かぶれの世界(新)

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原油価格50ドル台の世界

2008-11-15 23:19:46 | 国際・政治

NY原油価格は景気悪化による需要減少を見越し、昨日1バレル55ドル台まで下落したと伝えられた。東京スポット市場のドバイ原油の終値は47.60ドルまで急落したという。7月11日にWTIが147ドルをつけたときは、200ドルも遠くないと報じられたのが嘘みたいだ。

こうなると、原油価格高騰の補助金を要求した人たちは、これだけ下がったら税金倍払うとか言って欲しい気分になる。厭味を言うのはさておき、原油価格50ドルの意味を考えてみたい。

原油価格50ドルの意味

昨年11月に原油価格が急上昇した時、100ドルを突破説はまだ一部の悲観的な見方だった。その頃私は、もし100ドルになったら世界経済が耐えられずスローダウンし、需要が急速に減って投機による上昇部分が剥落すると書き込んだ。

このときNHKが引用したあるエコノミストの見方、上昇分の30%がヘッジファンドなどの投機、20%が生保などの機関投資家の投資で、これら投機による上昇分が全て剥落すると需要を反映した価格は50ドル程度になるだろうという見方、を紹介した。

その後の展開は100ドルを超えても世界経済は即影響が出ず、147ドルまで上昇した。もし世界連鎖金融不安が起こらなくても、世界経済は原油高のボディブローを食らって徐々に悪化したと思う。しかし、金融不安は世界経済を一挙に失速させ、原油需要も暴落する始末となった。

異なる産油国の財政事情

これだけ原油価格が下がれば、かつてこのブログに投稿した記事「富の移転」が止まり、巨額のオイルマネーの還流が変調をきたし、それが世界経済に影響を与えると予想される。

これだけ実体経済が悪化すると世界経済の回復には最低でも2-3年かかると予想され、原油需要は低迷が続き、50ドル台を切る可能性は十分あるというのが大方の予測である。OPECなど石油輸出国は当然産出量を減らし価格維持を図ろうとするが、産油国には夫々事情が異なる。

2005年から2006年のサウジ・UAEGCC諸国の財政事情は、バレル60台なら問題なかったといわれている。実際、油田埋蔵量最大国サウジ財政の損益分岐点は49ドルであり、長期安定需要が最大の国益である。過度の石油価格高騰は代替エネルギー開発を促進し、埋蔵量を使い切る前に石油から収益を上げられなくなる、長期国家戦略は行き過ぎた原油高ではない。

一方で、イランは原油価格が100ドルを切ると、国家財政がピンチになると報じられている。彼らは何としても石油価格を高く維持したい。他の国々はその間にあるといわれており、60ドルを切った今、建設ブームに沸いていた中東諸国はプロジェクトの見直しが迫られている。

国際エネルギー機関(IEA)は今後も基本的に石油需要が伸び2030年には200ドルになると会見で述べた。一方でOPEC議長が原油価格は70-80ドルが妥当として減産に言及したというほうが、現実の産油諸国の深刻な状況を言い表しているように感じる。

問題は誰が米国を買い続けるか

原油価格高騰によって殆どが非民主国家でもある産油国が、有り余るオイルマネーを蓄積し、やりたい放題やるのは勘弁して欲しい。しかし、自国を含めオイルマネーが欧米に還流し、途上国に投資され経済発展に貢献したのも事実である。

金融不安は原油価格だけでなく、あらゆる経済活動に急激な変化をもたらし、体力の弱い国や会社を正になぎ倒している。当面の対策は痛み止めがメインにならざるを得ないし、それがベストだと思う。逆説的だが、問題となった金融商品や取引の規制を今強化すると、既に金詰まりになった世界経済を更に悪化させ、途上国から資金を引き揚げさせることになる。

先ず出血を止め、次に回復過程に戻る為には、世界にばら撒かれたドルを米国に還流させる仕組を生き返らせ、米国経済を立ち直らせる(基本的には消費回復させ)。これは米国の為というより、米国の仕組を使って新興国の経済成長を活性化させ、結果的に新興国が世界経済を牽引することに繋がる。

現有価格のバブルが剥落したのは好ましいが、短期的には金融不安が落着いたところで誰が米国経済を買い続けるかが、世界経済回復がどのくらいかかるか鍵を握ると、私は予測する。サブプライム問題の後では米国は主張しにくいかもしれないが、G19は現実的になるべきだ。■

コメント (2)
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