階下から叫び声とバタバタ足音が聞こえ、目が覚めた。デンマーク戦を見て息子が興奮しているのは分かっていた。聞こえてくる音で悪いニュースではないと感じそのまま目を瞑った。ウトウトし始めたとたん、又もや同じ調子の叫び声と足音が聞こえもう寝ていられなくなった。
階下に降りると遠藤の見事なフリーキックのリプレイをやっていた。2-0という予想外の展開に嬉しい驚きで、その後試合が終ってもテレビのチャンネルを次々と切り替えながら、延々と続く解説やファンの熱狂振りを見て歴史的勝利の余韻に浸った。
凄い、何でジャパンがこんなに強いんだ。私は年頭に善戦すれども予選ラウンドを勝ち抜けないと占った。勝てば官軍。戦前酷評された岡田監督の評価が一転していまや歴史に名を刻む伝説の名将になった。試合後のインタビューで彼は極めて冷静で論理的に語ったのも、実は驚いた。
前半10分経過後の状況を見てフォーメーションを4-3-3に戻したといったのを聞いて、試合中の判断をこれほど早く的確にやれたのかと舌を巻いた。何だ、凄い指揮官じゃないか。カメルーンに勝っても運が良かった、オランダ戦の最小失点の負けは良くやったとは思った。が、それでもデンマーク戦で勝つのは難しいだろうと私は悲観的だった。
今大会でフォワードが前線からプレスをかけて走り回らなくなったのは私も気がついていた。監督はインタビューに答え、この時期の南アフリカは気温が低く走力を生かした戦術で行こうと決めていたという。更に後半の最後の15分に息切れさせない為、大会直前の選手起用変更で戦術を徹底し機能した。というところが今までの報道を見た私の印象だ。
個の力ではやはり本田の存在が大きく、直前まで先発ではなかった松井・大久保の両ウィング、凄いスタミナで走りまくったエースキラーの長友、長谷部や安倍が守備と攻めでチームを連動させ、何より中沢・ツーリオが高さで負けなかった。ほぼ同じメンバーでも体調管理と戦術がマッチすると本番で結果を出せたというのは、苦戦する欧州・アフリカチームには参考になると思われる。
蛇足だが、オランダ戦の翌日久方ぶりに家族が恵比寿に集合しイタ飯を食べ、ほろ酔い気分の帰りの電車の中でデンマーク戦を賭けた。全員強気の中で、私だけが弱気でジャパンの負けを予測した。技術や戦略だけでなく、ここ一番のプレッシャーにも弱いと読んだ。何せあのポルトガルを敗者復活に追い込んだチームだ。98年フランス人同僚が母国に賭けず、私がドンペリをせしめた時を思い出した。掛金が100円で良かった。■