◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「ご存じそうなかた」って?

2016-03-13 11:43:03 | 気になる言葉、具体例
                                  知らなそうだ

 「ご存じ」は名詞で、「知っていること」の尊敬語。「知ること」ではなく「知っていること」というのがポイントです。動詞は、事物の動作・行為や存在を表すわけで、「知る」はそうですが、「知っている」は少し違いますね。もし、「ご存じ」が動詞だとしたら活用は? 終止形はウ段だから、「ご存じ」は連用形? では、終止形は??? というわけで、「ご存じ」はやはり名詞ということで。
 ちなみに、現在、一般の文章では「ご存じ/御存じ」、公用文では「御存じ」と表記し、「ご存知」とは書きません。「存知」は「ぞんち」と読み、「存在を知っていること」という意味で、サ変動詞にもなりますが、今は使われていませんし、「ご存じ」とはまた違う話になります。あっ、「存じる」は動詞ですよ、念のため。
 6年前、「ご存じいただいております」について、「存じる」を「ご(お)~いただく」に当てはめた形であろうと、「ご存じ」に「いただいております」と続けた形であろうと、どちらも誤りだと書きました。「知っていらっしゃる・いただいております」はおかしいですよね。そのとき、「ご覧」=「見て」だから名詞ではないと書いたのですが、それについて補足説明をします。
 その前に、最近の「おはなし」の混乱ぶりについて。名詞の「話」と動詞の「話し」を区別している人は果たしてどれほどいるでしょうか。「おはなしいただく」は「お話しいただく」が正しいのですが、「お話いただく」も見掛けますね、縁談でも来たか? 「お話しする」なのに「お話する」では、相手は幼児。そのうえ、「お話して(おはなしして)いただく」なんていうのも( ̄д ̄)!
 「お話しです」「仕事の話しした」「直接話ことにしました」「退社したいと話たところ」「それは話済みで」「話掛けても」「お話した」「お話しましょう」「○さんとお話していると」「話しないと分からない」「○さんに話に行く」など、理解に苦しむ変な表記は例を挙げれば切りがありません。
 実は、「ご覧」は名詞、「見ること」の尊敬語なのですが、「ご覧いただく」というときは「ご覧」=「見て」で、動詞と捉えてください。「お話しいただく」のように、「ご(お)~くださる」「ご(お)~いただく」の「~」に入るのは動詞の連用形、「話」ではなく「話し」なのですよ、ということで、実際「あれをご覧」は「あれを見て!」という意味で、見事にはまりましたね。
 じゃぁ、「ご存じいただいております」も同じじゃないか? という声が聞こえてきそうですが、「ご覧」=「見て!」のように「ご存じ」を「知っていて!」という意味で聞いたことがあるでしょうか。何でもかんでも「~いただいております」に無理にはめ込まなくてもいいですよね。
 それにしても、「ご存じ」はいま一つ正しく使われていないように思います。「ご存じですか」と聞かれて「ご存じじゃないです」と答えた羽鳥慎一。一般の人ならよくあることですが、元アナウンサーだからアウトo(`д´)o! 「ご存じないですか」と聞かれて「いやぁ、ご存じないですね」と答えた詐欺集団の一員┐( ̄д ̄)г。皆さん、さっと「いえ、存じません」と答えられますか?
 「ご存じそうなかた」は「ザ!鉄腕!DASH!!」で聞いたナレーションですが、無理しないで「知ってそうなかた」と言えばいいじゃないですか。「知ってそうな」を分解すると、「知る」という動詞の連用形「知って」に様態の助動詞「そうだ」の連体形「そうな」が続いています。「ご存じ」に「そうな」は続けられません。こうした構造を理解することも大切ですよ。
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