◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「エコノミー症候群」って?

2009-02-25 20:29:04 | 気になる言葉、具体例
                    ほんと、エコノミカルやわぁ
 ネットで検索するといっぱい出てきますね、「エコノミー症候群」、小倉さんも言いましたよ、はっきりと「エコノミー症候群」と。でも、「エコノミー症候群」ではなく「エコノミークラス症候群」です。たとえ「エコノミー症候群」で通っているとしても、名称の由来を考えると不適切な省略であり、ましてや、キャスターがこんなふうに言うべきではありません。
 静脈血栓塞栓症、本当はこういう名称で、塞(そく)は塞がる(ふさがる)、血栓(けっせん)は血の塊。飛行機に乗り、長時間同じ姿勢で座っていて発症することが多いのですが、ほかにも、脱水、手術による血流鬱滞、止血剤を使ったりもしますからね、それで血栓が生じ、肺へ流れていって肺動脈が詰まると呼吸困難になったり、全身の血液循環に支障が出たり、う~む、怖いですよ。
 そういえば、2004年の新潟県中越地震のとき、避難所やテントではなく、車の中で避難生活をしていた人たちの中に、トイレに行きたくないから水分を控えて脱水気味になるという要因も加わって、エコノミークラス症候群の疑いで死亡するケースがありましたね。狭いエコノミークラス席で長時間じーっとしていると発病する確率が高いようだというわけで「エコノミークラス症候群」と呼ばれるのですが、飛行機の中はとても乾燥していて、長時間同じ姿勢で過ごせばどの席だって同じことですから、厳密にいえば「エコノミークラス症候群」もよくないのかもしれません。
 「エコノミー」の意味は、経済、節約、「エコノミークラス」の意味は、航空機における一般旅客席。例えば、「連休は海外旅行だって? 飛行機はファーストクラス?」と聞かれて「いやいや、エコノミーですよ」と答える、こういう会話は成立しますが、だからといって「エコノミークラス症候群」を縮めて「エコノミー症候群」と言っていいということにはなりません。私は、エコノミー症候群というと、エコノミックアニマルがお金のことでつまずいて具合が悪くなるとか、極端な節約で変なことになっちゃうとか、そんなことを想像します。
 ま、そのうちもっといい言葉が出てくるでしょう、すでに出ているのなら、それが定着するように、そうした立場の人が頑張ってくださることを祈ります。「おれおれ詐欺」が「振り込め詐欺」になったようにね。でも、このごろは振り込み以外にさまざまな手段が使われるようになってきて、次は何という名称になるか・・・いやはや、困ったものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「○○が何に左右するかというと」って?

2009-02-22 10:42:35 | 言葉についてあれこれ
                      エコノミカルやねぇ
 朝の情報番組で司会をしているベテランキャスターの小倉さん、この人の日本語はあまりちゃんとしていないと先日書きましたが、やはりどうも変です。オープニングトークで「男性ホルモンが何に左右するかというと」と聞こえたのでおかしいと思い、ちゃんと画面を見ながら話を聞きました。
 「男性ホルモンが」だから「何を左右するか」でないとおかしいのに「何に」と言ったので、「左右」ではなく「作用」だろう、私の聞き間違いだろうか? と思ったのですが、その後も、「作用」でないといけないところで「左右」とはっきり言いました。あれぇ~、やっぱり「左右」だ、どういうこと? 「左右」と3回も言ったのですから、聞き間違いではありません。どうしちゃったの、小倉さん?!
 「代表選手になれずに」「どの程度の関係にあったかどうか」「どれだけ分かっているのかどうか」「エコノミー症候群」「花粉にいいお米」など、明らかに誤った日本語をときどき言いますからね、それはそのときだけの言い間違いではなく、いつもそう言っていて、誤りに気づいていないわけです。スーパースプレッダーの中でもかなり強力な存在ですから要注意ですよ。
 今からでも変な日本語に気づいて直してくれるといいのですが、ま、気づかないでしょう。「それ、変ですよ」と小倉さんに言える人なんか周りにはいないでしょうから。笠井アナなんて、もっともっと日本語ぼろぼろですしね。笠井アナ、私はむしろ好きなんですよ、何といってもあの明るい性格がいい! どうか正しい日本語で話せるりっぱなアナウンサーになってくだされぇ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

変な「~ずに」は文字数制限のせい?

2009-02-18 20:40:24 | 言葉についてあれこれ
                       ハムやん座!
 朝の星占いで不思議に思うことがありました。ナレーションが「~ず・・・」なのに画面が「~ずに・・・」で意味が変わってしまい、作業者の力不足、かと思えば、今度はナレーションが「~ずに・・・」なのに画面は「~ず・・・」、あれ? 何だよ、何だよ、どうなってるんだよぉ~( ̄o ̄)?
 これはおかしい、何かある! そう思い、ちょうど星占いをやっている時間に朝ご飯を食べていますから、星占いの内容そっちのけでしばらく注意して見てみましたよ。goodさんとbadさんを除き、一つの画面に五つの星座を並べ、一つの星座につき10文字2行で20文字もしくは11文字2行で22文字、上の行と下の行の文字数を同じにしてきっちり埋める、空白は作らない、というルールがあるようです。
 例えば、ナレーションが「作業が進まずいらいら」でも、上の行が11文字だったら下の行も11文字にしないといけないので「に」を入れて「作業が進まずにイライラ」と書く、という具合です。なるほど、そういうことかぁ~、このルールはよほど大事だと見えて、入力作業者は、日本語としての正誤よりも文字数を合わせることを優先しているのでした~~~( ̄д ̄)!
 「~ずに」と「~ず」の違いが分からず、この記事を読んでもいま一つピンと来ないかた、もしいらっしゃいましたら、2007年11月14日の「車輪が下りずに胴体着陸」って? というタイトルの記事を読んでください。
 あ・・・、優先とか何とかいうより、そもそもナレーションをやっている人も入力作業者も「~ずに」と「~ず」の違いを分かっていない、おかしいということに気づいていないのかもしれませんね。変な「~ずに」をここまで広めたのはキャスターの小倉さんだと思うのですが、放送業界はもう感染者だらけ、一般人にもすでに感染は広がっています。変だと気づく人は果たしてどれぐらいいるか・・・( ̄ ̄)?
 これも「~ていなく」のまん延と関係あるのですよ。「~ていなく」が変、「~ずに」が変、というふうに個別のことなのではなく、関連性があるのです。一つおかしくなるとみんなぞろぞろとおかしくなる、だから何事も看過できないのですよ。一つ一つは小さなことでも、それがみんな連鎖していくから恐ろしいのです。そこんところを分かってくだされぇーっ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

誤解を生む「れる・られる」。

2009-02-15 09:37:20 | めちゃくちゃな敬語
                      注目されてますよ
 敬語というと「れる・られる」、これしか知らない、何でも「れる・られる」で済ませてしまう人って本当に多いですね。しゃべるプロであるはずのアナウンサーですらそうなのですから、何とも情けないじゃありませんか。
 さて、ある国会議員が「皆さん大変注目されておられるし」と言っていたのですが、どうですか? 「おられるし」があるので、話を最初から聞いていたのでなければ「注目されて」が受身表現なのか尊敬表現のつもりなのかはっきりしませんね。私も、ずっと聞いていたわけではないのですぐには分かりませんでした。
 そもそも、ニュースでちょっと出るぐらいなら、発言のある部分だけを放送するというのは普通ですから、編集によって事実とは異なってしまうなんてこともありえます。それでなくても、人の話を、背景や経緯を考慮せず、話の流れから切り離し、ある部分だけを取り出して文句を言う人がいますからね。「知っていること」の後ろには「知らないこと」が10倍も100倍もあるのですよ、ね。
 今、日本人が話している日本語はとても誤解を生みやすい状態になっています。読み方、発音、アクセント、言葉の区切り方、主語、述語、それをつなぐ助詞、自動詞、他動詞、敬語、修飾語、これらが正しければ意図が明確に伝わるのですが、間違っているのでちゃんと伝わりません。分かっている人には分かるのでしょうけれども、用語や話に登場する人物の関係など、細かい事情が分かっていないと理解できないのですから、何とも面倒なことです。
 「この女性が持ち寄った花瓶」と言うからほかにもあるのかと思ったら1個だけ、つまり、「この女性が持ち込んだ花瓶」が正解。「冷ややかな目で見ようと思って見ていたんですけど」なんて言うから、けんかでもしているのかな、また随分意地の悪いことだと思ったんですけど、その後もしばらく聞いていて分かりましたよ、この人はただ単に「冷静に見ようと思って」と言ったつもりなのです。
 さてさて、「皆さん大変注目されておられるし」ですが、「れる・られる」の繰り返しは格好悪いですよ。議員さんの敬語は分かりにくいうえにくどい( ̄д ̄)! 「おっしゃられたことはテープにとられておられます」というのを国会中継で聞いたことがありますが、主語を言わなかったので、これを文章化するとしたら、う~ん、困りますねぇ、確実なのは「発言は録音された」ということだけですから、どう修正したらいいんだか・・・( ̄_ ̄)?
 「注目されて」が受身表現なら「皆さん大変注目されてらっしゃるし」ですが、尊敬表現のつもりなら、「皆さん大変注目してらっしゃいますし」とか、「皆さん大変注目なさってますし」とか、スマートな言い方は幾つもありますよ。はい、皆さん、言ってみてください。かえってこのほうが言いやすいでしょ(⌒・⌒)?!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

基本も知らずに「難しい」と言うなかれ。

2009-02-11 20:15:38 | めちゃくちゃな敬語
                        チュー坊!
 『ちゃんとしゃべれ!』で整理したように敬語の基本はとても簡単ですが、「○○をやられる」が尊敬表現とは言えないように、敬語にできる言葉、できない言葉、各表現に合う言葉、合わない言葉があります。スマートに敬語を話すにはそれを選ぶセンスが必要なのですが、多くの人は、センスどころか基本すら知らないで「敬語は難しい」と言っているのですから・・・残念! これではセンスを磨こうにも磨きようがありません。
 正誤も考えず、どこかで聞いた敬語っぽいしゃべり方をまねてごまかす、ほとんどの人がそういう状態なのでは? 実際、放送業界の人たちがそうですから。そういえば、○林アナ、「チューボーですよ!」にも出ているのですね、先日○林アナのことを書いたのでちょっと気になって、ゲストの経歴を紹介する部分を聞いてみたのですが、全部「れる・られる」ですよ、まさに中坊レベル(⌒ε⌒)。
 目上の人に向かって「しばらくゆっくりしてください」と言いたいとき、どう表現しますか? 「しばらくゆっくりされてください」というのを聞いたことがあるのですが、これしか思い浮かばなかった人は基本を勉強してくださいね。「する」の尊敬語は「なさる」ですよ(⌒・⌒)。
 じっくり考えて文章を書くのとは違い、話すときは瞬間的に言葉を選んで組み立てないといけませんから、基本を知らなければ正しい敬語で話すなんて不可能です。大体、ニュースやナレーション、ドラマや映画のセリフなど、原稿があっても変ですよね。ということは、言葉を選んで組み立てて、書いて、見直して・・・それでも間違っているのです。それはそうですね、知らなければ幾ら考えても正しい敬語は出てきやしません。当然の結果です。
 まず基本、これは簡単にクリアできますからさっさと次のステップへ。敬語らしい敬語を話すには言葉の意味をちゃんと理解していなければいけません。ちゃんと、というのは、善悪とか、品がいいとか悪いとか、社会的に見てどうだとか、いろいろなことをひっくるめて、ですよ。
 部屋に入ってきた男が刃物でいきなりそこにいた人を刺すという事件で「加害者の方が入ってきて」なんて書いたテロップ入力作業者さん、犯人に「方」はないでしょ、「方」はぁ( ̄ ̄)。え? 目撃者の言葉をそのまま書いたんじゃないのかって? いいえ、目撃者は「加害者の人が入ってきて」と言いましたよ。これだって、なぜ「犯人が入ってきて」じゃないのかなぁ~?
 30~40年も生きていれば、さまざまな言葉に関する知識を生活の中で吸収して大体のことは分かってくるはずですが、今やそれすら怪しくなり、敬語に関しては、残念ながら、普通に生活しているだけでは正しい知識を吸収できません(←言い切ったね^ー^)。つまり、ふだん耳に入ってくる敬語が正しいとは限らないということです。私の好きな「相棒」のセリフは敬語が多く、概ね正しいのですが、明らかな誤りもときどきありますからね、油断ならないですよ。
 そもそも敬語で表現すべき事柄なのか、スムーズなコミュニケーションのためなのか、人を欺くためなのか、はやりの型どおりにしゃべっているだけなのか、尊敬や謙譲の気持ちが本当にあるのか、どういう気持ちを表す言い方なのかを分かって言っているのか、こういう大事な問題があることを含めて敬語というものをとらえることが大切です。なにしろ言葉は心を映し出しますからね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

The Last Resort 7:25

2009-02-08 09:25:09 | 言葉についてあれこれ
                       stairway to heaven
 今日のタイトル、The Last Resort 7:25、これだけでじぃ~んと来るかた、もしかしたら、いらっしゃるでしょうか。「The Last Resort(ザ・ラスト・リゾート)」、The Eagles(イーグルス)の名曲、7分25秒。日本で爆発的にヒットしたのは「Hotel California」ですが、私はそれと同じぐらい、いや、だいぶこっちのほうが上かな、大好きなのですよ。
 高校生のときでしたねぇ、「リゾート」というと世間一般で意味するところのリゾートしか知らなかったのですが、この「The Last Resort」は「最後の砦」とか「最後の楽園」とか、「resort」は「リゾート」ではなく「頼みの綱」という意味で、そのことを知ってから「Hotel California」そっちのけで何度聴いたことか。当時はLPですよ、LP!
 久しぶりにCDで聴いてしみじみ~~~というか、悲しいというか、脳の活動が止まるっちゅうねん、とても複雑な気分になりました。ん? CDにはB面がないのね、あ、違うか、A面がないのか、ん~~~、だからCDなのね、なんちゃって(^ー^)。あ~~~手が止まってしまう~~~( ̄・ ̄)~~~いっそのこと歌詞カードを見て歌おうと思ったら、ない、ない、あ~~~直輸入盤だったぁ~~~。
 あ、そうだ、ほかにもこういう例があるのを思い出しました。「こういう」というのは、「resort」にはいろいろな意味があるけれど、「リゾート」は一つのイメージ、避暑地とか、温泉地とか、ぐっと意味が狭まるということです。
 皆さんは、「パッション」というと何をイメージしますか? パッションフルーツ、見ぃ~つめてパッション♪、恋心、情熱・・・でしょうか。「passion」は、熱情、怒り、熱中、熱望、苦痛、受難、特に「the Passion」で、キリストの受難、十字架上の苦しみ、または最後の晩餐から十字架上の死に至るまで、という意味になります。面白いですねぇ、熱情、怒りと来て受難ですよ、実に興味深い!
 リゾート、パッション、同じ言葉を聞いても、「resort」「passion」を知っている人は受け取り方が違ってきますね。もちろん、単語そのものより、文脈、背景などから意味を理解していれば大きな誤解は生じないでしょうけれど、こんな例もあるのですよ、タックスヘブン、聞いたことあるでしょう? タックス(tax)は税金、ヘブン(heaven)は天国ですね。
 「あ~、あるある、タックスヘブンね」と思ったかたは要注意! 正しくは「タックスヘイブン」、ヘイブン(haven)は港や避難所のことで、タックスヘイブンは租税回避地という意味です。それに、日本人はとにかく「天国」が好きですが、安楽や最高の幸福といった意味ならパラダイス、「楽園」ですよ。
 しかも、新約聖書のルカによる福音書、第18章25節、「富んでいる者が神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい」とイエス・キリストも言っているように、節税を必死で考えなければならないほどお金に縁のある人はそう簡単には天国へは行けないのですから、それなりに覚悟してください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「~ていなく」について補足します。

2009-02-04 20:42:52 | めちゃくちゃな敬語
                     見えなく・・・はない
 「~ております」は謙譲語なので「~ておられる」という尊敬表現に違和感を持つ人がいるという話をNHKの番組でしていた、それ以来、「~ておられる」は誤用だ、「~ており」「~ておらず」も変だというふうに流れていき、あっという間に「~ていて」「~ていなく」に移っていった、ということを1月28日に書いたのですが、今日は「~ていなく」について補足説明をします。
 報道などで、本来「~ており」と言うところで「~ていて」と言うのはちょっと軟らかすぎないかなぁという感じはしますが、文法が間違っているわけではありません。ところが、「~ていなく」は日本語として成立していないのです。これを間抜けだと感じない人は要注意ですよ( ̄д ̄)! 例えば、「架線は切断されていなく」は、正しくは「架線は切断されておらず」ですね。
 例えば、「身支度をして出発した」を硬めに言うと「身支度をし、出発した」となり、接続助詞「て」を省くことになりますが、これと同じ感覚なのか、あるいは、「間違いではなく、正しい」の「なく」と混同しているのか。「身支度をし」の「し」は「する」という動詞(自立語)の連用形であり、「出発した」に連なっているわけで、「て」がなくても十分これで成立しています。「間違いではなく」の「なく」は形容詞(自立語)の連用形で、「正しい」に連なって成立しています。でも、助詞と助動詞は常に自立語の下に付いて文節を構成する付属語であり、その連用形を自立語の連用形と混同してはいけません。
 「切断されていない」の「ない」は打消の助動詞で、その連用形が「なく」ですが、「見えなくなる」「見えなくて」のように他の活用語や助詞に連なるから連用形と言うのであって、「なる」や「て」を省くことはできないのです。「なる」があるから結果が分かるわけで、「見えなく」だけだと分かりません。「て」が前後の意味上の関係を示しているのであり、これを省くと後が続かなくて意味不明になります。「切断されていなくて」まで言って初めて成立するのです。
 助動詞でも、「殴られ、蹴られ、転倒した」のような中止形というのがあって、それは耳に慣れた言い方ですが、「切断されていなく」はどうですか? 同じ打消の助動詞でも「ぬ」の連用形「ず」の中止形はずーっと使われており、「身動きもせず、ただ座っていた」「切断されておらず、大丈夫だと思った」というのは当たり前の言い方です。これがあったから「~ていなく」とは言わなかったのでしょう。「身動きもしなく、ただ座っていた」とはだれも言いませんね。
 「~ており」「~ておらず」は「~ていて」「~ていなくて」より硬めの表現というだけで、間違ってはいないのです。メディアもちょっと前までは「~ており」と言っていたのに、今は「~ていて」と言っていますよね。でも、さすがに「~ていなくて」とは言いにくいと見えて「~ておらず」は残っていたのですが、「~ていなく」が広まり、一般の人の文章でも見ることがあります。メディアは、正誤はさほど気にしない、一斉に同じような流れになる、という性質がありますからね、困ったものです。
 芸能人が変な言葉を乱発するのは単に流行のキーワードを盛り込みたいだけ。メディアは、正誤をじっくり考える暇がない、たとえ誤りであってもみんなで言えば怖くない、いつもそういう姿勢です。一般の人は、強制的に慣らされ、いつしか変だと思わなくなるのでしょうけれども、そうやってスーパースプレッダーが日本語をどんどん変えていってもいいのでしょうか? そんなものは変化として認める気にはなれませんよぉ~。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

敬語の難しさって?

2009-02-01 09:44:26 | 電子書籍(でじたる書房)
                       電子書籍だよん
 私は「○○をやられる」が尊敬表現であるとは思っていません。だれが何と言おうと認めませんよぉ。『ちゃんとしゃべれ!』で整理したように敬語の基本はとても簡単ですが、敬語にふさわしい言葉、敬語にならない言葉、それぞれの敬語の形に合う言葉、合わない言葉があるのです。それを選ぶセンスはやはり時間をかけて磨かなければならず、難しいのはそこなのです。
 必要な言葉を知っている、合うか合わないか区別できる、衣装選びにたとえれば服や小物類とそれをコーディネートするセンスですから、パーティーならこう、仕事ならこう、遊びならこう、そういう基本を知らないのは問題外、基本を知らなければセンスを磨こうにも磨きようがありません。世の中でいわれる「敬語は難しい」というのと私の言う「難しい」とは、ポイントがちょっと違います。敬語の分類だの形だの、そんなものは難しくも何ともありません。決まりきったことですから、分かりやすく整理して書いてあるものを読めばいい、それだけのことです(⌒・⌒)v。
 最初に敬語の基本をきちんと整理してしまわないと後が大変なのですよね。昔は、家庭で、あるいは学校で、しつけの一環として敬語教育も自然に行われていたのでしょうか、古い映画を見ると家でも敬語ですね。私は簡単な謙譲表現を習っただけですから、「お父様は承知してらしたのね」みたいなセリフには正直いってびっくりです。学校で敬語を習ったという記憶はかすかにありますが、ふだん使わないからすぐに忘れました(^^;)エヘヘ。
 その割にこのブログで敬語について語っているじゃないかって? 何のことはない、一生懸命自分で調べて考えて『ちゃんとしゃべれ!』の中で整理したからこそ、あれは正しい、あれは間違っている、そういう判断ができるようになったのです。「判断ができる」ですよ、「すらすら話せる」とは、まだ言えません。10年近くほとんど他人と会話しない生活で、話を聞くだけでしたからね。いや、今思えば、それがかえってよかったのかも。正誤を考える暇もなく敬語っぽいしゃべり方でごまかす、それがすっかり脳にしみ込んでしまう、そういった事態は避けられたのですから。
 今は他人と会話する機会が増え、なるべく敬語らしい敬語で会話するように意識していますが、幸い、敬語の形はもう分かっていますから、その点は楽です。あとは実践あるのみ! じっくり考えて文章を書くのとは違い、会話では瞬間的に言葉を選んで組み立てないといけませんから、正しい形ぐらいは知っておきたいですよね。基本を知らなければ要らぬ苦労をします。
 でもね、敬語を話すのに最も必要なのは何か・・・、当たり前ですが、やはり敬意です。そして、だらっとしていたら敬語は出てこないわけで、気持ちがしゃんとしていないといけないのですよ。世の中には、気持ちはしゃんとしているのに、正しい敬語の形を知らないがためにみっともない言葉遣いになっている人が大勢います。これは何とも残念至極。日本人なんだから今更・・・なんて思わないで基本を勉強しましょう。あ、そうだ、放送で正しい敬語を聞けることは少ないですから、お手本にしてはだめですよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする