毎日新聞 2013年06月27日 東京夕刊
「あの安倍(晋三首相)さん、坊ちゃん政治家だからね。自分は安全なところにおって、戦争できると考えているんじゃないの。テレビゲームみたいな感じで。96条の改正から手をつけるようなことを言っていたでしょ。本気ですよ。これまでは、いつかは変えてやるぞってことでしたから。いまがチャンスと踏んでいるんだろう。反対する側も本気にならんといけない。
60年安保のころ、研究の合間をぬってはデモに明け暮れた。「まず朝、団地に署名集めに回るんだけど、間に合ってますなんて、御用聞きに間違われてね。僕、ヘタくそなんだ」。めげずにベトナム反戦でも声をあげた。それは平和運動にも身を投じた名古屋大学時代の恩師、坂田昌一博士の背中を見てきたからでもあった。湯川秀樹、朝永振一郎両博士と並ぶわが国の素粒子論の第一人者である。「へ理屈の坂田なんてあだ名があったけどね。学問だけではダメだ、学問を支える社会の問題も考えられないやつは一人前ではないという空気がありましたね。先生はひと言もおっしゃらないんだけど」