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「釜に糸が絡んだり」その後。

2009-03-22 10:57:50 | 気になる言葉、具体例
                  ナタ豆のことを引きずったりはしない
 なんと、なんと、あのミシンのCMが変わりました。「釜に糸が絡んだり、下糸の調節も要りません」なんてあほなことを言っていた人はもう出ていません。女性が一人でさらさらと商品の説明をしています。もちろん、セリフも変わりました! 今度は「釜に糸が絡んだり、下糸を引き上げるわずらわしさもありません」です! だめだ こりゃ( ̄д ̄)!!!
 え? これのどこがいけないんだ、って? そうですね、これでいいような・・・って、違う、違う、ほとんどの人が忘れているようですが、「たり」の基本は「行ったり来たり」のように繰り返すことです。釜に糸が絡むこと、下糸を引き上げないといけないこと、これを並べて言うのですから、「釜に糸が絡んだり、下糸を引き上げないといけなかったり、こうしたわずらわしさはありません」となります。
 え? 長すぎるって? 確かに長いですね、CMのセリフとしては使いにくいかな。それに、釜に糸が絡むこと、下糸を引き上げないといけないこと、この二つは、わずらわしさのレベルが違いますよね。下糸を引き上げるのは単なる操作であって、慣れてしまえばどうということはないのです。でも、釜に糸が絡むこと、これはトラブルですから頭に来ます。私などは、これのせいでミシンかけが嫌いになったのですから。
 え? じゃぁ何て言ったらいいんだ、って? 私なら「釜に糸が絡んだりせず、下糸を引き上げるわずらわしさもありません」と言いますよ。これは、不快なトラブルの一例として釜に糸が絡むことを挙げる「たり」であって、並べる「たり」ではありません。こういう言い方なら「~たり~たり」でなくてもいいのです。
 え? 「釜に糸が絡んだり、下糸を引き上げるわずらわしさもありません」もそうじゃないのかって? 違いますったらぁ。「釜に糸が絡んだりせず」ですよ、まず、釜に糸が絡むということを否定し、さらに、下糸を引き上げる手間もないと続けるわけです。「絡んだりせず」と否定しなければ「絡んだりする」という意味になりますよね、そして、並べる「~たり~たり」ではない、一例を挙げる「たり」でもない、中途半端な表現になります。
 え? なんで一例を挙げる「たり」じゃないのかって? だって、釜に糸が絡む、下糸を引き上げる、二つじゃないですか。釜に糸が絡むことをわずらわしいことの一例として挙げるなら「釜に糸が絡んだりするわずらわしさはありません」です。下糸を引き上げる操作については、その後、「それに、下糸を引き上げる手間もありませんよ~」とでも言ってください。
 どうですか、お分かりいただけましたでしょうか(⌒・⌒)?
コメント
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