米商務省は28日に2月の個人消費支出(PCE)は、前月比0.1%の増加[1]に留まり(1月は0.4%増)、景気後退が既に始まっていることが明らかになってきた。個人消費の停滞の原因として雇用減、住宅価格低下、ガソリン価格高騰などが指摘されている。
米国の個人消費が世界経済を牽引してきた一方で、借金してでも買い物を続ける消費者という極めてユニークで脆い基盤の上に成り立っている危険性は以前から指摘されてきた。そして、ついに来た2月の個人消費低迷は「米国消費者の心変わり」が一因ではないかと思われる。
18日付けロイターによると、ある金融機関担当者を引用して「消費スタイルの変化」が起こりつつあると報じていた。倹約が取り入れられ、浪費は過去のものとなったと。米国経済の7割を占める個人消費の3割は生活必需品ではない買い物だったという。
今や消費者は自分たちの家に住み続けるためには、何でもする。最優先にするのは住宅ローンの支払い、そして食べ物、光熱費、もし仕事で必要ならば車。銀行に金利を下げてもらい、返済を猶予してもらう為には支払いに優先順序をつけ、返済する姿勢を見せる必要があるという訳だ。
外食を控え、高級店よりもウォールマート等のディスカウント店で買い物をし始めたことが、2月の既存小売店の傾向として報告されている。米国家計は今や食費より借金の返済の支出(約14%)のほうが大きいという。
私から見たら当たり前のことだが、その当たり前のことを米国の消費者はやってこなかった。そのお陰で世界経済は成長を続けてきたのだから文句は言えないが。だが、タイミングがいかにも悪い。経済後退の崖っぷちで揺れる最中での消費者の心変わりは深刻な影響を与えるだろう。
冷静になって考えると、元々米国消費者は持続不可能な消費を続けてきたのであり、何時かは経済原則に基づいた自浄作用が働くだろうといわれてきた。問題はwhatではなくwhenだった。そして、それは最悪のタイミングで来たという訳だ。
しかし、悪いニュースだけではない。同時に発表された物価指数(PCEコア価格指数:食品とエネルギーを除く)の伸びは0.1%に留まり物価は安定しており、FRBの金利下げの妥当性が確認された。先月議会承認された景気刺激策が効果を発揮し景気後退は夏頃に終るという観測も出ている。(私も楽観的な予測が好きだ。)■
[1] 米国では人口が増えているので0.1%の消費増は、実質マイナス成長と見做される。