米国の週刊誌Newsweekが英語版と日本語版で、安倍首相の訪米について内容に大きな違いがあると立花隆氏がネットで指摘している記事を見つけた。Timeに次いで日頃からよく参考にしているニュース雑誌(日本語版)なので気になって直ぐに市立図書館に行き英語版を確認した。
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語版ではカーライル記者の本文、日本だけでなく中・韓・台も歴史を記憶喪失するという囲み記事、安倍首相の直前インタビューの三部構成でバランスを取ったものだが、日本語版では肝心の本文がそっくり抜けていた。英語版では安倍首相の写真に「対決」とキャプションを付けているが、日本語版はゴールデンウィークの映画紹介を前面に出し全く異なる印象だった。
地域によって表紙や記事の差し替えをやるのはNewsweekに限らないが、それは読者の興味を繋ぐ為のお化粧程度であり、ここまで変えると最早同じ雑誌だとはとても見えない。表紙や写真など見かけだけの差でなく、雑誌の中核となる本文がすっぽり抜け落ちていたのだ。
この肝心の本文であるが、立花氏は例によって記事の一部を取り上げて自説に引き込んでいく強引な評論はあるものの、記事の調子が辛口で安倍首相のナショナリスト的性格に強い警戒感を持っているものだというのは私も同感だ。何故、Newsweekは堂々と自説を開陳せず本文をそっくり削除したのか。
首相就任前の安倍氏の発言や、首相就任後も続く側近の歴代首相の発言を否定するタカ派的発言を考えると決していい加減な記事だとは思わない。Newsweekなら多分こう書くだろうなという内容だった。事実に反する箇所は見当たらなかった。
あえて言うなら、David Fouse氏を引用して「戦時中の人権問題を疎かにしてブッシュ大統領の口車に乗り人権外交云々するなどチャンチャラおかしい(偽善だ)」と決め付けるのは傲慢だと思った。この点ではNewsweekは米国がどういう国か理解していない。
身勝手でも自ら信じる価値を世界に押し付け、世界中で夥しい犠牲者を出したのは他でもない米国なのだ。ガンタナモ捕虜収容所の虐待しかり。それでも米国の果たした役割をマイナス面だけで捉えられないと私は信じる。中国の民主化もそうだが、日本の戦時中の未解決問題があると、日本が積極的な役割を果たすのは偽善として退けるのは身の程知らずだ。
「傷のある身でカッコいい事言うな」というのは、Newsweekだけに限らないメディアに共通する問題である程度やむをえない。しかし、読者におもねて本論すら取り除いてしまうほど改ざんするのは、メインストリームのメディアにあるまじき姿勢で失望の限り、日本語版の価値を損ねた。今後も同じ編集方針で行くのなら、日本語版は廃刊してメディアの信頼性を保つべきと考える。■