◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「怪談話」って?

2017-08-13 10:08:24 | 気になる言葉、具体例
                                  かいだんばなし

 「林先生が驚く 初耳学!」で、「やっぱり芸人なんかで言うのは、かいだんばなしが一番、話術の力の差が出るというか、そういう感じ、しますね」と言った千原ジュニア、そして、「怪談話が一番 話術の力の差が出る」というテロップ。夏になると必ず出てくる「かいだんばなし」「怪談話」ですが、それって、おかしいですよ( ̄д ̄)! このブログでは2007年の秋に「かいだんばなし」について書いていますから、その前からすでに広まっていたのでしょうか。
 落語には、滑稽噺、人情噺、芝居噺、怪談噺といったジャンルがあり、講談でも、怪談噺は一つの重要なジャンルであるようです。つまり、「かいだんばなし」は落語や講談のジャンルを言うわけで、「怪談噺」なのです。お笑い芸人やタレントの言う「かいだんばなし」は「怪談話」ですが、そもそも「怪談」の意味が「化け物や幽霊の話」なのですから「話」は余計で、「怪談」と言えばいいのです( ̄_ ̄)。
 スタジオ出題者の一龍斎貞水が「怪談の幽霊は、庶民が作ったヒーローだった」と言い、「怪談の幽霊は・・・庶民が作ったヒーロー」というテロップ、これはいいですね。その後、ナレーターが「江戸時代、かいだんばなしに出てくる幽霊は庶民のヒーローだった」と言ったのですが、講談師が庶民のニーズに応えて作り上げていった、だから、この「かいだんばなし」は「怪談噺」であり、そのときに出た「江戸時代 怪談話の幽霊は 庶民のヒーロー」というテロップは誤りです。一龍斎貞水が「怪談の幽霊は」と言っているのに、なぜわざわざ「話」を付ける?
 さらに、ナレーターが「番町皿屋敷をはじめ、多くのかいだんばなしが作られた江戸時代」と言ったのですが、このときのテロップは「番町皿屋敷など怪談が創作」で、「話」がないのはいいのですが、「怪談が創作」って何ですかね? こういう書き方が横行していますが、それを「番町皿屋敷など 怪談が創作された」と読めって? それは無理! こういう気持ち悪い書き方は日本語をだめにするだけではないですかね。
 その後、別のナレーターが「怪談の幽霊は、庶民たちではどうしようもなかった理不尽な権力に立ち向かうために講談師たちが考えたものだったのです」と言い、「怪談話の幽霊は理不尽な権力に立ち向かうために講談師たちが考えたもの」というテロップが出ましたが、「怪談話」はもちろん、「庶民たち」も「理不尽な権力」もおかしいですね。原稿を書いたディレクターは「怪談噺」を全く知らないで書いているようですし、日本語のセンスもいまいちです( ̄д ̄)!
 「庶民」は、特別の地位や財産を持たない、一般の人々。「人々」ですから「たち」は要りません。誰も「一般の人々たち」なんて言いませんよね。「理不尽」は、道理に合わないことを無理に押し付ける様子。立ち向かう相手は「権力をかさに着て理不尽なことをする人たち」で、「理不尽な権力」はしっくり来ません。そこはやはり「理不尽なことをする権力者に立ち向かうために」でしょ。
 最後に一龍斎貞水が「庶民が好んでしゃべるから怪談噺っていうのは、未来永劫、はやりすたりがないんだろう」と言ったのですが、「庶民」ですよ。「庶民たち」なんて一体どこから出てきたのですかね┐( ̄д ̄)г。ちなみに、「一龍斎貞水」で検索したら「一龍斎貞水 四谷怪談~怪談噺・幽霊噺~」というのが出てきました。「暑いなぁ、怖い話で涼しくなるか!? おれ、実はけっこう見えるんだよ・・・」なんてね、そういう“ただの怖い話”は「怪談」ですよ、か・い・だ・ん!
コメント
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