今月始めAPが面白い記事を流していた。ハーバード大学マレイ教授の調査によるとアメリカ人の寿命は収入よりも人種、居住地域によって大きく異なることが報じられた。収入と生活習慣では簡単に片付けられない、端的に言うと「お金で寿命は買えない」と報じている。
それによるとアジア系女性の1人当たり平均年収は2.2万ドルで平均寿命は最長で84.9歳なのに対し、中部に住む女性(殆ど白人)は2.5万ドルだが77.9歳で7歳も短い。同じ白人女性でも北部農村に住む人達は1.8万ドルと少ないが、79歳だ。収入と寿命は比例しない、土地・人種に係わる生活習慣・気候などが複雑に関係しあっていると説明されている。
もう一つ注目すべきは同じ人種でも住む地域、例えば南部農村とか都心貧困地帯、アパラチア低所得地帯によって平均寿命がかなり違うことであった。これは際立って日本と異なる。厚生省の「2000年都道府県別生命表」(2002年12月発表)によると平均寿命の最も長い県と最も短い県との寿命差は、男3.23年、女2.32年と差が少ない。
更に、アメリカ的高脂肪食習慣に変わったアジア系アメリカ人2世が移民してきた親と同じ長寿を受け継いでいる結果が出たことだ。アジア系人種には脂肪をうまく消化出来ず蓄積させる体質があると聞きかじりの知識があった私には意外だった。しかし、記事によると何故そういう結果になったか原因を分析するところまで到達していないようだ。
ネットで調べたところ信州大学が日本の地域ごとの寿命と天候など諸条件の相関を追跡調査した報告を見つけたが私には意味のある結論が見当たらなかった。人種や気候、生活様式など多様な組み合わせがある米国ではもっと極端なケースがあるが、それでも寿命との明確な相関関係が分からないのだから当然かもしれない。
今回の調査結果は政府当局(CDC)にとって医療費抑制の為肥満を統計的に見て対策するだけではなく、地域を絞った対策とか分母を小さくして対応する必要があるという教訓を与えたようだ。途上国と先進国がいり混じって存在する米国の今後の調査は興味があるが、日本の場合寿命の地域差はそれほどなく、意味のある結果を期待するのは難しいと思われる。
蛇足だが、深刻さから言えば今話題になっている国内の格差こそ層別して分析するアプローチが有効だろう。■