かぶれの世界(新)

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合理的消費者への回帰

2008-03-29 18:14:30 | 社会・経済

米商務省は28日に2月の個人消費支出(PCE)は、前月比0.1%の増加[1]に留まり(1月は0.4%増)、景気後退が既に始まっていることが明らかになってきた。個人消費の停滞の原因として雇用減、住宅価格低下、ガソリン価格高騰などが指摘されている。

米国の個人消費が世界経済を牽引してきた一方で、借金してでも買い物を続ける消費者という極めてユニークで脆い基盤の上に成り立っている危険性は以前から指摘されてきた。そして、ついに来た2月の個人消費低迷は「米国消費者の心変わり」が一因ではないかと思われる。

18日付けロイターによると、ある金融機関担当者を引用して「消費スタイルの変化」が起こりつつあると報じていた。倹約が取り入れられ、浪費は過去のものとなったと。米国経済の7割を占める個人消費の3割は生活必需品ではない買い物だったという。

今や消費者は自分たちの家に住み続けるためには、何でもする。最優先にするのは住宅ローンの支払い、そして食べ物、光熱費、もし仕事で必要ならば車。銀行に金利を下げてもらい、返済を猶予してもらう為には支払いに優先順序をつけ、返済する姿勢を見せる必要があるという訳だ。

外食を控え、高級店よりもウォールマート等のディスカウント店で買い物をし始めたことが、2月の既存小売店の傾向として報告されている。米国家計は今や食費より借金の返済の支出(約14%)のほうが大きいという。

私から見たら当たり前のことだが、その当たり前のことを米国の消費者はやってこなかった。そのお陰で世界経済は成長を続けてきたのだから文句は言えないが。だが、タイミングがいかにも悪い。経済後退の崖っぷちで揺れる最中での消費者の心変わりは深刻な影響を与えるだろう。

冷静になって考えると、元々米国消費者は持続不可能な消費を続けてきたのであり、何時かは経済原則に基づいた自浄作用が働くだろうといわれてきた。問題はwhatではなくwhenだった。そして、それは最悪のタイミングで来たという訳だ。

しかし、悪いニュースだけではない。同時に発表された物価指数(PCEコア価格指数:食品とエネルギーを除く)の伸びは0.1%に留まり物価は安定しており、FRBの金利下げの妥当性が確認された。先月議会承認された景気刺激策が効果を発揮し景気後退は夏頃に終るという観測も出ている。(私も楽観的な予測が好きだ。)■


[1] 米国では人口が増えているので0.1%の消費増は、実質マイナス成長と見做される。

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失われた6ヶ月、だが今は前進すべき時

2008-03-28 09:57:36 | ニュース

福田首相の緊急記者会見で発表した新提案は道路特定財源の一般財源化に大胆に踏み込んだ内容であり、与野党が真摯に検討し妥協点を見出すべきものだ。しかし、今のところ民主党を始め野党に歩み寄りの姿勢は見られない。

福田政権は誕生の時から先祖帰りしたかのように、派閥の領袖と官僚に頼る政権運営をしてきた。いわば政権の遺伝子的性格が抱える問題がここに来て一気に噴火したと私は感じる。混乱の責任はリーダーシップを発揮してこなかった福田首相にある。

改革後ろ向きといわれた福田内閣が、6ヶ月経って突如前政権でも実施できなかった道路特定財源の一般財源化に踏み込むまでに追い込まれた。初めからそういう選択しかなかったのだが、彼はその認識が無いまま族議員と官僚に任せ問題先送りしてきた。

まさに「失われた6ヶ月」だった。

だが、福田首相の新提案は現状で考えうる実行可能なベストの提案のように私には思える。問題は与党内コンセンサスがなく野党との信頼関係が構築されてないことだ。福田首相はまさに孤立状態にあるという。

しかし、提案内容は族議員や官僚の為ではなく、国民の為のものであることは明らかである。経緯はどうあれ民主党を始めとする野党は提案を真摯に受け取り速やかに協議に入るべきだ。多くの国民はそれを望んでいる。

民主党がここに至ってもいたずらに政局狙いの反対をするなら、彼らの政権担当能力に対する国民の信頼は決定的に傷つけられると私は考える。万が一そうなったとしても、他の野党は今良識を働かせ存在感を示す時だ。■

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幸運な忘れ物

2008-03-27 22:57:32 | 日記・エッセイ・コラム

一昨日ジムの利用券を購入しようと財布の中を覗くと、プリペイド・カードが見当たらなかった。諦めて窓口でプリペイド・カードを買った。念のため窓口の方に聞くと私の名前を聞かれ、私のとものと思われるプリペイド・カードの届出があったと告げられた。

プリペイド・カードには名前が入っていない。どうして私の名前を書いたメモがあったか怪訝に思い、誰が拾ってくれたのか聞いたが、心当たりが無いとの返事だった。ジムの係の方も知らないという。何とも不思議だけど嬉しかった。忘れ物では、私は運がいいと思ったことが何度かある。

学生時代に大阪に行き免許証を失くした。暫らく経つと実家から免許証が届いた。天王寺で免許証を拾った人が実家に送ってくれたらしい。その頃下宿先から原付で通学していた。よく思い出せないが暫らく無免許で原付に乗っていたのかもしれない。

米国に出張し帰国して暫らくたってから、国際免許証がレンタカー会社から送られてきたことがある。日本では不必要なので無くしたことすら気が付かなかった。米国で落し物が返るなんてありえないと散々聞いていたものだから、感激して礼状を出すと、又、丁寧な返事が返ってきた。

意外なことに他にも米国で忘れ物が返って来たことが何度かある。予想外なことだから良く記憶している。ポートランドのホテルにチェックインして部屋に入ると、ロビーのソファーにクレジットカードが落ちていたと電話が入った。慌ててフロントに行き受け取った。

クレジットカードといえば、初めて家族揃ってハワイに行った時もやってしまった。ロビーに続くアプロ-チの両側に現地ツアーの販売窓口が並んでいる。そこでバスツアーの予約をした。翌日クレジットカードが無いことに気が付き、フロントに聞くと届けはないという。念のためとツアーの窓口に行くと私のカードが保管してありホッとしたものだ。

どうも私は緊張して運転とか買い物とかした後、安心して忘れてしまうらしい。スーパーで買い物をして支払いや現金の受け取り(米国ではスーパーのレジで銀行口座の現金引き出しサービスがある)に気をとられ、買った商品を忘れ呼び止められたことが何度か記憶がある。

私の対策は簡単だ。ゴールドとかプラチナ色のカードを持たないことだ。アップグレードを勧められても青色以外は要らないと答えることにしている。拾った人が万が一利用しても利用限度額以上の損はない。支払い状況が良いから限度額を上げるといわれても迷惑なのだ。

戻ってこなかった忘れ物は沢山あっても、記憶に残る物はないからかもしれない。だが、ただ一つだけ今思い出しても残念でたまらない忘れ物がある。修学旅行で初めて東京に行き、蓼科など志賀高原を経由して帰途についた時のことだ。

汽車が実家に近づいた最後の30分位で疲れが出て眠りこけ、駅に着いて慌てて降りた時、父が買ってくれたカメラを忘れた。修学旅行の思い出が一杯詰まった写真は一枚もなくなってしまった。未だに思い出し残念に思う。■

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太陽電池、存在感の低下

2008-03-26 11:33:13 | 社会・経済

我が家の風呂釜が壊れた。都市ガスの給湯機を13年使用し寿命になった、部品がなく修理も出来ないという。この次ぎ買い換えるとしたらオール電化にしようと思っていた。懇意にしている友人に聞き、ネットで調べているうちに、日本が最も進んでいたと思っていた太陽電池業界の状況が一変しているニュースが目に留まった。

本の太陽電池技術は世界の最先端を行っているが、海外政府の推進施策を背景にした海外メーカーの過激と思える積極的な投資でその座は脆くて危ういと、2年前に下記の記事で警鐘を鳴らしたことがある。原因はともあれ現状は杞憂したとおりに進んでいた。

http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20060331 

24日付の週刊ダイヤモンド誌によると太陽電池セル生産量で常に世界トップだったシャープが、昨年ドイツのQセルズに追い越されたらしいと報じている。京セラが中国メーカーに抜かれ4位、三洋・三菱は台湾メーカーに抜かれ夫々67位に沈んだという。

世界の太陽電池市場は40%の成長率で急成長しており、中でもドイツは2005年に累計導入量で日本を抜き、2006年には日本の市場規模の3倍に達したという。一方、日本は国内市場が伸び悩み、世界の成長にも乗り切れていない。このまま「いつか来た道」を歩むのだろうか。

シェア低下の原因は「政治」と「自滅」

同誌はこの原因として政治的要因とメーカーの自滅をあげている。日本の太陽電池の導入成長率は、経済産業省による住宅向け設置補助金が打ち切られた2005年から停滞している。私も補助金がなくなった後は、自宅をオール電化するとしても太陽電池を導入する気が全く無くなったが、それが市場全体のメッセージでもあったようだ。

補助金を打ち切り、更にドイツのような過激な電力買取り制度の導入を阻んだのは電力会社が大反対をしたためであると同誌は説明している。原子力発電が国家の基本方針であり、太陽電池の優先順位は政治的に低いと判断されたわけだ。珍しいことではないが判断の基準は政治的「力」の大きさだけで、将来を見越すビジョンが無かった。

もう一つの原因としてメーカーの自滅とは、原材料のシリコン価格が高騰し始めた時、将来の需要急増を見誤り原材料確保を逡巡し、気が付いた時は海外メーカーに抑えられていた為という。工場の稼働率が下がった。結果としてシリコン使用量の節約や、他の材料への転換研究が進むというプラスもあるが、経営判断の遅れは、又、日本メーカーの遺伝子的弱点ともいえる。

とは言っても、数年前までは日本の太陽電池業界は世界で圧倒的な存在だった。それが今規模は大きいが将来とも世界展開する可能性の無い電力業界に配慮した狭い政治判断で、将来性のある事業が海外メーカーとの競争で劣勢になるのを見るのは辛い。

道路特定財源に限らず何処に優先して税金を使うか政治の優先順がおかしい。太陽電池のようなハイテク業界が世界のトップを走れるように、政治の優先順位を見直し、このような世界の中で我国の強みがある領域にもっと光があてられるべきだと強く思う。

地球温暖化に対応する色々な領域で日本の省エネ技術は最先端にあり、CO2削減などで世界貢献が期待されている。当然、他国は安価に利用しようとするだろうが、この技術は資源エネルギーの無い我国にとって、貴重な「資源」だと認識して保護する視点が欲しい。■

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株券が紙屑になった1週間

2008-03-23 13:42:16 | 社会・経済

国5大証券会社の一角「ベア・スターンズ」の株価が、先週月曜日一株2ドルまで暴落したニュースを聞いた時、この世界では何でもありと思っていた私もさすがに驚いた。1年ちょっと前は170ドル、今月初めでも80ドル近くあったのだから。

ところがその前の週末に資金繰り不安説が浮上して会長が噂を否定、明けて14日NY連銀が支援策を発表したあたりからつるべ落としで株価急落、JPモルガンの救済合併発表後はついに2ドルまで下がり、株券はハンバーガーすら買えない紙屑になってしまった。

ベア・スターンズの救済は他の米金融各社を守るため妥当な処置であった。金融各社は借り手や貸し手として互いに緊密に結びついており、ベア・スターンズに多額の資金を貸し付けていた各社は、同社が債務返済不能になれば自らも債務を支払えなくなるドミノ倒しが起こったであろう。

17日から始めた証券会社への新貸出制度には19日時点で計288億ドル(約2兆8800億円)もの借り入れが殺到し資金繰り不安を後退させた(朝日新聞)。適切な判断であったことが証明された形になった。

しかし、何故こんなに急激にベア・スターンズの株券が紙屑みたいになってしまったのだろうか。日本に比べ米国は情報公開が進んでいるはずなのに、重要な情報が株主に隠されていたのではないのか、というのが私の第一印象だ。これで株主の利益が守られていえると言えるのだろうか。

それが私にはどうもよくわからない。今までの報道を整理してみると以下のようになる。

1

年前、ベア・スターンズ傘下のヘッジファンド2社がサブプライム投資損害で破綻し巨額の損失を報告、サブプライム問題悪化のきっかけを作った。私も論評したが、その時はこれほど酷くなるとは思わなかった。同社の株価は下がったものの今月初めでも80ドル弱を付けていた。

同社は昨年第4四半期を創業以来初の赤字を計上したが、今年の第1四半期は黒字転換すると予測していた。ところが経営不安の噂が流れると短期間のうちに投資家やトレーダーの信用を失い資金を引き上げられ、一気に経営破綻の道を辿った。所謂「取り付け騒ぎ」が起こったのだ。

同社会長は市場不安の下で風評が現実になる可能性を恐れて投資家が資金引き揚げに走ったと語ったと報じられている。昔からある「黒字倒産」ということか。直前の株価が、保有していた資産(多くは例の証券化された金融資産)が帳簿上で高い格付けを反映していたのは疑問が残る。

サブプライム問題が深化するにつれ、格付け会社が顧客の金融会社に都合のいい甘い格付けをする傾向があることが明らかになった。仮に最初は妥当な評価だったとしても、信用不安が起こると取引されず値段もつかない、そんな状況が紙屑に高い値段を付けたままにさせた。

この状況を「証券化商品などの帳簿上の市場価格が誤った格付けに基づいている」と山一破綻で発覚した「隠れ負債」に似た例が、米金融機関にもある可能性を厳しく指摘(朝日新聞)している。一旦投資家の信頼を失うとたった1週間で資金を引き揚げられ破綻し歴史に名を留めた。

直前までベア・スターンズの問題が具体性はないものの経営危機の噂がストリートを渦巻いていたところで、欧米中銀行やNY連銀から支援策が発表されるとその度に噂の真実性が裏付けられた格好になり、株価が止めどなく下がっていった1週間というのが真実だろうと私は思う。

それにしても唐突な経営破綻は結局のところ同社の経営指標、特に資産評価が不透明であったことに帰着される。少なくとも株暴落で大損害を被った大株主のジョー・ルイス氏や投資信託会社などは、今後不透明性を問題提起し訴訟に持ち込む可能性は極めて高いと予想される。

経営者や投資家、他の金融機関、中央銀行や政府当局者の心理状態がこの1週間で劇的に変わっていったと思う。ノンフィクション作家にとっては最高の材料だろう。そう遠くない時期にこの1週間のドラマの内幕を明かした小説が出るはず、是非読んでみたいものだ。■

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