◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「息をふきかえらせた」って?

2009-10-21 20:37:40 | 気になる言葉、具体例
                             引っ繰り返らせた
 「息をふきかえらせた」というのはNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で聞いたナレーションです。原稿にそう書いてあったのでしょうけれど、原稿をぶっつけ本番で読んで録音して、やり直しは絶対にだめ、なんですか? 原稿を読んで報酬をもらっているナレーター、プロフェッショナルなのに、変な日本語をそのまま読んで、それでお金もらっていいの? いや、よくない( ̄_ ̄)
 「息を吹き返す」は「生き返る」という意味ですが、「吹き返す」は他動詞であり、「かえる」ではありません。「生き返る」は自動詞で、「かえす」ではありません。「生き返る」の使役表現は「生き返らせる」ですが、「息を吹き返す」は「ふきかえす」であり、「ふきかえる」ではありません。放送業界の人たちはこんな簡単なことが区別できていないのですからあきれます。原稿を書いたのはだれなんだ? もう書くな( ̄д ̄)! その影響の大きさを少しは考えてほしいですね、まったくもぉ~( ̄ ̄)ブチブチ。
 「吹き返す」は五段活用ですから、吹き返さない、吹き返し、吹き返す、吹き返すとき、吹き返せば、吹き返せ、となります。使役の助動詞「せる」「させる」のうち、五段活用に付くのは「せる」です。未然形に付くので「吹き返さ」に「せる」で「吹き返さ・せる」ですから、「息を吹き返させた」が正しい形です。
 ちなみに、「ふきかえる」は、外国映画のセリフを日本語に「吹き替える」、茅葺き屋根を「葺き替える」、意味も漢字も違います。この「吹き替える」を使役表現にするとどうなるかというと、下一段活用なので使役の助動詞は「させる」、未然形に付くので「吹き替え・させる」です。このごろは、本職の声優よりもタレントや芸人に吹き替えさせることが多いような・・・しまいにはど素人にまで・・・いやはや。
 音だけ聞くとどちらも「ふきかえさせる」ですが、「吹き返す」は「吹き返さ・せる」で、「吹き替える」は「吹き替え・させる」なのです。違うでしょう? ま、どちらにしても「ふきかえさせる」ですから、「息をふきかえらせた」がいかに幼稚でふざけた誤りであるか、分かるでしょ~~~( ̄Λ ̄)プンプン。

 ※25日(日)と28日(水)の更新は休みます。
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「ダークホースとは呼ばせられないように」って?

2009-10-18 09:38:19 | 気になる言葉、具体例
                              あなう・・・?
 まず、「ダークホース」の意味ですが、競馬でいうと穴馬、実力は分からないけれど番狂わせで勝つ馬、人でいうと、隠れた才能を持った競争相手、不気味な実力を持つ相手、ということで、要は、あまり知られていない、実力の程はよく分からない、確かに実力があると広く認められているわけではないということですね。
 「ダークホースとは呼ばせられないように」と言った人は、自分がダークホースだと思われていることが不満で、もっと頑張って実力を認められたい、もうダークホースとは呼ばせないぞ、という闘志を持っているようでした。だったら「もうダークホースとは呼ばせない」と言えばいいのに、途中から「呼ばれないように」というトーンダウンした言い方に変えた・・・のかな? それでも「ら」が余計ですね、使役だか受身だか可能だか、訳が分からなくなっています。
 「呼ばせないように」は使役表現、「呼ばれないように」は受身表現ですが、ミックスで「呼ばせられないように」なんてありえません。「呼ばせることができない」という意味の「呼ばせられない」はありえますが、「ダークホースとは・・・ように」という中では成立しません。ただの言い間違いではないのですよ、このような例はたくさんあるのですから。どうやら、「呼ばせる」「呼ばれる」「呼ばせられる」、「呼ばせない」「呼ばれない」「呼ばせられない」、この区別がしっかりできていないようです。
 文法がきちんと理解できていないということはあるでしょうけれど、そもそも「呼ばせないように」と「呼ばれないように」の決定的な違いは何だと思いますか。私は‘決意の程’だと思います。初めは「呼ばせない」と言うつもりだったけれど、大見得を切って結果が出なかったら恥ずかしい、途中で急にそう思ってそれがそのまま言葉に出たのではないでしょうか。スポーツ選手がよく言うでしょう、「頑張りたいと思います」って。
 前回、今の日本語は主体の気持ちと言葉が乖離(かいり)しているような・・・と書きましたが、気持ちそのものが定まっていない、自分自身、分かっていない、あるいは、世間の受け取り方が気になる、そういう迷いがそのまま表れているのではないかという気もしますね。口から出た言葉はそのまま人々の耳に入りますから、ふだんから正しい言葉を頭の中でしっかり整理しておきたいものです。
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「あまり意味を感じられない」って?

2009-10-14 21:55:48 | 気になる言葉、具体例
                             松茸の味ですやん
 「始まる」は自動詞、「始める」は他動詞、打消表現は「始まらない」「始めない」です。では、可能表現は? 「始める」は「始められる」「始められない」ですが、「始まる」は? 「始まる」は「始まる」としか言えませんね、決して「始まれられない」ではありませんよぉ。もちろん「始まれる」も「始まれない」もなし!
 2008年1月15日と19日に「終わる」と「終える」について書きましたが、最近また「式が終えたら」というのを2~3度続けて聞き、なぜ「式が終わる」と「式を終える」の区別ができないのかと・・・本当に不思議です。これも、「終える」は「終えられる」「終えられない」ですが、「終わる」は「終わる」ですね。
 もちろん、「以上で説明を終わります」「これで授業を終わります」など、「終える」と同じ意味で「終わる」と言いますから、「式を終わる」もあり。「終われる」はあまり聞きませんが、「終われない」は、「このままでは終われない」という言い方をすることがありますね。つまり、主体の意思や能力、主体の行為ということがはっきりしている場合に可能表現ができる、そうでなければ可能表現にはしない、ということになります。
 自発と可能だってそうです。自発は、可能とは違い、自然にそうなるということであり、主体がそうしようと思ってするわけではないのですから「~を」に続くことはなく、「虫の音に秋の訪れが感じられる」「金木犀の香りが漂い、秋が深まってきているように思われた」といった表現になります。
 天気予報で「秋を感じられそうです」というのを聞きましたが、これも「秋が感じられそうです」でしょう。例えば、「秋を満喫するぞ!」というツアーを企画するなら、紅葉、ススキ、月、露天風呂、松茸、秋刀魚、栗、などなど、秋といえばこれというものを取り揃えて「秋を感じられそうです」もなくはないですが、天気予報のお姉さんは、別に秋を感じよう感じようと焦っているわけではないですよね。
 「あまり意味を感じられない」も、本当は「あまり意味が感じられない」ですね。日本語の形として「あまり意味を感じられない」もありえますが、少なくともそのときは、可能ではなく、「あまり意味のないことのように私には思われた」というつもりで言っていましたから、「意味を」ではなく「意味が」です。
 何ですかねぇ、今の日本語は、主体の気持ちと言葉が乖離(かいり)しているような気がしませんか?
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「何も始まれられない」って?

2009-10-11 10:33:17 | 言葉についてあれこれ
                                  倒れた
 情報番組には、コメンテーターとして、いわゆる文化人ですね、学者、評論家、作家、いろいろな人が出てきます。そういう人が何かのコメントの中で「何も始まれられないということがありますね」と言ったのですが、「何も始まらない」でもなく、「何も始められない」でもなく、( ̄~ ̄)ウ~ン、そのどちらも自分の気持ちを表現するのにピッタリではなかったのでしょうかねぇ。
 自動詞、他動詞、受身、尊敬、使役、可能、自発、サ行とラ行、これらの区別がだんだんあいまいに、分かりにくくなってきているような気がします。助動詞の形や接続ルールが分かっていないことに加え、日本人なら当たり前に使えるはずの助詞が適切でないことも原因として大きいと思います。
 例えば、「あまり意味を感じられない」と聞いて、何だかもやもやしませんか? 「あまり意味が感じられない」なら自発でしょうけれど、「意味を」ですから「あまり意味を感じることができない」という可能の意味で言っているのでしょうか。「あまり意味を感じられない」なんて聞き流しちゃっていいのでしょうか? いや、よくない!
 こういうどっちつかずの言い方が耳に入ってきて、「何も始まれられない」などというおかしな言い方を聞き、さらに、「ダークホースとは呼ばせられないように」なんて言った人までいて、ついには「息をふきかえらせた」という意味不明のナレーション(NHKの「プロフェッショナル」にて)が聞こえてきて、日本人にとって日本語って何なんだろうと・・・( ̄ ̄)・・・あ! 「全部覚えさせるヤツがあるんですよ」と言っているところで「全部覚えされるヤツ」という意味不明のテロップが・・・ドタッ←倒れた。
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「書かれようと思ったきっかけ」って?

2009-10-07 20:56:11 | めちゃくちゃな敬語
                           ハムやん王のブランチ
 久しぶりに「王様のブランチ」を見たら、若い女の子が小説家へのインタビューで「○○を書かれようと思ったきっかけって何ですか」なんて言っていました。それでも許される程度の番組であることを考えると、ま、しょうがないかな、と思わないでもないのですが、ここに一つ大事な敬語のポイントがあるので、いい機会ですからこれを例に挙げて書きます。あ! いい年の、しかも有識者といわれる人が「酪農を40年やられてきて」なんてばかなことを言ってる!
 先日の「高校生8人が感染されていることが確認されました」も、ふだん、敬語というと「れる・られる」で全て済ませてしまっている、とりあえず「れる・られる」、何も考えない、考えることをやめてしまって「れる・られる」、相手がだれであろうと安直に「れる・られる」、その結果こうなってしまったのではないかと思うのですが、・・・やがてみんなこうなってしまうのでしょうか( ̄_ ̄)?
 尊敬表現の基本は「ご(お)~になる」ですから、「書く」なら「お書きになる」となりますが、「書こうと思った」ですから、こういうときは後ろの「思った」を尊敬表現にします。よって、「○○を書こうとお思いになったきっかけは何ですか」が正しいわけですが、まぁ、ねっ、「王様のブランチ」だからもうちょっと軽めに、というのなら、「○○を書こうと思われたきっかけは何ですか」ですね。
 若い女の子の場合、キャラからいくと結局「れる・られる」になるのですが、「書かれようと思った」はいけません。それこそ何も考えずに先に出てきた「書こう」だけをさっさと「れる・られる」の形にしてもだめなのです。「書こう」「きっかけ」ではなく、「思った」「きっかけ」ですからね、「思った」を尊敬表現にしないでどうするんですか? それぐらいは年長者が指導してもいいんじゃないの?
 ところで、病院でよく聞くセリフ、「どうされました?」も、ちょっと前(だいぶ前?)は「どうなさいました?」が普通じゃありませんでしたか? 患者→患者さん→患者様という流れとは逆ですね。ま、それはいいとして、「どうなさいました?」は、敬意の度合いとか何とかいうよりも、響きが柔らかくてすてきじゃないですか?
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「高校生8人が感染されている」って?

2009-10-04 08:56:50 | 気になる言葉、具体例
                               うつるんです
 以前、新型インフルエンザに関する報道で「高校生8人が感染されていることが確認されました」というのがあったのですが、この「感染されている」って何でしょうね。「ウイルスは少ない数でも感染できるようになる」だの、「人から人へと感染できるようになった場合」だの、「とてもウイルスが感染するようには見えませんからね」だの、訳の分からない言い方があれこれ聞こえてきますから、ひょっとして受身かとも思いましたが、やっぱり違いますよね。
 もしもこれが受身表現だとしたら、言っている本人がそのつもりだったらすっごく怖い~(°°)。感染というより「汚染」、ウイルスが「伝染した」というより、故意に、無理やり「うつされた」ように聞こえます。冗談はさておき、これが敬語だとしたら、以前挙げた「若者のかた」と同じような違和感がありますね。「高校生8人が感染していることが確認されました」と言ってくださいよ。
 「感染できる」については7月19日にちょっと書きましたが、「とてもウイルスが感染するようには見えませんからね」というのはNHKの番組で聞いたナレーションです。え? これのどこがおかしいんだって? 正しくは「とてもウイルスに感染するようには見えませんからね」です。感染するのは人ですよ、伝染病にかかる、病原体が体内に入ってくる、という意味ですよ。正しくは、「ウイルスが」ではなく「ウイルスに」です。
 こんなことを言うナレーターがいるのですから、そして、その原稿を書いた人がいるのですから、受身表現のつもりで「感染される」なんて言う人がいても不思議じゃないと思うわけで、それほど単語の意味があやふやになっているということです。ウイルスが「感染する」「感染できる」なんて言ったら、「体内に入り込む」というウイルス主体の意味になってしまうじゃないですくわぁーっo(`д´)o
 いやはや、ここのところよく降りてくる「ちゃんとしゃべれ!」の神様、ありがとうございま~す。昨日、「名医にQ」を見ていたら、新型インフルエンザの概要を説明したリポーターが「これらが合わさって人に感染できるタイプになったんです」なんて言いましたよ。すでに「感染できる」が広まっているようですが、古屋アナはさすがに「感染させる」と言っていましたから、後で教えてやって!!!
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