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ブプライム問題で米国では大銀行が次々と損失を計上し、それが欧州に飛び火し世界連鎖信用不安が広がった。しかし、昨日のNY市場はダウ平均が$13,870で年初来11.29%上昇、ナスダックは同16.65%上昇してひけた。欧州やその他の新興国市場も活況が続いている。
日経BP(10/25)によると先週末までにドイツのフランクフルト指数(DAX)は年初来19.5%、ユーロ・円換算すると24.6%上昇した。新興国はサブプライム問題を乗り越え、同じ時期で上海117%、香港48%、台湾23%、韓国37%、インド27%、ブラジル37%、トルコ44%、と上昇した。新興各国の実体経済も高い成長を続けている。
2010年に中国が日本のGDPを越えるという報道が最近あったばかりだが、株価にしろ、経済成長率にしろ、世界で日本だけ収縮しているというのが正解だろう。サブプライム問題は野村證券が大きな損失を報告したが、欧米に比べれば軽症なのに何故一人負けなのだろうか。
深刻な日本の一人負け
本日東証は前日比47円下げて16,651円でひけた。主要国で日本市場だけが唯一年初来マイナスで、絶不調が続いている。周知のように日本の株式市場の3割が外人株主だが、彼等が1日の売買の7割を占める。外人投資家が株価を決めているといっても差し支えない。
大雑把に言うと半年先の業績予想が株価に反映される。グローバル化された世界では、余剰資金は国境を越え割のいい投資先を求めおり、リアルタイムの人気投票といわれている。各国の株価は投票結果の現れである。日本の株価が低いということは、儲からないので資金を引き上げ他国に再投資されているということだ。
日本の個人投資家もこの投票に参加している。彼らも外人投資家と同じ判断をして巨額の個人資産が海外に向かっている。今年だけで二度にわたる世界同時株安、世界連鎖信用不安があっても、個人資産の海外流失の傾向は変わらず、その残高は30兆円を越している。
日本の個人リスクマネーは海外に向っている。私も退職金の一部を使って株式を買ったが、2月の世界同時株安時に殆ど売り払い、信託投資を購入し海外比率の高いポートフォリオに変更した。日本株式は世界市場と同時に沈み、世界の浮上には追いつけず、低迷が続き予想は当たった。
結果として、今日現在で年初来のキャピタルゲインと配当金を合わせたトータル・パフォーマンスは6%前後になり、僅かであるにしても好調な世界経済の恩恵を得られた。日本の株式にしがみついていたら私の場合二桁、インデックスでも数%の損失を出し失望していたと思われる。
世界から予想外に評判の悪い福田政権
株価低迷の原因を求めて欧米の投資アナリストのレポートを読むと、福田政権の評判が非常に悪い。市場原理主義だろうと何であろうと、彼らは投資が儲かるかどうか最大限の情報網と知恵を絞って予想をするという点で、私にとっては信頼できる情報源である。その彼等が厳しい評価をするのはショックである。
日本のメディアが徹底的に叩いた安倍政権のほうが投資の世界では高い評価を得ている。福田政権の低評価の訳は前政権が断行した官僚制度の見直しと財政改革が停滞し、公明党までが次の選挙に怯えバラマキ政治の後押しをする構図が明確になってきた為である。
道路公団・社保庁・厚労省・防衛省と噴出が止まらない官僚がらみの不祥事は我国が縮小する速度を加速させている。どう考えても官僚制度の改革は待ったなしだが、皮肉にもその官僚の不祥事で時々の政権が窮地に追い込まれ、その都度官僚を救う。
参院選で大敗した後を引き継ぎ調整型の福田政権がとりうる選択は発足時から限られていた。構造改革派も既得権益派も支えてくれる曖昧な全方位の政権運営をし、徐々に国民の支持を得ていく小渕前首相的なアプローチをとるのは理解できる。
しかし、そのコストは史上最大のバラマキ政策と巨額の財政赤字であったことを投資家は忘れていない。日本メディアのポピュリズムに反応する世論と、それに押し流され悪乗りする政治は、結果として日本を縮小させ世界から取り残されることになる。そういう国に投資すべきだろうか。
市場に追い詰められた米連銀
米国の状況も容易ではない。先のG7はサブプライム問題を取り上げ、傷を舐めあうが何ら根本的な対策を打ち出せず、失望のうちに終った。G7は世界経済を代表するメンバーから構成されず、今後その有効性が徐々に失われていく可能性が高い。世界の資金が米国に還流するシステムが揺らぐ兆候を感じる。
報道を見る限り11月のFOMCで連銀の選択は限られてきた。FFレートを0.25%下げの公算が極めて大きい。9月の思い切った0.5%下げはサプライズ効果もあって市場を沈静化させたが、副産物で原油価格が高騰、インフレが高じドル安となり、連銀の選択肢が急に狭まった。今回のドル安は今までとはちょっと違う。
ドル安の最悪ケースはドル離れによる国債暴落であり、米国としては最優先で何としても避けなければならない。となれば今回の0.5%下げは選択に無い。一方、何もしないとサブプライム問題の悪化が食い止められない。となると0.25%下げしか選択が無いという見方だ。
米国の大銀行が軒並み損失報告、消費のスローダウンの兆し、好調な企業業績、原油高騰とインフレ兆候という複雑な事象の中で、連銀のFFレート変更が事前にこれほど断定的に予測されるというのは珍しいのではないのだろうか。当たり前の措置では連銀の存在価値が問われる、打つべき手を打たなかったという非難が出ても当然かもしれない。■