母が持っている定期預金を投資するように説得し、投資信託を買うことにした。調べると母がペイオフ対応で預けた定期預金は6年間で0.4%の金利も生み出してなかった。日本人のリスクを嫌う貯蓄性向そのままである。
2000年に始まったゼロ金利の間に個人資産は約80兆円増えて1500兆円になったが、増加分の殆どは昨年の株価上昇が貢献しており現在はやや目減りしていると報じられている。しかし、6年も続いたゼロ金利に嫌気が差したのかその内訳を見るとリスクマネーの比率が徐々に高まっているらしい。
住友信託銀行の調査月報8月号によると個人資産は低金利の為うまみが薄れた定期預金残高が28兆円減少し、流動性預金残高が42兆円増え流動性重視の資産選択に移行している。一方で投資信託残高がこの6年間に23兆円増加し徐々にではあるが日本人のリスク許容度が高まってきている。
変動金利を特徴とする個人向け国債はまだ歴史が短く(3年)残高は少ないが倍々ゲームで急増しているらしい。リスクマネーの原資は定期預金・郵貯などであるがマクロで見ると日本人の安全性・流動性思考はまだまだ緩やかに変化しているというのが同調査月報の結論だった。
母が預けていた田舎の銀行(いわゆる地銀)の窓口で金融商品の紹介を受け、定期預金から切り替えた効果が分かりやすい毎月配当が出る(うまく行けば)投資信託を選び購入することにした。手数料は銘柄により都銀や外銀と同じか安かった。
紹介頂いた銘柄の4月発行の目論見書とインターネットで調べた現在値と比べると総資産額が急増しており、インターネットの基準価格は毎日上昇していた。もちろん人気銘柄を見たのだから当然なのだが、上記の調査月報より個人資産から投資信託への移行速度は早いというのが、担当の行員の方の実感でもあるようだ。
何故日本人のリスクを嫌う安全性志向が変わり始めたのだろうか。長く続いた低金利時代の間はなんといっても収益性より安全性優先だった。母の様子を見ていると今でも全く変わっていない。今回も内心はそのままそっとしておきたかったようだ。
しかし、郵政民営化の議論の中で郵貯から約20兆円が流出し定期預金の解約が続くのは、本格的な景気回復により雇用が増え将来に対する明るさが見えてきたのが家計の心理的なリスク許容度を高めたと個人的に感じる。
ところで銀行が金融商品を売り始めたのはつい最近で、今回まで余り信用していなかった。説明を聞いてみると全日空が初めて国際線に進出した頃米国出張の為乗った同社の客室乗務員の初々しいサービス振りを思い出した。知識は不十分だが一生懸命さは伝わった。
この銀行は取引は電話もインターネットもダメ、必ず窓口に行かなければならない。地銀は地元の顧客にサービスするというのが基本的な考えらしい。もう一つの地銀はもっと徹底しており住所が地元じゃない顧客には金融商品は売らない方針だった。
母の管理しているお金なので安心してもらう為に地元の銀行を選択することにした。今後暴落しようと売り時だろうと窓口に行かないと流動化できない不便さが問題なのだが、女性行員の笑顔でそんなことも忘れさっさと契約を済ませた。■